STEP6見せる・伝える・出す/第8章

提案書の図表とレイアウト ― 1ページ1メッセージと白黒印刷に耐えるプロポーザルのデザイン

提案書の図表とレイアウトは、評価者が採点の根拠を数秒で見つけられるように設計します。基本は1ページに主張を1つだけ置く「1ページ1メッセージ」で、ページ見出しをその主張にし、図と本文で同じ結論を支えます。図はコンセプト図、体制図・工程表、ビフォーアフター図・比較表の3系統から評価の着眼点に合うものを選びます。副本が白黒で複写されたり縮小印刷されたりすることもあるため、色だけに意味を持たせず、文字サイズやカラーユニバーサルデザインにも配慮します。様式規定の範囲内で企画提案書を読みやすくする方法を解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約10分

評価者は限られた時間の中で、採点表を片手に提案書をめくり、評価項目ごとの根拠を探しています。文章の内容が同じでも、ページの構成や図の作り方によって、根拠が一目で見つかる提案書と、読み返さなければ見つからない提案書に分かれます。この章では、1ページ1メッセージの原則、得点につながる図の種類、白黒印刷や縮小コピーに耐えるデザイン、様式規定の中で読みやすい紙面を作る方法を解説します。

この章の要点

  • 8-1 1ページ1メッセージの原則:提案書の1ページ(見開きなら1見開き)には、評価者に持ち帰ってほしい主張を1つだけ置きます。ページ見出しをその主張そのものにし、図と本文が同じ主張を別の角度から支える構成にすると、拾い読みでも採点の根拠が見つかります。
  • 8-2 効く図の種類:提案書で得点につながりやすい図は、①全体像を示すコンセプト図、②体制図・工程表、③ビフォーアフター図・比較表の3系統です。図は飾りではなく、評価基準の着眼点に対する「答え」を一目で示す道具として選びます。
  • 8-3 印刷・縮小に耐えるデザイン:提案書は白黒で複写されたり、縮小印刷されたりして評価者に配られることがあります。色だけに意味を持たせず、形・線種・文字でも区別できるように作り、小さくしても読める文字サイズを選びます。
  • 8-4 様式指定の中で最大限見せる:ページ数・フォント・文字サイズ・余白などの様式規定は、守らなければ減点や失格の対象になりえます。規定を守ったうえで、余白・見出し・図の配置を工夫して情報密度を調整し、評価者が読みやすい紙面を作ります。
このページの目次
  1. 8-1 1ページ1メッセージの原則
    1. ページ見出しをメッセージにする
    2. 図と本文を対応させる
  2. 8-2 効く図の種類
    1. 全体像(コンセプト図)
    2. 体制図・工程表
    3. ビフォーアフター図・比較表
  3. 8-3 印刷・縮小に耐えるデザイン
    1. 白黒印刷でも色の意味が消えない
    2. 文字サイズと縮小コピー
    3. 色覚の多様性への配慮
  4. 8-4 様式指定の中で最大限見せる
    1. ページ数・フォント・余白の規定を守る
    2. 情報密度の調整

8-11ページ1メッセージの原則

要点

提案書の1ページ(見開きなら1見開き)には、評価者に持ち帰ってほしい主張を1つだけ置きます。ページ見出しをその主張そのものにし、図と本文が同じ主張を別の角度から支える構成にすると、拾い読みでも採点の根拠が見つかります。

評価者は、採点表を片手に提案書をめくりながら「この評価項目の根拠はどこか」を探しています。1ページに複数の主張が混在していると、評価者はどれがそのページの結論なのかを自分で判断しなければならず、読み落としや誤解が生まれます。1ページ1メッセージは、評価者の「探す手間」を最小にするための設計ルールです。

ページ見出しをメッセージにする

ページ見出しを「項目名」だけにせず、そのページで言いたい結論を短い文で書きます。項目名は評価基準と一致させる必要があるため、「項目名+メッセージ」の2段構成にすると両立できます。

  • 悪い例: 「3. 実施体制」
  • 良い例: 「3. 実施体制 ― 窓口を1名に一本化し、問い合わせへの回答を原則翌営業日以内に返します」

良い例では、見出しを読んだだけで「この会社の体制の特徴は何か」が分かります。評価者が採点表に「窓口一本化、回答期限明示」とメモできる状態を作ることが目的です。メッセージは40字前後を目安に収めると、見出しとして一目で読めます。

図と本文を対応させる

図と本文が別々のことを語っていると、評価者は両方を読み比べる必要があり、主張がぼやけます。図は本文の結論を視覚的に裏付けるものとして配置し、次の3点を守ります。

  1. 図番号と図タイトルを付ける:「図3-1 問い合わせ対応の流れ(受付から回答まで原則翌営業日以内)」のように、図タイトル自体にもメッセージを入れます。
  2. 本文から図を参照する:「図3-1のとおり、受付から回答までを3段階で管理します」と書き、本文と図を結びます。
  3. 図中の用語と本文の用語をそろえる:本文で「定例会」と書いたものを図で「進捗会議」と書かないようにします。用語のずれは、別の会議が2つあるように読まれる原因になります。
  • 悪い例: 本文で研修計画を説明しているページに、会社のサービス全体像の図が入っている。
  • 良い例: 本文で「3回の職員研修で操作を定着させる」と書き、隣に研修3回の時期・対象・到達目標を並べた図を置く。

よくある質問

Q1ページ1メッセージだと、ページ数制限内に情報が収まりません。

A

メッセージを1つに絞ることと、情報量を減らすことは別です。1つの主張を支える根拠(数値・手順・実績)は同じページに複数置いて構いません。収まらない場合は、配点の低い項目の記述を圧縮し、配点の高い項目にページを優先配分します。

8-2効く図の種類

要点

提案書で得点につながりやすい図は、①全体像を示すコンセプト図、②体制図・工程表、③ビフォーアフター図・比較表の3系統です。図は飾りではなく、評価基準の着眼点に対する「答え」を一目で示す道具として選びます。

図を入れる目的は、文章で読むと時間がかかる関係性・順序・変化を、数秒で理解させることです。評価項目ごとに「この項目で評価者が確認したいことは何か」を考え、それに合う図の種類を選ぶと、図が採点根拠として機能します。

全体像(コンセプト図)

提案書の冒頭か、「業務の理解度」「実施方針」の項目のページに、提案全体を1枚で示す図を置きます。発注者の課題、提案の柱(3つ程度)、期待される効果を、左から右へ、または上から下へ流れる構造で配置するのが基本形です。

  • 悪い例: 自社のサービスロゴやアイコンを多数並べた、関係性の分からないイメージ図。
  • 良い例: 左に「現状の課題(窓口の待ち時間が長い・申請書の記入誤りが多い)」、中央に「提案の3本柱(事前入力・窓口案内の一本化・職員研修)」、右に「効果(待ち時間の短縮・再来庁の減少)」を矢印でつないだ図。

コンセプト図は、評価者が提案全体を思い出すときの「索引」になります。提案書の後続の評価項目のページでも同じ図を小さく再掲し、「今どの柱の話をしているか」を色や枠で示すと、全体と部分の関係が伝わります。

体制図・工程表

実施体制とスケジュールは、文章より図のほうが圧倒的に読みやすい項目です。

体制図では、発注者を含めた関係者全体を描き、各箱に「役割」「氏名または役職」「主な資格・経験」を入れます。発注者との窓口がどこか、意思決定は誰がするか、外部協力会社がいる場合はどこに位置するかを線で示します。匿名審査の場合は氏名を伏せ、「管理責任者(経験○年・類似業務○件)」のように記載します。

工程表は、横軸に月、縦軸に作業項目を置いたガントチャートが一般的です。マイルストーン(中間報告、納品など)を記号で示し、発注者側の確認期間も同じ表に入れると、実現可能性への評価が上がりやすくなります。

  • 悪い例: 作業項目を20行以上並べ、文字が小さく読めない工程表。
  • 良い例: 主要作業を8〜10行程度に集約し、詳細工程は別紙または本文で補足した工程表。

ビフォーアフター図・比較表

提案による変化を示すには、導入前と導入後を左右に並べた図が効果的です。比べる軸(所要時間、手順数、担当者数など)を同じ並びにそろえることが条件です。

比較表は、複数の手法の中から自社が採用する手法を選んだ理由を示すときに使います。例えば「手法A・手法B・提案手法」を列にとり、「導入期間」「職員の負担」「費用」などを行にとって、提案手法が評価基準に照らしてなぜ最適かを示します。他社名や他社製品名を挙げて比較することは避け、一般的な手法名で比較します。

よくある質問

Q図はどのくらいの数を入れればよいですか。

A

決まった数はありませんが、配点の大きい評価項目には1つ以上の図を置くと、拾い読みでも根拠が目に入ります。逆に、文章で十分伝わる内容を図にすると、ページを消費するだけになります。

8-3印刷・縮小に耐えるデザイン

要点

提案書は白黒で複写されたり、縮小印刷されたりして評価者に配られることがあります。色だけに意味を持たせず、形・線種・文字でも区別できるように作り、小さくしても読める文字サイズを選びます。

提出した提案書が、そのままの状態で評価者の手元に届くとは限りません。自治体によっては、提出された副本をさらに複写して評価者に配付したり、審査資料をA3からA4に縮小してとじ込んだりすることがあります。カラーで作った図が白黒コピーされると、色の違いで区別していた情報が消えてしまいます。

白黒印刷でも色の意味が消えない

色の違いだけで情報を区別しないことが基本です。

  • 悪い例: 工程表で「自社作業=青」「発注者作業=緑」と色だけで区別している。白黒コピーするとどちらも同じ灰色になり、誰の作業か分からなくなる。
  • 良い例: 自社作業は塗りつぶしのバー、発注者作業は斜線(ハッチング)のバーにし、凡例にも「自社」「発注者」と文字で明記する。

グラフでも同じで、折れ線は実線・破線・点線のように線種を変え、可能なら線の端にデータ名を直接書き込みます。棒グラフは塗りの濃淡に明確な差をつけるか、模様を変えます。作成した資料は、提出前に一度、実際に白黒で印刷して確認することを習慣にしてください。自治体が公開しているユニバーサルデザインの印刷物ガイドラインにも、白黒コピーで情報が読み取れるかを確認するよう求めている例があります。

文字サイズと縮小コピー

本文の文字サイズは、様式に指定がなければA4で10.5〜12ポイント程度が1つの目安です。自治体の印刷物ガイドラインには、一般向けの印刷物ではA4で12ポイント以上(より読みやすくするには14ポイント以上)を推奨する例もあります。図表の中の文字は本文より小さくなりがちですが、8ポイントを下回ると縮小コピーで判読しにくくなるため、8ポイント以上を目安にします。

A3横の工程表や体制図をA4に縮小すると、縮小率は約71%(長さの比で1/√2)になり、文字の大きさも約7割になります。A3で作る図は、縮小後も読めるように、元の文字サイズを大きめに設定します。読みやすさを重視する場合は、文字の形が分かりやすく読み誤りが少ないよう設計された「UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)」を使う選択肢もあります。ただし、様式でフォントが指定されている場合は指定に従います。

色覚の多様性への配慮

人によって色の見え方は異なり、特に赤と緑、オレンジと黄緑などの組み合わせが見分けにくい人がいます。評価者の中にも、そのような見え方の人がいる可能性があります。色覚の多様性に配慮した色づかいは「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」と呼ばれ、見分けやすい色の組み合わせとして、カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会(DICグループ、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構などで構成)による「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」(アクセントカラー9色・ベースカラー7色・無彩色4色の計20色)が公開されています。

実務上は次の点を守ると、多くの人にとって見やすい資料になります。

  1. 赤と緑を対比に使わない:「良い=緑、悪い=赤」のような使い方は避け、青とオレンジのように明るさにも差がある組み合わせを選びます。
  2. 使う色を絞る:強調色は1〜2色に限定し、それ以外は灰色系でまとめます。
  3. 色+形+文字で伝える:「○△×」の記号や「重要」などの文字を色と併用します。
  4. 背景と文字の明度差を大きくする:薄い色の背景に薄い色の文字を載せないようにします。

よくある質問

Q自分の資料が色覚の多様性に配慮できているか、どう確認すればよいですか。

A

白黒印刷で区別できるかを確認するのが手軽な方法です。加えて、色の見え方をシミュレーションするツールやアプリで画面を確認すると、見分けにくい組み合わせを発見できます。

8-4様式指定の中で最大限見せる

要点

ページ数・フォント・文字サイズ・余白などの様式規定は、守らなければ減点や失格の対象になりえます。規定を守ったうえで、余白・見出し・図の配置を工夫して情報密度を調整し、評価者が読みやすい紙面を作ります。

自治体のプロポーザルでは、提案書の用紙サイズ(A4縦・A3横など)、ページ数の上限、文字サイズの下限、片面か両面か、表紙や目次をページ数に含めるかといった様式規定が募集要項や作成要領に定められていることが一般的です。見せ方の工夫は、この規定の内側で行うことが大前提です。

ページ数・フォント・余白の規定を守る

規定違反の典型は、ページ数の超過と文字サイズの下限割れです。ページ数を守るために文字を小さくしたり、余白を極端に狭めたりすると、規定違反になるか、規定内でも読みにくく評価を下げます。

  • 悪い例: 「10ページ以内」の規定に収めるため、本文を9ポイントにし、余白を5ミリまで詰めた。作成要領には「10.5ポイント以上」と書かれていた。
  • 良い例: 作成要領の規定(文字サイズ・余白・ページ数のカウント方法)を一覧にして作業開始時に共有し、規定に合わせたテンプレートを最初に作ってから書き始めた。

規定が曖昧な場合(例:表紙をページ数に数えるか、図中の文字にも文字サイズ規定が適用されるか)は、質問期間内に質問書で確認しておきます。

情報密度の調整

紙面が文字で埋め尽くされていると、評価者はどこから読めばよいか分からなくなります。一方で、余白が多すぎると「書くことがない提案」に見えます。目安として、1ページの中に「見出し」「要約(3〜5行)」「本文または箇条書き」「図表」の4要素が見分けられる程度の余白を確保します。

情報密度を調整する具体的な方法は次のとおりです。

  1. 要約ボックスを置く:見出しの直下に枠で囲んだ3〜5行の要約ボックスを置き、本文を読まなくても結論が分かるようにします。
  2. 段組みを使う:A4縦なら「左に本文・右に図」の2段構成にすると、図と本文の対応が分かりやすくなります。
  3. 詳細は表に逃がす:作業手順や役割分担など、文章にすると長くなる情報は表にまとめます。
  4. 配点に応じてページを配分する:配点に比例してページを配分します(例:配点20点の項目に2ページ、配点5点の項目に半ページ)。
  • 悪い例: 全ページが同じ密度の文章で埋まり、どのページが重要か分からない。
  • 良い例: 各ページの見出し直下に要約ボックスを置き、作業手順は表にまとめ、本文は箇条書きを中心にしたため、拾い読みでも各ページの結論と根拠が見つかる。

よくある質問

Qカラー印刷で提出してよいですか。

A

作成要領でカラーを認めている場合は使って構いません。ただし、副本が白黒で複写される可能性を考え、白黒でも意味が通じるデザインにしておくのが安全です。カラーの可否が書かれていない場合は、質問書で確認します。

検索でよくある疑問

Q提案書の文字サイズは何ポイントが適切?

A

様式に指定がなければ、A4で本文10.5〜12ポイント程度が1つの目安です。自治体の印刷物ガイドラインには、一般向けの印刷物で12ポイント以上を推奨する例もあります。図表の中の文字は8ポイントを下回ると縮小コピーで読みにくくなります。A3横の工程表や体制図をA4に縮小すると文字は約7割の大きさになるため、A3で作る図は元の文字を大きめにします。作成要領に文字サイズの下限がある場合は、必ずそちらに従います。

Q提案書の体制図や工程表には何を書けばよい?

A

体制図は発注者を含む関係者全体を描き、各箱に役割、氏名または役職、主な資格・経験を入れ、窓口と意思決定者を線で示します。匿名審査では氏名を伏せます。工程表は横軸に月、縦軸に作業を置いたガントチャートが一般的で、主要作業を8〜10行程度に集約し、中間報告や納品などのマイルストーンと発注者側の確認期間も同じ表に入れます。

Q提案書のページ見出しはどう付けると評価されやすい?

A

「3. 実施体制」のような項目名だけにせず、「項目名+メッセージ」の2段構成にします。項目名は評価基準と一致させ、続けて「窓口を1名に一本化し、回答を原則翌営業日以内に返します」のように、そのページの結論を40字前後で書きます。見出しを読むだけで特徴が分かり、評価者が採点表にメモしやすくなります。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。