結論(OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッド)
OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッドとは、OPTIONSリクエストへの応答に並ぶ、公開サイトでは通常不要なメソッドです。応答のAllowヘッダーやAccess-Control-Allow-Methodsヘッダーにある、TRACE、CONNECT、PUT、DELETE、WebDAV系(PROPFIND、MKCOLなど)が該当します。改ざんやクロスサイトトレーシングの足がかりになるため、必要なメソッドだけを許可し、TRACEは無効化することがOWASP ASVS 5.0.0とIPAで求められています。
この記事のポイント
- OPTIONSの応答は「受け付けると申告しているメソッド」の一覧で、実際の可否とは一致しないことがあります。
- TRACEはクロスサイトトレーシング(XST)、PUT/DELETE/WebDAVは改ざん・ファイル設置の経路になり得ます。
- ASVS V13.4.4は本番でのTRACE無効化を、V4.1.4は明示的にサポートするメソッドだけの許可を求めています。
- セキュリティAIチェッカーは×を出さず、要確認メソッドがあれば△、なければ○と判定する参考情報の項目です。
- OPTIONS自体はCORSのプリフライトで必要なため、止めるのは不要なメソッドそのものです。
| 診断項目名 | OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッド |
|---|---|
| 項目ID | http.options-advertised-methods |
| 分類 | HTTP応答・エラー処理 |
| 重大度・配点の重み | 中(medium) 重み 2 |
| 関連する標準・ガイドライン | OWASP ASVS 5.0.0 V4.1.4(L3:アプリまたはAPIが明示的にサポートするHTTPメソッドだけを使用可能にし、未使用メソッドをブロック)、V13.4.4(L2:本番環境でTRACEメソッドをサポートしない)、OWASP WSTG-CONF-06(Test HTTP Methods)、IPA「安全なウェブサイトの作り方」1.5 XSS 保険的対策 5-(ix)(HttpOnly付与とTRACEメソッドの無効化)、RFC 9110 §9.3.7(OPTIONS)・§9.3.8(TRACE)・§10.2.1(Allow) |
OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッドとは
OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッドとは、OPTIONS メソッドへの応答に含まれる Allow ヘッダーや Access-Control-Allow-Methods ヘッダーに並ぶメソッドのうち、公開サイトでは通常不要なもの(TRACE、CONNECT、WebDAV系、PUT、DELETE)のことです。
HTTP/1.1 200 OK
Allow: GET,POST,OPTIONS,HEAD,TRACE
セキュリティAIチェッカーのこの項目は、サイトのトップ(オリジン)と、見つかったAPI候補1件に対して OPTIONS メソッドでリクエストし、これらのヘッダーに要確認のメソッドが並んでいないかを確認します。
OPTIONSの応答は「サーバーがこのURLで受け付けると申告しているメソッド」の一覧で、実際の可否とは一致しないことがあります。そのため本項目は×(fail)を出さず、△(warn)にとどめる「参考情報」として扱います。
OPTIONSメソッドとAllowヘッダーの仕組み(RFC 9110)
- RFC 9110では、OPTIONSは対象リソースで利用可能な通信オプションを問い合わせるメソッドで、安全(safe)かつ冪等なメソッドと定義されています(§9.3.7)。
Allowヘッダーは対象リソースがサポートするメソッドの一覧を示し、405(Method Not Allowed)応答では必ず付けることになっています(§10.2.1)。- ただし実際に許可されるメソッドはリクエストごとにサーバーが決めるもので、Allowの内容はあくまで申告です。
Access-Control-Allow-MethodsはCORSのプリフライト応答で使われるヘッダーで、他オリジンのJavaScriptに許すメソッドを示します。
不要・危険なHTTPメソッドはなぜ問題なのか
各メソッドの意味とリスク
| メソッド | 用途 | 公開サイトでの懸念 |
|---|---|---|
| TRACE | 受け取ったリクエストをそのまま返す診断用ループバック | XSSと組み合わせ、HttpOnly Cookieや認証ヘッダーを読み出すクロスサイトトレーシング(XST)。RFC 9110 §9.3.8は、クライアントが機微な情報(資格情報やCookie)を含むフィールドをTRACEで送ってはならず、応答側も除外すべきとする。ASVS V13.4.4は本番での無効化を求める |
| CONNECT | プロキシでのトンネル確立 | Webサーバーが誤ってプロキシとして動作し、踏み台にされるおそれ |
| PUT / DELETE | リソースの作成・置換・削除 | 静的ファイル領域で有効だと、ファイルの書き込み・削除による改ざん |
| PROPFIND / PROPPATCH / MKCOL / COPY / MOVE / LOCK / UNLOCK | WebDAV | ディレクトリ構造の列挙、ファイル操作。WebDAVを意図せず有効にしていることが多い |
現在の主要ブラウザは、JavaScript(XMLHttpRequest / fetch)からTRACEメソッドを送ることを禁止しているため、XSTはブラウザ単体では成立しにくくなっています。それでもTRACEを残す理由はなく、ASVSとIPA(「安全なウェブサイトの作り方」XSSの保険的対策 5-(ix):HttpOnly付与とTRACEメソッドの無効化)はいずれも無効化を求めています。
標準・ガイドラインの要求
| 出典 | 要求 |
|---|---|
| OWASP ASVS 5.0.0 V4.1.4(L3) | アプリまたはAPIが明示的にサポートするHTTPメソッドだけを使用可能にし、未使用メソッドをブロック |
| OWASP ASVS 5.0.0 V13.4.4(L2) | 本番環境でTRACEメソッドをサポートしない |
| OWASP WSTG-CONF-06 | HTTPメソッドの検査 |
| IPA「安全なウェブサイトの作り方」5-(ix) | HttpOnly付与とTRACEメソッドの無効化 |
HTTPメソッドについてよくある誤解
- 「AllowにPUTがある=誰でも書き込める」:多くの場合、実際にはアプリ側の認証・認可で拒否されます。逆に、Allowに出ていなくても実際には受け付けるサーバーもあります。本項目がwarnにとどめるのはこのためです。
- 「OPTIONSを無効にすれば安全」:OPTIONSはCORSのプリフライトで必要です。APIを他オリジンから利用させている場合、OPTIONSを止めると正当な利用が壊れます。止めるべきは不要なメソッドそのものです。
- 「REST APIでPUT/DELETEがあるのは異常」:APIでは正当に使われます。APIのURLでwarnになった場合は、認証・認可が掛かっていることを確認できれば問題ありません。
OPTIONSが示す不要・危険なHTTPメソッドの診断基準(セキュリティAIチェッカー)
取得方法
- 対象:オリジンのルート(
https://ホスト名/)と、API候補の先頭1件(V2診断で見つかった/api/配下のURLや.jsonのURL。なければルートのみ)。 OPTIONSメソッドで送信し、リダイレクトは追跡しません。タイムアウト5秒、本文上限20KBです。Originヘッダーは付けません。- 各応答から
AllowとAccess-Control-Allow-Methodsの値を取り出します。どちらのヘッダーもない応答は判定材料から除外します。
判定条件
ヘッダー値の中から、単語として TRACE、CONNECT、PROPFIND、PROPPATCH、MKCOL、COPY、MOVE、LOCK、UNLOCK、PUT、DELETE を探します(大文字小文字を区別しない)。
| 判定 | 条件 | 得点への影響 |
|---|---|---|
| ○ 問題なし(pass) | Allow系ヘッダーが1件以上あり、要確認メソッドを含まない | 重み2 × 1.00 |
| △ 要確認(warn) | Allow系ヘッダーに要確認メソッドが1つ以上含まれる | 重み2 × 0.45 |
| 対象外(na) | どの応答にもAllow・Access-Control-Allow-Methodsがない、またはOPTIONSの応答を取得できない | 得点計算から除外 |
- 証拠欄には見つかったメソッド名を重複なく表示します。
PATCHは対象外です(APIで一般的に使われ、静的ファイル領域で有効化されることが少ないため)。Access-Control-Allow-Methods: *のようなワイルドカードは、個別メソッド名を含まないためwarnにはなりません。認証情報を伴うCORSではワイルドカードはメソッド名として扱われない点も含め、CORSの許可範囲は「CORSプリフライトの許可範囲」で別途確認します。- 実際にTRACEやPUTを送って成功するかの確認は行いません(対象サイトに変更を加えないため)。warnの場合は管理者側で実機確認してください。
自治体サイトでの判定例
| 状況 | 判定 |
|---|---|
Apache既定設定のサーバーで、OPTIONSに Allow: GET,POST,OPTIONS,HEAD,TRACE が返る | △(TRACE) |
WebDAVを有効にしたままのファイル共有領域と同じサーバーで Allow: OPTIONS, TRACE, GET, HEAD, POST, PROPFIND, PROPPATCH, MKCOL, PUT, DELETE, COPY, MOVE, LOCK, UNLOCK | △ |
CDN配下でOPTIONSに Allow: GET, HEAD, OPTIONS | ○ |
| WAFがOPTIONSを403で拒否し、Allowヘッダーも付かない | 対象外(405応答にはRFC 9110上Allowが必須のため、405ならAllowの内容で判定されます) |
不要・危険なHTTPメソッドが有効だとどんなリスクがあるか
- TRACE:XSSなど他の脆弱性と組み合わさった場合に、HttpOnlyで守っているCookieや、プロキシが付加したヘッダーが読まれるおそれがあります。単独での危険度は低いものの、診断報告では指摘されることが多い項目です。
- PUT/DELETE/WebDAV:認可が不十分な場合、Webページの改ざん、悪性ファイルの設置、ファイル削除が可能になります。WebDAV経由の書き込みと実行権限の組み合わせは、Webシェル設置の典型的な経路です。
- 攻撃面の拡大:使っていないメソッドが有効なこと自体が、設定の管理が行き届いていない兆候であり、他の設定不備を探す手がかりを攻撃者に与えます。
不要なHTTPメソッドの無効化方法(Apache・nginx・IIS・Next.js)
Apache
# httpd.conf(サーバー全体。.htaccessでは設定不可)
TraceEnable Off
# .htaccess でも可:必要なメソッド以外を拒否(Apache 2.4)
<LimitExcept GET POST HEAD OPTIONS>
Require all denied
</LimitExcept>
# WebDAVを使わないならモジュールを読み込まない
# LoadModule dav_module modules/mod_dav.so
# LoadModule dav_fs_module modules/mod_dav_fs.so
TraceEnable の既定値はOnです。TRACEは <Limit>/<LimitExcept> では制限できないため、必ず TraceEnable Off で止めます。.htaccess で <LimitExcept> と Require を使うには、AllowOverride で Limit と AuthConfig が許可されている必要があります。
nginx
nginxは既定でTRACEを405で拒否します。静的配信の場所で使うメソッドを制限するには次のようにします。
location / {
# GETを許可するとHEADも許可される。CORSを使う場所ではOPTIONSも加える
limit_except GET POST {
deny all;
}
}
limit_except はlocationコンテキストでのみ使えます。WebDAVモジュール(dav_methods)は使わない限り設定しません。
IIS(web.config)
<configuration>
<system.webServer>
<security>
<requestFiltering>
<verbs allowUnlisted="false">
<add verb="GET" allowed="true" />
<add verb="HEAD" allowed="true" />
<add verb="POST" allowed="true" />
<add verb="OPTIONS" allowed="true" />
</verbs>
</requestFiltering>
</security>
<modules>
<remove name="WebDAVModule" />
</modules>
<handlers>
<remove name="WebDAV" />
</handlers>
</system.webServer>
</configuration>
Request Filteringで拒否されたメソッドは404.6(Verb Denied)としてログに記録されます。
Next.js(App Router)
Route Handlerは、エクスポートしたメソッド(GET、POST など)だけを処理し、それ以外には405を返します。不要な PUT・DELETE をエクスポートしないことが基本です。全体で一括制限する例を示します(Next.js 16以降は proxy.ts。15以前は middleware.ts で関数名を middleware にします)。
// proxy.ts
import { NextResponse, type NextRequest } from "next/server";
const ALLOWED = new Set(["GET", "HEAD", "POST", "OPTIONS"]);
export function proxy(request: NextRequest) {
if (!ALLOWED.has(request.method)) {
return new NextResponse(null, { status: 405, headers: { Allow: [...ALLOWED].join(", ") } });
}
return NextResponse.next();
}
段階的な手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | warnの証拠に出たメソッドが、業務で本当に使われているか確認します(CMSの管理機能、ファイル共有、APIなど) |
| 2 | TRACEはまず無効化します。業務影響はほぼありません |
| 3 | WebDAVは、使っている領域だけに限定し、公開サイトの領域では無効にします |
| 4 | APIでPUT/DELETEを使う場合は、メソッドを残したうえで認証・認可を確認します |
| 5 | 設定後、実際のメソッド送信で拒否されることを確認します |
設定後の確認方法
# 申告されているメソッドを確認
curl -s -o /dev/null -D - -X OPTIONS https://www.example.lg.jp/ | grep -iE '^(allow|access-control-allow-methods):'
# TRACEが拒否されるか(405/403/501などが期待値)
curl -s -o /dev/null -w '%{http_code}\n' -X TRACE https://www.example.lg.jp/
# PUTが拒否されるか(自組織のサイトに限り、存在しないパスで確認)
curl -s -o /dev/null -w '%{http_code}\n' -X PUT --data 'x' https://www.example.lg.jp/miniparse-put-test.txt
サイトを壊さないための注意点
- OPTIONSそのものを拒否すると、CORSを使う外部連携(地図、予約、問い合わせフォームのAPIなど)が動かなくなることがあります。
LimitExceptの書き方を誤ると、POSTを使うフォームが403になります。問い合わせフォームや検索で動作確認してください。- CDNやWAFがOPTIONSに独自応答を返している場合、オリジンサーバーの設定と結果が一致しないことがあります。
よくある質問(FAQ)
AllowヘッダーにPUTがあると、誰でもファイルを書き込めるのですか?
多くの場合、実際にはアプリ側の認証・認可で拒否されます。逆に、Allowに出ていなくても実際には受け付けるサーバーもあります。このためセキュリティAIチェッカーは×ではなく△にとどめ、管理者側での実機確認を求めています。
OPTIONSメソッドそのものを無効にすれば安全ですか?
おすすめしません。OPTIONSはCORSのプリフライトで必要で、APIを他オリジンから利用させている場合は止めると正当な利用が壊れます。止めるべきは不要なメソッドそのものです。
TRACEメソッドはなぜ無効にする必要があるのですか?
受け取ったリクエストをそのまま返すため、XSSと組み合わせるとHttpOnly Cookieや認証ヘッダーを読み出すクロスサイトトレーシング(XST)に使われるおそれがあるためです。現在の主要ブラウザはJavaScriptからTRACEを送れませんが、残す理由はなく、ASVSとIPAはいずれも無効化を求めています。
ApacheでTRACEを止めるには<LimitExcept>で足りますか?
足りません。TRACEは<Limit>/<LimitExcept>では制限できないため、httpd.confでTraceEnable Offを設定します。TraceEnableの既定値はOnです。
REST APIでPUTやDELETEが△になりました。修正が必要ですか?
APIではPUT/DELETEは正当に使われます。そのURLで認証・認可が掛かっていることを確認できれば問題ありません。メソッドを残したうえで、個々のパスのアクセス制御を確認してください。
PATCHメソッドは判定対象ですか?
対象外です。APIで一般的に使われ、静的ファイル領域で有効化されることが少ないためです。
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参考資料
- OWASP ASVS 5.0.0 V4 API and Web Service(4.1.4)
- OWASP ASVS 5.0.0 V13 Configuration(13.4.4)
- OWASP WSTG HTTP Methods(WSTG-CONF-06)
- IPA 安全なウェブサイトの作り方 1.5 クロスサイト・スクリプティング
- RFC 9110 HTTP Semantics
- Apache HTTP Server core(TraceEnable)
- nginx ngx_http_core_module(limit_except)
- Microsoft Learn Request Filtering