STEP5評価項目ごとに書く/7-1/評価項目別の書き方

業務の理解度の書き方 ― 現状→課題→原因→解決の方向性で「うちの事情を分かっている」と伝える課題認識

業務の理解度で点になるのは、仕様書の言い換えではなく、発注者の公開資料に基づく「現状→課題→原因→解決の方向性」を示せているかどうかです。評価者は仕様書を書いた本人かそれを熟読した職員なので、仕様書の要約には新しい情報がありません。この節では、プロポーザルの業務理解・課題認識の書き方として、言い換え度の診断法、4段構成の分量配分、発注者が気づいていない課題を押しつけにならずに示す言い方、総合計画や議会会議録の引用ルールを、業務種別の例文とあわせて紹介します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約12分

要点(結論)

業務の理解度の評価で点になるのは、仕様書の要約ではなく「現状 → 課題 → 原因 → 解決の方向性」を発注者固有の事情で説明できているかどうかです。発注者が気づいていない課題を根拠付きで一つ示せると、他社と差がつきます。

このページの目次
  1. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  2. 仕様書の言い換えで終わらせない
  3. 言い換え度の診断法
  4. 現状 → 課題 → 原因 → 解決の方向性の4段構成で書く
  5. 「発注者が気づいていない課題」を安全に示す言い方
  6. 背景資料(総合計画・議事録等)の引用の仕方
  7. この項目の標準構成(テンプレート)
  8. 書き換え手順(チェックリスト)
  9. 業務種別ごとの例文
  10. よくある失敗パターンと処方箋
  11. AIに書き直させるときの指示例
  12. よくある質問

業務の理解度は、多くの自治体の評価基準で最初に置かれる評価項目です。国土交通省の「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」でも、実施方針の評価項目として「業務の理解度」が挙げられ、業務の目的・条件・内容の理解度が高い場合に優位に評価するという考え方が示されています。自治体の委託業務でも同じ発想で、「この事業者は、なぜこの業務が必要なのかを分かっているか」が問われます。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

自治体の評価基準表では、業務の理解度の着眼点が「目的・条件・内容の理解度が高く、簡潔に記載されている」「業務の趣旨を十分に理解し、中立的かつ客観的な方針で遂行できる」「本市の現状を的確に把握している」といった文言で書かれるのが典型です。配点は全体の5〜10%程度とする例が見られ(目安)、3段階評価なら「優れている=満点」「標準=中間点」「劣る=0点」のように採点されます。

満点・中間・低得点の答案は、次のように分かれます。

評価 答案の特徴 評価者の内心
満点 発注者の公開資料や統計を引いて現状を数値で示し、仕様書に書かれていない課題の原因まで仮説を立て、自社の解決の方向性と結び付けている 「うちの事情を調べて来ている。仕様書の背景まで分かっている」
中間 仕様書の目的・背景を自分の言葉で整理し、一般的な課題(人口減少、職員の負担増など)を挙げているが、発注者固有の事情や数値がない 「間違ってはいないが、どの自治体に出しても通用する文章だ」
低得点 仕様書の文章の言い換え、または自社の理念や抽象的な決意表明で埋まっている 「読んでいない、または調べていない」

点が分かれる最大の理由は、評価者が仕様書を書いた本人またはそれを熟読した職員だという点です。自分たちが書いた内容を読み返しても、新しい情報はゼロです。評価者が「知らなかった」「そう整理されると分かりやすい」と感じる要素があって初めて、理解度が「高い」と判断されます。

仕様書の言い換えで終わらせない

最も多い失点パターンは、仕様書の「業務の目的」「業務内容」をそのまま言い換えて並べることです。仕様書を書いた本人である評価者にとって、自分たちの文章の言い換えは新しい情報ではなく、理解度が高いと判断する材料になりません。

悪い例: 本業務は、市民の利便性向上と行政事務の効率化を目的として、オンライン申請システムを導入するものと理解しています。当社は本業務の趣旨を十分に理解し、誠実に業務を遂行します。

良い例: 貴市では電子申請の対象手続きを拡大してきた一方、オンライン利用率は対象手続き全体の1割台にとどまっています(貴市DX推進計画の進捗報告による)。当社は、利用率が伸びない主因を「手続き数の不足」ではなく「申請画面に到達するまでの導線の分かりにくさ」と捉えています。本業務では、利用件数の多い上位20手続きの導線改善を最優先に進めます。

良い例は、発注者の公開資料に基づく現状、事業者としての課題の解釈、そこから導かれる優先順位までを一続きで示しています。数値や資料名は、実際に確認できたものだけを使ってください。

言い換え度の診断法

自分の下書きが「仕様書の言い換え」になっていないかは、次の方法で機械的に診断できます。

  1. 名詞の重なりを数える:下書きの業務理解の節に出てくる名詞のうち、仕様書の「目的」「背景」の節にも出てくる名詞の割合を数えます。7割を超えていれば、言い換えになっている可能性が高いと考えてください。5割以下に抑えるのが目安です。
  2. 数値の有無を見る:仕様書に書かれていない数値(利用率、件数、人口構成、予算規模、過去の実績値など)が一つもなければ、発注者固有の情報を調べていない証拠です。
  3. 「なぜ」に答えているかを見る:「なぜこの業務が今必要なのか」「なぜ今までの取組みで解決しなかったのか」への答えが書かれているかを確認します。仕様書は「何をするか」は書きますが「なぜ解決しなかったか」は普通書きません。ここが提案者の付加価値になります。
  4. 自治体名を入れ替えて読む:発注者名を別の自治体名に置き換えても文章が成り立つなら、固有性がありません。
  5. 決意表明の行数を数える:「誠実に」「全力で」「十分に理解し」といった姿勢の表明は、理解度の証拠になりません。これらの文は削除候補です。

現状 → 課題 → 原因 → 解決の方向性の4段構成で書く

業務理解の節は、次の4段構成にすると採点しやすくなります。従来の「現状 → 課題 → 原因」の3段に、「(自社の)解決の方向性」を1段加えることで、後続の実施方針への橋渡しが明確になります。

段 書く内容 根拠の例 分量の目安
現状 数値や事実で示す今の状態 総合計画、統計、議会答弁、前年度の成果物 全体の3割
課題 現状と目指す姿とのギャップ 計画の目標値、仕様書の「目的」 全体の2割
原因 ギャップが生じている理由の仮説 他自治体の類似事例、自社の過去業務での知見 全体の3割
解決の方向性 原因に対して自社がどの方向で打ち手を講じるか(詳細は実施方針に委ねる) 自社の類似業務での経験 全体の2割

原因まで書くことで、後続の「実施方針」が原因への打ち手として自然につながります。原因を書かずに解決策へ飛ぶと、解決策の妥当性を評価者が判断できません。解決の方向性は「方針1〜3の見出し程度」にとどめ、実施方針の節と重複させないのがコツです。

「発注者が気づいていない課題」を安全に示す言い方

仕様書に書かれていない課題を指摘すると、高い評価につながることがあります。国土交通省の運用ガイドラインでも、実施方針の評価の着目点として「業務に関する知識、有益な代替案、重要事項の指摘がある場合に優位に評価する」という考え方が示されています。ただし、発注者の現状を否定する書き方は逆効果です。「仕様書の前提を補強する追加の視点」として、根拠とセットで、かつ本業務の範囲内で対処できる形で示してください。

悪い例: 現行の窓口運用には多くの問題があり、抜本的な見直しが必要です。

良い例: 仕様書の対象範囲に加え、制度改正に伴い来年度に申請が集中する可能性がある点に留意が必要と考えます。本業務の要件整理の段階で、繁忙期の想定件数を貴課と確認し、画面設計に反映します(追加費用なし)。

押しつけにならない言い方には、次の型があります。

  • 「〜に留意が必要と考えます」型:断定を避け、提案者の見解として示します。
  • 「仕様書の〜に加え」型:仕様書を否定せず、補足として位置付けます。
  • 「貴課と確認のうえ」型:判断を発注者に委ねる姿勢を示します。
  • 「本業務の範囲内で対応します(追加費用なし)」型:追加負担を求めないことを明言し、評価者が安心して加点できるようにします。

避けるべきは、「問題が多い」「対応が遅れている」「不十分である」など、現状の担当者を責めるように読める語です。発注者側の担当者は評価者でもあり、自分の仕事を批判された文章に高い点は付けにくいものです。

背景資料(総合計画・議事録等)の引用の仕方

発注者固有の現状を示す根拠として使いやすい公開資料は、次のとおりです。

資料 入手先 使い方
総合計画・分野別計画(DX推進計画、観光振興計画など) 自治体サイト 目標値と現状値のギャップを示す
行政評価・事務事業評価シート 自治体サイト 前年度の達成度、担当課自身が挙げている課題を引く
議会会議録・委員会資料 議会サイト(会議録検索) 議員の質問と執行部の答弁から、政策上の関心事を把握する
予算書・予算説明資料 自治体サイト 本業務の予算規模と前後の年度の位置付けを知る
住民意識調査・アンケート結果 自治体サイト 住民側の課題認識を引く
国の統計(国勢調査、e-Stat など) 政府統計サイト 人口構成、産業構造を数値で示す

引用のルールは次の3点です。

  1. 資料名と年版を明記する:「貴市DX推進計画(令和○年○月改定)の進捗報告によれば」のように、評価者が確認できる形で書きます。
  2. 数値は丸めない:「約1割」ではなく「11.8%」のように、資料の数値をそのまま使います。ただし資料が「約」としている場合はそれに従います。
  3. 引用と解釈を分ける:「〜である(資料)。当社はこれを〜と捉えています」のように、事実と提案者の見解を文で分けます。混ぜると、提案者の推測が事実のように読まれ、誤りがあったときの信頼低下が大きくなります。

議事録を引く場合は、特定の議員や職員の発言を名指しで批評しないようにします。「議会でも〜の必要性が議論されています」程度の表現にとどめるのが安全です。

この項目の標準構成(テンプレート)

1. 業務の背景と現状(数値・資料名付き、5〜8行)
   ・発注者の計画上の位置付け
   ・現状を示す数値2〜3個
2. 本業務で解決すべき課題(3件程度、箇条書き)
   ・課題A:現状と目標のギャップ
   ・課題B:…
3. 課題の原因に関する当社の見解(課題ごとに1〜2文)
4. 仕様書に加えて留意すべき点(1件、根拠と「範囲内で対応」の明記)
5. 解決の方向性(方針1〜3の見出し程度)

書き換え手順(チェックリスト)

  • 仕様書の名詞と重なる割合が5割以下になっているか
  • 発注者の公開資料に基づく数値が2つ以上入っているか(資料名・年版付き)
  • 「現状 → 課題 → 原因 → 解決の方向性」の4段がすべてそろっているか
  • 課題は3件程度に絞られ、後続の実施方針と1対1で対応しているか
  • 「なぜ今までの取組みで解決しなかったか」への仮説があるか
  • 発注者を批判するように読める語(不十分・遅れている・問題が多い)を消したか
  • 仕様書にない課題は「留意点」「補足」として根拠付きで示し、「範囲内で対応」を明記したか
  • 「誠実に」「全力で」「十分に理解し」などの決意表明を削除したか
  • 自治体名を入れ替えても成り立つ文章が残っていないか

業務種別ごとの例文

調査・計画策定(地域公共交通計画の策定支援)

悪い例: 本業務は、持続可能な地域公共交通の実現に向け、地域公共交通計画を策定するものと理解しています。人口減少や高齢化が進むなか、公共交通の維持は重要な課題です。

良い例: 貴市の路線バスは3系統のうち2系統で収支率が3割を下回り、市の補助額は5年間で約1.6倍に増えています(貴市地域公共交通協議会資料)。一方、住民アンケートでは「利用したい時間帯に便がない」が不満の第1位です。当社は、利用減の主因を「需要の消失」ではなく「ダイヤと需要時間帯のずれ」と捉え、本計画では通院・通学の時間帯別需要を調査したうえで再編案を検討します。

なぜ良いか: 発注者固有の数値(収支率、補助額の推移、アンケート結果)で現状を示し、「需要の消失ではなくダイヤのずれ」という原因仮説を立てているため、後続の調査設計の妥当性を評価者が判断できます。「人口減少・高齢化」という一般論は、どの自治体にも当てはまるので消しています。

イベント・広報(移住促進PR事業)

悪い例: 本業務は、貴市の魅力を広く発信し、移住者の増加につなげることを目的とするものと理解しています。SNSを活用した効果的な情報発信を行います。

良い例: 貴市の移住相談件数は年間約120件で推移していますが、相談から移住に至った割合は1割弱にとどまっています(貴市移住定住推進計画の実績報告)。相談者の7割が子育て世帯である一方、現在の移住サイトは自然環境の紹介が中心で、保育・教育・医療の情報は各課のページに分散しています。当社は、課題を「認知の不足」ではなく「相談後の検討段階で必要な情報が届いていないこと」と捉え、本業務では子育て世帯向けの情報を一か所にまとめる発信を優先します。

なぜ良いか: 「認知を広げる」という仕様書の前提に対し、「相談後の離脱」という発注者が明示していない課題を数値根拠付きで示しています。SNS活用という手段先行の記述を、課題から導かれる優先順位に置き換えています。

窓口・業務委託(総合窓口の運営委託)

悪い例: 市民サービスの向上と職員負担の軽減を目的とした窓口業務の委託であると理解し、丁寧で正確な窓口対応を実施します。

良い例: 貴市の市民課窓口では、3月・4月の繁忙期に待ち時間が平均40分を超える日があり(貴市行政評価シート)、繁忙期の職員超過勤務が課の課題として挙げられています。当社は、待ち時間の主因を「窓口数の不足」ではなく「申請書の記載不備による差戻し」と捉えています。本業務では、記載例の整備とフロア案内による事前確認を組み合わせ、1件あたりの処理時間の短縮を優先します。

なぜ良いか: 行政評価シートという発注者自身の資料から課題を引き、「窓口数ではなく差戻し」という原因仮説を立てることで、人員増に頼らない解決の方向性を示しています。「丁寧で正確」という決意表明は消しています。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 症状 処方箋
一般論の積み上げ 人口減少・高齢化・DXの必要性など、どこにでも当てはまる話が続く 発注者の計画名と数値に置き換える。一般論は1文以内に圧縮する
現状説明が長すぎる 現状の記述が節の7割を占め、課題と原因が薄い 現状は3割に抑え、原因の仮説に紙幅を移す
原因を飛ばして解決策へ 「〜が課題です。そこで当社は〜を提案します」 間に「課題が生じている理由は〜と考えます」を1文入れる
批判的な指摘 「現行の取組みは不十分」「対応が遅れている」 「〜に留意が必要」「仕様書に加えて〜の視点が有効」に言い換える
根拠のない数値 「利用率は低い」「多くの住民が不満」 資料名付きの数値に差し替えるか、数値がなければ「目安」「推定」と明記する
課題が多すぎる 課題が7つも8つも並ぶ 3件に絞り、残りは「その他の留意点」として1行にまとめる

AIに書き直させるときの指示例

以下の「業務理解」の下書きを、自治体プロポーザルの評価者が「理解度が高い」と判断する文章に書き直してください。
条件:
1. 「現状 → 課題 → 原因 → 解決の方向性」の4段構成にする。
2. 現状には、添付した発注者の公開資料(計画名・年版)から数値を2つ以上引用する。数値は丸めない。
3. 課題は3件以内。それぞれに「なぜ今まで解決しなかったか」の原因仮説を1文付ける。
4. 仕様書に書かれていない留意点を1件、「〜に留意が必要と考えます」の形で示し、「本業務の範囲内で対応(追加費用なし)」を明記する。
5. 発注者を批判するように読める語(不十分・遅れている・問題が多い)と、決意表明(誠実に・全力で・十分に理解し)を使わない。
6. 仕様書の文章の言い換えになっている文は削除する。
7. です・ます調。発注者は「貴市」、自社は「当社」と書く。
下書き:
(ここに貼り付け)
仕様書の目的・背景:
(ここに貼り付け)

よくある質問

Q業務理解の節はどのくらいの分量が適切ですか。

A

様式に指定がなければ、提案書全体の1割程度が目安です。配点が高い場合は増やしますが、現状説明が長くなりすぎると解決策の紙幅が減るため、課題と原因に重点を置いてください。

Q発注者の公開資料に数値がほとんどありません。どうすればよいですか。

A

国の統計(国勢調査、住民基本台帳人口など)から人口規模・年齢構成を引き、同規模自治体の一般的な傾向を「目安」として示す方法があります。そのうえで「本業務の着手時に貴課の保有データで確認します」と書けば、根拠の不足を補えます。推測を事実のように書かないことが重要です。

Q仕様書に書かれていない課題を指摘して、「余計なことを言う会社」と思われませんか。

A

根拠とセットで、「仕様書の補足」として、「範囲内で対応」を明記する3条件を守れば、加点要素として受け止められやすくなります。逆に、根拠なく仕様の前提を否定したり、追加費用を前提にした指摘をしたりすると、マイナスに働きます。

検索でよくある疑問

Q業務の理解度の配点はどのくらいですか?

A

業務の理解度は多くの自治体の評価基準で最初に置かれる評価項目で、配点は全体の5〜10%程度とする例が見られます(目安)。3段階評価なら「優れている=満点」「標準=中間点」「劣る=0点」のように採点されます。国土交通省の運用ガイドラインでも、実施方針の評価項目として業務の理解度が挙げられています。

Q業務の理解度で満点と中間点の差はどこで生まれますか?

A

満点の答案は、発注者の公開資料や統計を引いて現状を数値で示し、仕様書に書かれていない課題の原因まで仮説を立て、自社の解決の方向性と結び付けています。中間の答案は、仕様書の目的を自分の言葉で整理して一般的な課題を挙げているものの、発注者固有の事情や数値がなく、どの自治体にも通用する文章になっています。

Q業務の理解度と実施方針はどうつなげればよいですか?

A

業務理解の節で課題を3件程度に絞り、それぞれに「なぜ今まで解決しなかったか」という原因の仮説を付けます。原因まで書くと、後続の実施方針が原因への打ち手として自然につながります。業務理解の最後に置く解決の方向性は「方針1〜3の見出し程度」にとどめ、詳細は実施方針に委ねて重複を避けるのがコツです。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。