STEP4伝わる文章で書く/第6章

プロポーザルの提案書は文章のコツで点が変わる ― 評価者が採点しやすい文章術の6原則

プロポーザルの提案書の文章で大切なのは、名文を書くことではなく、評価者が採点の根拠を短時間で見つけられるように書くことです。評価者は評価基準と採点表を手元に置き、限られた時間で複数社の提案書を評価項目ごとに採点するため、提案書を「味わって読む読者」ではなく「根拠を探す採点者」として読みます。この章では、企画提案書・技術提案書に共通する6つの原則を、悪い例と良い例、業務種別の例文、書き換え手順、AIへの指示例で解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約103分

提案書の評価者は、評価基準と採点表を手元に置き、限られた時間で複数社の提案書を読み比べます。評価者は提案書を「味わって読む読者」ではなく、「点を付ける根拠を探す採点者」です。1社あたりに割ける時間は限られています。評価項目が10前後ある案件では、評価者は1つの評価項目あたり数分で「この提案に何点を付けるか」を決めることになります。

この章では、採点者が根拠を見つけやすく、点を付けやすい文章を書くための6つの原則を、悪い例と良い例の対比で解説します。6つの原則とは、「結論先行」「評価基準の言葉をそのまま使う」「具体性」「〜しますで書く」「一文一義・短文化」「拾い読みに耐える文書にする」です。各原則には、評価者の視点から見て点が分かれる理由、業務種別ごとの例文、下書きを良い文章に書き換えるための操作手順(チェックリスト)、AIに書き直させるときの指示例を示します。提案書の下書きをAIに書き直させるときも、この手順をそのまま指示文に使えます。

この章の要点

  • 6-1 結論先行:提案書の各見出しの直後2行以内に「何をするか」「その結果どうなるか」という結論を書きます。理由・具体例・根拠はその後に続けます。段落・節・提案書全体のどの単位でも「結論→理由→具体例→結論」の順に並べ替えることで、評価者は数分で採点の根拠を見つけられます。
  • 6-2 評価基準の言葉をそのまま使う:評価基準の「評価の着眼点」に書かれた語句を、提案書の見出しと本文にそのまま使います。採点者は着眼点の語句を手がかりに提案書を探すため、言い換えると見落とされるおそれがあります。着眼点から名詞・述語を抽出し、見出し・冒頭文・太字の3か所に配置する手順で、見落としを防ぎます。
  • 6-3 具体性:数値・固有名詞・実績・手順:「適切に」「十分な」「迅速に」などの形容詞・副詞を、数値・固有名詞・実績・手順に置き換えます。具体的な記述は、評価者にとって採点の根拠になり、実現性の証拠にもなります。具体性の5要素(数値・固有名詞・手順・実績・根拠)のうち評価項目ごとに3つ以上を入れ、数値が出せないときは、頻度・期限・条件・判断基準のいずれかで代替します。匿名審査の案件では、自社の商品名や社内資格名を一般名詞と機能・実績に置き換えます。
  • 6-4 「〜します」で書く:提案書の述語は「〜します」で言い切ります。「できます」「努めます」「検討します」は約束の度合いが弱く、評価者は何を実施するのか判断できません。言い切れない場合は、自社の行動を言い切り、結果には前提条件を付けて書きます。言い切った内容は契約上の約束になりうるため、見積りと体制に照らして守れる範囲で言い切り、発注者の判断事項・法令上の決定・第三者の行動は言い切らずに「案を提示します」の形で書きます。
  • 6-5 一文一義・短文化:1つの文には1つの内容だけを書き、1文は60字以内を目安にします。専門用語・カタカナ語・略語は評価者全員が理解できる形に整え、文ごとに主語(誰が行うか)を明確にします。長文の分割・主語の復元・名詞化の解消は、手順に従えば機械的に行えます。
  • 6-6 拾い読みに耐える文書にする:評価者は提案書を最初から最後まで通読するとは限らず、評価項目ごとに該当箇所を拾い読みします。見出しだけで内容がわかる、箇条書きと文章を使い分ける、強調を絞る、ページ冒頭に要約ボックスを置く、の4点で拾い読みに耐える文書にします。仕上げには「拾い読みテスト」で点検します。

6-1

結論先行

提案書の各見出しの直後2行以内に「何をするか」「その結果どうなるか」という結論を書きます。理由・具体例・根拠はその後に続けます。段落・節・提案書全体のどの単位でも「結論→理由→具体例→結論」の順に並べ替えることで、評価者は数分で採点の根拠を見つけられます。

このページで解説すること(11項目)

「結論先行」を読む →

6-2

評価基準の言葉をそのまま使う

評価基準の「評価の着眼点」に書かれた語句を、提案書の見出しと本文にそのまま使います。採点者は着眼点の語句を手がかりに提案書を探すため、言い換えると見落とされるおそれがあります。着眼点から名詞・述語を抽出し、見出し・冒頭文・太字の3か所に配置する手順で、見落としを防ぎます。

このページで解説すること(11項目)

「評価基準の言葉をそのまま使う」を読む →

6-3

具体性:数値・固有名詞・実績・手順

「適切に」「十分な」「迅速に」などの形容詞・副詞を、数値・固有名詞・実績・手順に置き換えます。具体的な記述は、評価者にとって採点の根拠になり、実現性の証拠にもなります。具体性の5要素(数値・固有名詞・手順・実績・根拠)のうち評価項目ごとに3つ以上を入れ、数値が出せないときは、頻度・期限・条件・判断基準のいずれかで代替します。匿名審査の案件では、自社の商品名や社内資格名を一般名詞と機能・実績に置き換えます。

このページで解説すること(14項目)

「具体性:数値・固有名詞・実績・手順」を読む →

6-4

「〜します」で書く

提案書の述語は「〜します」で言い切ります。「できます」「努めます」「検討します」は約束の度合いが弱く、評価者は何を実施するのか判断できません。言い切れない場合は、自社の行動を言い切り、結果には前提条件を付けて書きます。言い切った内容は契約上の約束になりうるため、見積りと体制に照らして守れる範囲で言い切り、発注者の判断事項・法令上の決定・第三者の行動は言い切らずに「案を提示します」の形で書きます。

このページで解説すること(11項目)

「「〜します」で書く」を読む →

6-5

一文一義・短文化

1つの文には1つの内容だけを書き、1文は60字以内を目安にします。専門用語・カタカナ語・略語は評価者全員が理解できる形に整え、文ごとに主語(誰が行うか)を明確にします。長文の分割・主語の復元・名詞化の解消は、手順に従えば機械的に行えます。

このページで解説すること(14項目)

「一文一義・短文化」を読む →

6-6

拾い読みに耐える文書にする

評価者は提案書を最初から最後まで通読するとは限らず、評価項目ごとに該当箇所を拾い読みします。見出しだけで内容がわかる、箇条書きと文章を使い分ける、強調を絞る、ページ冒頭に要約ボックスを置く、の4点で拾い読みに耐える文書にします。仕上げには「拾い読みテスト」で点検します。

このページで解説すること(15項目)

「拾い読みに耐える文書にする」を読む →

検索でよくある疑問

Q評価者は提案書の文章のどこを見て採点している?

A

評価者が1社に割ける時間は限られており、評価項目が10前後ある案件では1項目あたり数分で点を決めることになります。採点表の評価の着眼点を読み、提案書の該当箇所を探し、「書いてある/書いていない」「具体的/抽象的」を判断します。着眼点の語句がすぐ見つかり、見出しの直後に結論・数値・手順がある文章ほど、採点の根拠として使われやすくなります。

Q提案書の文章で点が伸びない原因は?

A

多くの下書きは「迅速に」「適切に」などの抽象語や、数値・手順のない項目の列挙にとどまり、評価者が採点の根拠を見つけられません。抽象語を数値・手順・固有名詞に置き換えるだけで「実施内容がわかる」段階に上がります。結論が段落の後ろにある、文末が「努めます」で終わる、着眼点の語句を言い換えている、も中間点に落ち着く原因です。

Q提案書は「です・ます調」と「である調」のどちらで書く?

A

本書の文体統一ルールの例では、です・ます調で統一し、「〜と考えられる」「〜であろう」は使わないとしています。文体以上に大切なのは文末で、約束できることは「〜します」、できないことは「〜の場合は〜します」と条件を付けて書きます。分担執筆で章ごとに文体が混ざると、評価者に「社内で統一できていない」と受け取られるおそれがあります。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。