STEP5評価項目ごとに書く/7-9/評価項目別の書き方

入札の実績の書き方 ― 類似業務実績を分野・規模・発注者種別で示し、会社概要は評価に効く情報に絞る

入札やプロポーザルの実績は、件数の多さではなく、募集要項の「同種・類似業務」の定義に合う完了実績が、分野・規模・発注者種別の3軸で本業務とどこが似ているかを示せているかで評価されます。定義に合う1〜2件を丁寧に書いたほうが、無関係な10件より点になります。この節では、類似業務実績の書式と「類似点」列の作り方、守秘義務に配慮した発注者の書き方、実績が少ない場合に会社・担当者個人・協力会社の3層で示す方法、評価に効く会社概要の選び方を例文付きで解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約10分

要点(結論)

実績は件数より「類似性」で評価されます。規模・分野・発注者の種別のどこが本業務と似ているかを明示し、守秘義務に配慮しながら成果を具体的に書きます。実績が少ない場合は会社・担当者個人・協力会社の3層に分けて示し、会社概要は本業務の遂行に関係する情報に絞ります。

このページの目次
  1. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  2. 類似性を示す:規模・分野・発注者の種別
  3. 守秘に配慮した実績の書き方
  4. 類似性の3軸と実績が少ない場合の見せ方
  5. 会社概要の書き方:評価に効く情報の選び方
  6. この項目の標準構成(テンプレート)
  7. 書き換え手順(チェックリスト)
  8. 業務種別ごとの例文
  9. よくある失敗パターンと処方箋
  10. AIに書き直させるときの指示例
  11. よくある質問

実績の評価では、「同種・類似の業務を最後までやり遂げた経験があるか」が見られます。国の運用ガイドラインでも、企業や予定技術者の同種・類似業務の実績が評価項目として例示されています。募集要項で「同種業務」「類似業務」の定義や対象期間(過去○年以内など)が示されている場合は、その定義に合う実績だけを選んで書きます。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

実績の評価基準は、「同種業務の実績がある場合は◯点、類似業務の場合は◯点」のように段階を設ける方式や、「実績の内容が本業務の遂行に有効か」を定性的に見る方式があります。いずれも評価者が確認するのは、①募集要項の定義に合う実績か、②本業務とどこが似ているか、③最後までやり遂げたか(完了実績か)、④成果が確認できるか、の4点です。会社概要については、「業務を安定して遂行できる経営基盤があるか」「地域内に拠点があるか」といった着眼点が置かれることがあります。

満点に近い答案は、定義に合う実績が規模・分野・発注者種別の3軸で本業務と対応づけられ、役割(元請・再委託)と成果が具体的に書かれています。中間の答案は、実績は多いが類似点が書かれておらず、評価者が自分で探さなければならないものです。低得点の答案は、定義に合わない実績や途中の業務が混ざっている、あるいは「多数」「豊富」という言葉だけで個別の記載がないものです。実績が少なくても、定義に合う1〜2件を丁寧に書いたほうが、無関係な10件より点になります。

類似性を示す:規模・分野・発注者の種別

悪い例: 主な実績:A市システム導入、B町Webサイト構築、C社業務改善コンサルティング、D県イベント運営 ほか多数。

良い例:

業務概要 発注者種別 規模 本業務との類似点 成果
電子申請の利用促進支援 市(人口約10万人) 契約期間10か月 業務内容・発注者規模が同等 対象手続きのオンライン利用率が向上
行政手続きの導線改善調査 町 契約期間6か月 分析手法が同一 改善提案20件のうち15件が採用
職員向けデジタル研修 県 延べ受講者300名 研修業務が同種 研修内容が翌年度の職員研修計画に反映

類似点の列を設けることで、評価者が「何が似ているか」を探す手間が省けます。民間企業向けの実績は、自治体業務との共通点(業務内容や規模)を説明できる場合に限って載せます。

守秘に配慮した実績の書き方

契約上、発注者名を公表できない実績もあります。その場合は「関東地方の市(人口約10万人)」のように、地域・種別・規模で示します。募集要項で発注者名や契約書の写しの提出を求められている場合は、事前に発注者の了解を得るなど、守秘義務との関係を確認してください。匿名審査(社名記載禁止)の案件では、実績の記載から社名が推測されないよう、様式の指示に従います。

類似性の3軸と実績が少ない場合の見せ方

類似性は、分野(業務内容)、規模(金額・期間・対象者数)、発注者種別(自治体か、同規模の団体か)の3軸で説明します。3軸すべてが一致する実績がない場合は、軸ごとに分けて示すと、評価者は「分野は民間での実績、発注者種別は別分野の自治体実績で補える」と判断できます。

実績が少ない場合の見せ方は、次の3つです。

  1. 関連実績:分野が同じで発注者が民間の実績、発注者が自治体で分野が隣接する実績を、類似点を明記して載せる。
  2. 担当者個人の実績:配置予定者が前職や他社で担当した業務を、本人の経歴として示す(会社の実績とは区別し、虚偽にならないよう本人の役割を正確に書く)。
  3. 協力会社の実績:再委託や共同企業体を予定する場合、協力会社の実績を「協力会社◯◯の実績」と明示して載せる。募集要項で協力会社の実績を評価対象に含めるかどうかを確認する。

悪い例: 当社は設立3年目のため自治体実績はありませんが、意欲をもって取り組みます。

良い例: 当社として同種業務の完了実績は1件(関東地方の町、人口約2万人、契約期間8か月、元請)です。これに加え、管理責任者Aは前職で人口5万〜15万人規模の市3団体の同種業務を主担当として完了しており、本業務の分析・設計の中核を担います。研修の実施については、協力会社◯◯(自治体向け研修実績:延べ40団体)と連携します。

なぜ良いか: 「実績がない」で終わらせず、会社・個人・協力会社の3層に分けて正直に示しています。それぞれの役割が本業務のどの部分を担うかまで書かれており、評価者は体制とあわせて実現性を判断できます。

会社概要の書き方:評価に効く情報の選び方

会社概要は、評価者が「この会社は業務を安定して遂行できるか」を判断する材料です。本業務に関係する情報を優先し、次の順で簡潔にまとめます。

  1. 所在地と発注者との距離・移動時間(緊急時の駆けつけ、対面打合せのしやすさ)。
  2. 本業務に関係する部門の人員数と専門性(全社員数より、担当部門の体制が重要)。
  3. 関連する認証・登録(ISMS、プライバシーマーク、業種別の登録、入札参加資格の登録状況)。
  4. 経営の安定性(設立年、直近の売上規模の概数、継続的な自治体取引の有無)。
  5. 地域との関わり(地域内の拠点、地元雇用、地域貢献活動)。地域要件や地域貢献の評価項目がある案件では配点に直結します。

創業の理念や全事業の紹介、受賞歴の羅列は、本業務と関係しない限り短くします。

悪い例: 当社は1990年の創業以来、「お客様第一」の理念のもと、製造業からサービス業まで幅広いお客様にITソリューションを提供してまいりました。全国に5拠点、社員数300名を擁し、…(以下、事業紹介が1ページ続く)

良い例: 本業務は、貴市から車で30分の当社◯◯支社(自治体向けシステム部門、社員18名)が担当します。同部門は過去5年間に県内12団体の自治体業務を完了しており、うち8件が本業務と同種の電子申請関連業務です。当社はISMS認証(◯◯支社を認証範囲に含む)を取得し、貴市の入札参加資格(役務・情報処理)に登録済みです。

なぜ良いか: 距離・担当部門の体制・関連実績・認証・登録資格と、評価に関係する情報だけが4文に収まっています。全社の規模や理念よりも、担当部門の能力を見せる構成です。

この項目の標準構成(テンプレート)

この項目は、「同種・類似業務の実績(募集要項の定義に合うものを表で3〜5件)」「実績が少ない場合の補足(担当者個人・協力会社の実績を区別して記載)」「会社概要(距離・担当部門・認証・登録・地域との関わりに絞って4〜6文)」の順で構成します。実績は1件ごとに次の項目をそろえます。様式に指定がある場合は様式に従い、指定がない場合は表形式が読みやすくなります。

項目 書く内容 注意点
業務名 契約上の業務名(守秘が必要な場合は内容が分かる概要) 匿名審査では社名が推測される固有名を避ける
発注者種別 都道府県・市・町村・一部事務組合・国・民間など 人口規模や職員数を添える
規模 契約金額の規模(概数)、期間、対象者数、件数など 契約金額は募集要項で求められる場合のみ具体額
期間 契約期間と完了年月 対象期間(過去◯年以内)の条件を確認
役割 元請・共同企業体・再委託のいずれか、担当範囲 再委託での実績は役割を正直に書く
成果 発注者にとっての効果、採用された提案、数値の目安 公表されている範囲で書く
類似点 分野・規模・発注者種別のどれが似ているか 本業務との対応を一文で

書き換え手順(チェックリスト)

  • 募集要項の「同種・類似業務」の定義と対象期間を確認し、合う実績だけを選んだか
  • 実績は完了したものに限ったか(進行中は「履行中」と明記)
  • 各実績に業務名・発注者種別・規模・期間・役割・成果・類似点がそろっているか
  • 類似点を分野・規模・発注者種別の3軸で一文にしたか
  • 役割(元請・共同企業体・再委託)を正直に書いたか
  • 守秘義務のある実績は地域・種別・規模で表現し、必要なら発注者の了解を得たか
  • 匿名審査では社名が推測される固有名を消したか
  • 実績が少ない場合、担当者個人・協力会社の実績を区別して示したか
  • 会社概要は距離・担当部門・認証・登録・地域との関わりに絞ったか
  • 「多数」「豊富」「幅広い」を具体的な件数や内容に置き換えたか

業務種別ごとの例文

イベント・広報

悪い例: 当社は年間100件以上のイベントを手がけており、企画から運営まで豊富な実績があります。

良い例: 本業務と同種の実績として、人口規模が同程度の市が主催する屋外型の市民参加イベント(来場者約5,000人、契約期間7か月、元請)を過去3年間に3件完了しています。いずれも荒天時の代替プログラム運用を含み、うち1件では予備日への延期を実施し、申込者への当日周知を滞りなく行いました。民間企業主催のイベント実績は年間約60件ありますが、本業務との関係では、来場者動線と安全管理の手法が共通しています。

なぜ良いか: 「100件以上」を、本業務に似た3件の内容に置き換え、延期対応の経験という本業務のリスクに直結する実績を示しています。民間実績は共通点を明記したうえで補足にとどめています。

研修・人材育成

悪い例: 自治体職員向け研修の実績多数。受講者満足度は常に高評価です。

良い例: 自治体職員向けの研修実績として、過去5年間に県1団体・市6団体で管理職向けマネジメント研修を実施しました(延べ受講者約900名、各団体との契約期間3〜6か月、すべて元請)。本業務と同じ「係長級」を対象とした研修は市4団体で実施しており、受講後3か月の行動変化アンケートで「研修内容を業務で実践した」との回答が7割程度でした。

なぜ良いか: 対象者層(係長級)という分野の類似性と、受講者数という規模が示され、「満足度」ではなく行動変化という成果の中身で説得しています。

窓口・業務委託

悪い例: 当社は官公庁の窓口業務を全国で受託しています。

良い例: 本業務と同種の窓口業務として、市の住民票・戸籍関係の窓口受付業務を人口8万〜12万人の市2団体で受託し、いずれも3年間の契約期間を満了しました(元請、従事者各10名規模)。繁忙期(3〜4月)の待ち時間短縮のため臨時窓口の増設を行い、前年同期比で平均待ち時間を2割程度短縮した実績があります。

なぜ良いか: 「全国で」ではなく、発注者の人口規模・業務分野・期間満了・従事者規模が示され、繁忙期対応という本業務の課題に直結する成果が書かれています。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 評価者の受け止め 処方箋
定義に合わない実績が混ざっている 定義を読んでいない 募集要項の定義で選別し、合わないものは削る
類似点が書かれていない 何が似ているか分からない 分野・規模・発注者種別の3軸で一文追加
「多数」「豊富」だけで個別記載がない 本当にあるのか疑わしい 件数と代表的な2〜3件の内容を書く
再委託の実績を元請のように書く 虚偽記載の疑い 役割を正直に書き、担当範囲を明記
会社概要が事業紹介になっている 本業務と関係ない 距離・担当部門・認証・登録に絞る
守秘義務のある発注者名を書いてしまう 信用問題 地域・種別・規模で表現し、必要なら了解を得る

AIに書き直させるときの指示例

以下の「類似業務実績・会社概要」の下書きを、評価者が「本業務とどこが似ているか」を一目で確認できる内容に書き直してください。
条件:
1. 添付の募集要項の「同種・類似業務」の定義と対象期間に合う実績だけを残す。
2. 各実績を「業務概要/発注者種別(人口規模)/規模(期間・対象者数等)/役割(元請・共同企業体・再委託)/成果/本業務との類似点(分野・規模・発注者種別のどれか)」の表(Markdown表)にする。
3. 守秘義務のある実績は「◯◯地方の市(人口約◯万人)」の形にする。実在の自治体名・企業名は書かない。
4. 「多数」「豊富」「幅広い」は件数や具体的な内容に置き換える。架空の実績を追加しない。
5. 会社概要は、発注者との距離、担当部門の人員と専門性、関連する認証・登録、地域との関わりに絞って4〜6文にする。
6. です・ます調。発注者は「貴市」、自社は「当社」と書く。
下書き:
(ここに貼り付け)
募集要項の実績要件:
(ここに貼り付け)

よくある質問

Q実績は何件書けばよいですか。

A

様式に上限があればそれに従い、なければ定義に合うもの3〜5件が目安です。類似点が明確な実績を優先し、関係の薄い実績で件数を増やさないでください。

Q進行中の業務は実績に入れられますか。

A

募集要項で「完了した業務」と定義されている場合は入れられません。定義が明示されていない場合は、「履行中(◯年◯月完了予定)」と明記したうえで補足的に載せます。完了実績のように書くと虚偽記載になるおそれがあります。

Q配置予定者の実績と会社の実績は分けるべきですか。

A

分けてください。会社の実績は組織としての遂行力、配置予定者の実績は個人の能力として、別の評価項目で見られることが多いためです。両方に同じ業務が登場する場合は、会社側に業務の概要、個人側に本人の役割を書きます。

検索でよくある疑問

Q入札の同種業務と類似業務はどう区別されますか?

A

区別の定義や対象期間(過去○年以内など)は募集要項で案件ごとに示されます。評価方法も「同種業務の実績がある場合は○点、類似業務の場合は○点」と段階を設ける方式や、実績の内容が本業務の遂行に有効かを定性的に見る方式などがあります。定義に合う実績だけを載せ、合わないものは「参考」として分けてください。

Q自治体の受託実績がない会社は、実績欄をどう書けばよいですか?

A

「実績がない」で終わらせず、3層に分けて示します。分野が同じ民間向けの実績や、発注者が自治体で分野が隣接する実績を類似点付きで載せる、配置予定者が前職などで担当した業務を本人の役割を正確に書いて示す、協力会社の実績を「協力会社の実績」と明示して載せる、の3つです。協力会社の実績が評価対象か募集要項で確認します。

Q再委託で担当した業務は実績として書けますか?

A

書けますが、役割を正直に書くことが前提です。実績ごとに元請・共同企業体・再委託のいずれかと担当範囲を明記します。再委託で担当した業務を元請のように書くと、虚偽記載を疑われ信用を失います。あわせて、募集要項の同種・類似業務の定義が元請実績に限っていないかも確認してください。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。