STEP4伝わる文章で書く/6-5/評価者に伝わる文章術

提案書の一文を短くする ― 一文一義・60字目安で長文を分割し主語と責任を明確にする手順

提案書の一文を短くするには、一つの文に一つの内容だけを書く「一文一義」を守り、1文60字以内を目安にします。1文が長くなる原因の多くは複数の内容を読点でつなぐことで、評価者が着眼点と照合するときに2つ目以降の施策を読み落とす原因にもなります。このページでは、文化審議会「公用文作成の考え方」も踏まえ、入札・プロポーザルの提案書で使える文字数・読点・接続助詞による長文診断、長文の分割手順、主語の復元、二重否定・受動態・名詞化の解消、カタカナ語や略語の扱いを解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約18分

要点(結論)

1つの文には1つの内容だけを書き、1文は60字以内を目安にします。専門用語・カタカナ語・略語は評価者全員が理解できる形に整え、文ごとに主語(誰が行うか)を明確にします。長文の分割・主語の復元・名詞化の解消は、手順に従えば機械的に行えます。

このページの目次
  1. 1文60字以内の目安
  2. 専門用語・カタカナ語・略語の扱い
  3. 主語と責任の所在を明確にする
  4. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  5. 一文の長さ診断:文字数・読点・接続助詞
  6. 長文を分割する手順
  7. 主語の復元手順
  8. 二重否定・受動態・名詞化の解消
  9. 専門用語・カタカナ語・略語の処理ルール
  10. 「公用文作成の考え方」の該当する考え方
  11. 業務種別ごとの例文
  12. よくある失敗パターンと処方箋
  13. 書き換え手順(チェックリスト)
  14. AIに書き直させるときの指示例

1文60字以内の目安

文化審議会が令和4年に建議した「公用文作成の考え方」は、「一文を短くする」ことを挙げています。その解説では、適当な長さは一概に決められないとしつつ、50〜60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよいとしています。提案書でも、この目安が参考になります。本ガイドでは、これを踏まえて1文60字以内を目安とします。1文が長くなる原因の多くは、1つの文に複数の内容を詰め込むことです。「〜し、〜するとともに、〜することで、〜を図ります」という文は、読点(、)でつながった複数の文の集まりです。

悪い例(1文・約100字): 本業務では、現状の業務フローを調査し、課題を抽出するとともに、他自治体の先進事例を参考にしながら改善案を作成し、職員の皆様との意見交換を経て最終的な業務改善計画を取りまとめることで、業務の効率化を図ります。

良い例(4文に分割): 本業務では、業務改善計画を3段階で取りまとめます。第1段階では、現状の業務フローを調査し、課題を抽出します。第2段階では、他自治体の事例を参考に改善案を作成します。第3段階では、職員の皆様との意見交換を経て、業務改善計画を確定します。

なぜ良いか: 最初の文で全体像(3段階)を示し、続く文で各段階を1文ずつ説明しています。文を分けると、評価者は段階ごとに「実施手順の妥当性」を確認でき、採点しやすくなります。なお、60字はあくまで目安です。60字を少し超えても意味が一つにまとまっている文は、無理に分ける必要はありません。

専門用語・カタカナ語・略語の扱い

評価者には、所管課の職員だけでなく、他部署の職員や外部有識者が含まれることがあります。全員が業界の専門用語を知っているとは限りません。「公用文作成の考え方」でも、専門用語や外来語は読み手に合わせて言い換えたり説明を添えたりすること、略語は元になった用語を示してから用いることが示されています。提案書では、次の方針で統一すると読みやすくなります。仕様書・評価基準の用語はそのまま使います。それ以外のカタカナ語は日本語に言い換えます(「エビデンス」→「根拠」、「スキーム」→「仕組み」)。必要な専門用語と略語には、初出で短い説明と正式名称を添えます。用語を1つずつどう処理するかの判定フローは、後の「専門用語・カタカナ語・略語の処理ルール」に示します。

悪い例: PMOがWBSベースでマイルストーンをマネジメントし、ステークホルダーとのコンセンサスをとりながらアジャイルに推進します。

良い例: 当社の進捗管理担当者が、作業を細かく分けた工程表で期限ごとの達成状況を管理します。関係課の皆様とは2週間ごとに打合せを行い、合意した内容に沿って作業を進めます。

なぜ良いか: 悪い例は1文に略語2つ(PMO・WBS)とカタカナ語6つ(ベース・マイルストーン・マネジメント・ステークホルダー・コンセンサス・アジャイル)が入り、情報システムの専門家以外には内容が伝わりません。良い例は、誰が(進捗管理担当者)、何で(工程表)、どの頻度で(2週間ごと)を日本語で書いているため、外部有識者を含むどの評価者にも同じ意味で伝わります。

主語と責任の所在を明確にする

日本語の文は主語を省略しやすく、提案書でも「誰が行うのか」が曖昧になりがちです。評価者にとって、作業の担い手が受注者なのか発注者なのかは重要な確認点です。発注者側に作業が発生する書き方をすると、「職員の負担が増える提案」と受け取られるおそれがあります。

悪い例: 毎月、アンケート結果を集計し、課題を整理した上で、改善策を実施します。

良い例: 毎月、当社がアンケート結果を集計し、課題を整理します。当社は改善策の案を月次報告書で提示し、貴市の承認を得た上で当社が実施します。

なぜ良いか: 集計・整理・提案・実施の各作業を誰が行うかを明記し、発注者が行うのは「承認」だけであることを示しています。主語を書くと文は少し長くなりますが、責任の所在がはっきりすることで、評価者は体制と役割分担を安心して評価できます。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

評価者は1社あたり限られた時間で提案書を読みます。長い文は、文の構造を頭の中で組み立て直す負担を評価者に強います。その負担は「読みにくい」という印象にとどまらず、次の形で点数に影響します。

  • 着眼点との照合漏れ:1文に3つの施策が詰め込まれていると、評価者が着眼点と照合するとき、2つ目・3つ目の施策を読み落とすことがあります。文を分けて1文1施策にすると、照合漏れが減ります。
  • 主語の取り違え:主語が省略された文で作業の担い手が読み取れないと、評価者は安全側に「発注者の作業かもしれない」と解釈します。体制・役割分担の項目で「職員の負担が大きい」と判定される原因になります。
  • 用語の理解度による採点のばらつき:外部有識者と所管課職員で専門用語の理解が異なると、同じ記述でも評価者間で点がばらつきます。ばらつきは平均点を下げる方向に働きやすく、誰が読んでも同じ意味に取れる文のほうが安定して点が入ります。
  • 「分かりやすさ」そのものが評価項目:募集要項によっては、提案書の「明瞭性」「分かりやすさ」が評価項目に入っています。一文一義はこの項目に直接効きます。

一文の長さ診断:文字数・読点・接続助詞

長文かどうかは、感覚ではなく3つの指標で機械的に診断します。AIに診断させるときも、この3指標を数えさせます。

指標 目安 超えたときの意味
文字数(句点までの字数) 60字以内。80字を超えたら要分割 複数の内容が入っている可能性が高い
読点(、)の数 1文に3個以内 4個以上は、文の切れ目が読点で代用されている
接続助詞・中止法の数 1文に1個以内 「〜が」「〜ので」「〜し」「〜て」「〜ており」「〜とともに」が2個以上なら、2文以上に分けられる

診断の手順は次のとおりです。

  1. 句点(。)で文を区切り、文ごとに文字数を数える
  2. 文字数が60字を超える文に印を付ける
  3. 印を付けた文の読点の数と接続助詞の数を数える
  4. 「文字数80字超」「読点4個以上」「接続助詞2個以上」のいずれかに該当する文を、分割対象とする(60字を超えるが80字以下で、意味が一つにまとまっている文は、そのままでもよい)
  5. 分割対象の文が、1つの評価項目の中で全体の3割を超えていたら、その項目全体を書き直す

3つの指標のうち、接続助詞の数が最も分割の手がかりになります。「公用文作成の考え方」も、接続助詞の「が」や中止法(述語を連用形にして文を切らずに続ける方法)を多用しない、一文の中に主語と述語の関係をいくつも作らない、と示しています。

長文を分割する手順

分割対象の文は、次のアルゴリズムで分けます。

  1. 接続助詞・中止法の位置で切る:「〜が、」「〜ので、」「〜し、」「〜て、」「〜ており、」「〜とともに、」「〜ことで、」「〜ながら、」の位置で文を切り、それぞれを独立した文にする
  2. 切った各文に述語を補う:中止法で切った文は述語が連用形(「調査し」)のままなので、終止形(「調査します」)に直す
  3. 切った各文に主語を補う:主語が省略されている文に、誰が行うかを補う
  4. 論理関係を接続詞で示す:切った文同士の関係を「そのため」「その上で」「一方」「ただし」などの接続詞で明示する。因果関係がある場合に限り、順接の接続詞を使う
  5. 順序を「全体→部分」に並べ替える:3つ以上の内容に分かれた場合、最初に「〇〇を3段階で実施します」のように全体像を1文で示し、続く文で各段階を説明する
  6. 並列が3つ以上なら箇条書きにする:「公用文作成の考え方」は、一文の中で並立する情報を3つ以上並べるときは箇条書きの利用を勧めています。提案書でも同じです
  7. 分割後に分割対象(80字超・読点4個以上・接続助詞2個以上)の文が残ったら、1に戻る

悪い例(1文・約100字・接続助詞と中止法など4か所): 当社は過去に同種のシステムを複数導入した経験があるので、導入時に発生しやすい課題を把握しており、それらを踏まえた移行計画を策定するとともに、職員の皆様への操作研修も実施することで、円滑な稼働開始を実現します。

良い例(4文に分割・接続詞で関係を明示): 当社は、同種のシステムを人口5万人規模の市町村で3件導入しました。その経験から、導入時に発生しやすい課題(データ形式の不一致、権限設定の漏れなど)を把握しています。これらの課題を回避する手順を移行計画に組み込みます。あわせて、職員の皆様への操作研修を稼働開始の2週間前に実施します。

なぜ良いか: 「〜ので」「〜しており」「〜とともに」「〜ことで」の位置で切り、各文に終止形の述語を補いました。「その経験から」「あわせて」で文同士の関係を示し、分割しても論理のつながりが残っています。さらに「複数」を「3件」、「課題」を具体例に置き換えたことで、1文ずつが採点の根拠として機能します。

主語の復元手順

主語の省略は、日本語として自然な場合も多いのですが、提案書では「誰がやるか」が採点対象になります。次の手順で主語を点検し、必要な文にだけ復元します。

  1. 各文の述語(〜します、〜です)に対して「誰が?」と問う
  2. 答えが「提案者(当社)」「発注者(貴市)」「住民・利用者」「システム」のどれかを決める
  3. 答えが直前の文と同じで、誤解の余地がなければ省略のままでよい
  4. 答えが直前の文と変わる文には、必ず主語を書く(主語が変わるたびに明示する)
  5. 答えが「発注者」になる文は、本当に発注者の作業として提案するのかを確認する。提案者が代行できる作業なら、主語を「当社」に変えて作業内容を書き直す
  6. 答えが決められない文(「〜が実施されます」「〜が行われます」)は、受動態を能動態に直して主語を決める
  7. 1段落の中で主語が3回以上入れ替わる場合は、主語ごとに文をまとめ直す(当社の作業を先にまとめ、発注者の作業を後にまとめる)

悪い例: 調査票を配布し、回収後に集計を行います。集計結果を確認し、必要な修正を加えた上で報告書を作成します。

良い例: 当社が調査票を配布し、回収後に集計を行います。貴市は集計結果を確認し、修正の指示を当社に伝えます。当社は指示に沿って修正し、報告書を作成します。

なぜ良いか: 悪い例では「集計結果を確認し」が貴市の作業なのか当社の作業なのか分からず、発注者の作業量が読み取れません。良い例は主語が変わる文ごとに「当社」「貴市」を明示し、貴市の作業が「確認と指示」に限られることを示しています。

二重否定・受動態・名詞化の解消

長文化と曖昧さの原因になる3つの文型を、それぞれ解消する手順を示します。いずれも「公用文作成の考え方」が、公用文で避けるべき書き方として挙げているものです。

二重否定

「〜しないわけではない」「〜できないことはない」は、肯定なのか否定なのか評価者が一度考えなければなりません。否定を2つ消して肯定文にします。

二重否定 肯定文への変換
対応できないわけではありません 対応します(条件がある場合は「〇〇の場合に対応します」)
不可能ではないと考えます 〜します(方法・時期を添える)
〇〇を除いて対応していません 〇〇のみ対応しています

受動態

「〜が実施されます」「〜が検討されます」は、行為の主体が消え、責任の所在が曖昧になります。「公用文作成の考え方」も、受身形は文の構造を難しくしたり責任の所在を曖昧にしたりする場合があるとして、むやみに使わないよう示しています。解消の手順は、述語を能動態に戻し、主語を補うことです。

悪い例: 研修は年2回実施され、理解度の確認が行われます。研修資料は事前に配布されます。

良い例: 当社が研修を年2回実施し、各回の終了時に理解度確認テストを行います。研修資料は、当社が研修日の1週間前に配布します。

ただし、「〇〇が公表された」のように、主体より対象を目立たせたい場合や、主体を示す必要がない場合は、受動態のままでも構いません。提案者の作業を述べる文では能動態を原則とします。

名詞化(「〜の実施を行う」型)

動詞を名詞にして「行う」「実施する」を付け足す書き方は、文を長くし、動作の中身を薄めます。名詞化を解消する手順は、名詞の中の動詞を取り出して述語にすることです。

名詞化した表現 動詞に戻した表現
調査の実施を行います 調査します
検討を行います 検討します(さらに、何を検討するかを書く)
改善の推進を図ります 改善します(さらに、何をどう改善するかを書く)
周知活動の実施に努めます 周知します(頻度と媒体を添える)
報告書の作成及び提出を行います 報告書を作成し、提出します
課題の抽出及び整理を実施します 課題を抽出し、整理します

名詞化を解消すると、「検討します」「改善します」のように文末が弱い動詞だけになることがあります。その場合は、動詞の目的語(何を)と手段(どうやって)を補います。

専門用語・カタカナ語・略語の処理ルール

用語を見つけたとき、どう処理するかを次の判定フローで決めます。

  1. 仕様書・評価基準に出てくる用語か? → そのまま使う(評価者がその語で探すため)。初出に短い説明を添えてもよい
  2. 評価者全員が知っていると確信できるか?(一般の行政職員が日常的に使う語か) → そのまま使う
  3. 日本語で同じ意味の語があるか? → 言い換える(例:アジェンダ→議題、ステークホルダー→関係者、スキーム→仕組み、ナレッジ→知見、タスク→作業、リソース→人員・予算)
  4. 言い換えると意味が変わる、または業界で定着しているか? → 初出で説明を添えて使う(例:「要件定義(システムに必要な機能を文書化する工程)」)
  5. 略語か? → 初出で正式名称を書き、「(以下「〇〇」という。)」の形で略語を定義する。同じ略語を一度しか使わないなら、略語を定義せず正式名称だけ書く
  6. 提案書全体での用語集が必要か? → 用語が10個を超える場合は、巻末または冒頭に用語集を付け、本文は簡潔な説明にとどめる

「公用文作成の考え方」は、専門用語を「言い換える」「説明を付けて使う」「普及を図るべき用語は工夫してそのまま用いる」の3通りで扱います。外来語は、「日本語として定着しているものはそのまま使う」「漢語や和語に言い換える」「説明を付けて使う」「使い方を工夫する」の4通りで整理しています。提案書の判定フローはこの考え方を、評価者という読み手に合わせて並べ替えたものです。

「公用文作成の考え方」の該当する考え方

文化審議会「公用文作成の考え方」(令和4年1月建議)は、国の府省庁が作成する文書の書き方を示したものです。地方公共団体などで活用されることも意識して書かれており、自治体職員が読み手である提案書にもそのまま役立ちます。建議本文とその解説のうち、一文一義・短文化に関係する項目を要約すると、次のとおりです。

  • 一文を短くする:長い文は句点や接続詞で区切り、長い修飾語・修飾節は別の文に移す。解説では、50〜60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよいとしている
  • 一文の論点は一つにする:論点が変わるときは文を区切る。一文の中に主語と述語の関係をいくつも作らない
  • 3つ以上の情報を並べるときは箇条書きを使う
  • 主語と述語の関係が分かるようにする。主語は文の途中でできるだけ変えない
  • 接続助詞や中止法を多用しない。「が」でつなぎ続ける書き方を避けると、結果的に文は短くなる
  • 受身形をむやみに使わない(責任の所在が曖昧になる)。二重否定はどうしても必要なとき以外には使わない
  • 複数の修飾節が述部に掛かるときは、長いものから示すか、文を分ける。係る語と受ける語は近くに置く
  • 結論は早めに示し、続けて理由や詳細を説明する

提案書でこれらを守ると、評価者である自治体職員にとって「普段読み慣れた文書の作法」に沿った文章になり、内容の理解に集中してもらえます。

業務種別ごとの例文

ITシステム導入

悪い例(1文・約90字): 本システムはクラウド上に構築されるため、オンプレミスと比較してスケーラビリティに優れており、将来的な利用者増加にも柔軟に対応できることから、長期的なTCOの削減が見込まれます。

良い例: 本システムは、クラウド上に構築します。クラウドは、庁内にサーバーを設置する方式と比べ、利用者数の増加に応じて処理能力を追加しやすい特徴があります。そのため、将来の利用者増加には、サーバーを買い替えずに処理能力の追加で対応します。導入から5年間の総費用(機器・保守・運用の合計)については、庁内設置方式と比較した試算表を資料編に添付します。

なぜ良いか: 「〜ため」「〜しており」「〜ことから」で3重につながった文を4文に分け、「スケーラビリティ」「オンプレミス」「TCO」を日本語の説明に置き換えました。受動態「構築される」を「構築します」に直し、主語が提案者であることを明確にしています。「見込まれます」という効果の主張は、試算表という根拠の提示に変わっています。

調査・計画策定

悪い例: 現状分析においては、統計データの収集・整理が行われ、それを踏まえた課題の抽出及び構造化を実施することにより、計画の方向性の検討に資する基礎資料の作成を行います。

良い例: 現状分析では、当社が統計データを収集し、整理します。整理したデータから課題を抽出し、課題同士の因果関係を図にまとめます。この図を、計画の方向性を検討するための基礎資料として、第2回検討委員会に提出します。

なぜ良いか: 「収集・整理が行われ」(受動態)、「抽出及び構造化を実施」「作成を行います」(名詞化)を、すべて動詞に戻しました。主語「当社」を補い、「検討に資する」という曖昧な効果を「第2回検討委員会に提出」という具体的な行動に変えています。

イベント・広報

悪い例: 広報については、ターゲットのペルソナを設定した上で、各種メディアを活用したクロスチャネルでのプロモーションを展開するとともに、SNSにおけるエンゲージメントの向上を図ることで、認知度の最大化を目指します。

良い例: 広報では、主な来場者像を「市内在住の子育て世帯」と設定します。この来場者像に合わせ、次の3つの媒体で告知します。

  • 貴市の広報紙(開催前月号に半ページ)
  • 市内の保育園・小学校へのチラシ配布(開催3週間前)
  • 貴市のSNS公式アカウントでの投稿(開催4週間前から週1回、計4回)

SNSの投稿には、来場者が写真を投稿したくなる会場装飾の案内を含め、投稿への反応数を毎週記録します。

なぜ良いか: 「ペルソナ」「クロスチャネル」「プロモーション」「エンゲージメント」を日本語に置き換え、3つの並列(媒体)を箇条書きにしました。「最大化を目指します」という達成を測れない目標は削り、代わりに記録する指標(反応数)と頻度を書いています。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 症状 処方箋
文を切っただけでぶつ切りになる 「〜します。〜します。〜します。」が続き、文同士の論理関係が消えている 因果・追加・対比の関係がある箇所にだけ「そのため」「あわせて」「一方」を入れる。関係がない文は接続詞なしでよい
主語を全文に付けてくどくなる 「当社は〜。当社は〜。当社は〜。」と毎文に主語がある 主語が変わる文にだけ主語を書き、同じ主語が続く間は省略する
カタカナ語を言い換えて仕様書の用語とずれる 仕様書が「ステークホルダー」と書いているのに提案書で「関係者」に言い換えている 仕様書・評価基準の用語は言い換えず、必要なら初出で説明を添える
名詞化を動詞に戻したら中身がなくなった 「改善の推進を図ります」を「改善します」に直して終わり、文末が弱いまま 動詞に戻した後、何を・どうやって・いつ、を補う

書き換え手順(チェックリスト)

  • 1. 句点で文を区切り、60字超の文に印を付ける。そのうち80字超・読点4個以上・接続助詞2個以上のいずれかに該当する文を分割対象とする
  • 2. 分割対象の文を、接続助詞・中止法の位置で切り、各文に終止形の述語を補う
  • 3. 切った文同士の関係を接続詞(そのため・あわせて・ただし 等)で示す
  • 4. 3つ以上の並列は箇条書きにし、文頭に「次の3点を実施します」のような導入文を置く
  • 5. 各文の述語に「誰が?」と問い、主語が変わる文に主語を補う
  • 6. 受動態(〜されます)を能動態に直し、主語を決める
  • 7. 二重否定を肯定文に直す
  • 8. 「〜の実施を行う」型の名詞化を動詞に戻し、目的語と手段を補う
  • 9. 専門用語・カタカナ語・略語を判定フローで処理する(仕様書の用語はそのまま、言い換え、初出説明、略語定義)
  • 10. 「の」「に」「て」など同じ助詞が3回以上連続する箇所を直す
  • 11. 書き直し後、1つの評価項目の中で60字超の文が全体の1割以下になっているか確認する

AIに書き直させるときの指示例

あなたは自治体向け提案書の編集者です。評価者が採点の根拠を見つけやすい文章に整えるのが役割です。
次の提案書の下書きを、一文一義・短文化の原則で書き直してください。
手順:
1. 句点で文を区切り、各文の文字数・読点の数・接続助詞(が・ので・し・て・ており・とともに・ことで・ながら)の数を数える。
2. 80字超、読点4個以上、接続助詞2個以上のいずれかに該当する文と、60字超で複数の内容を含む文を、接続助詞・中止法の位置で分割し、各文に終止形の述語を補う。
3. 分割した文の関係を「そのため」「あわせて」「ただし」などの接続詞で示す。3つ以上の並列は箇条書きにする。
4. 各文の述語に「誰が?」と問い、主語が変わる文に「当社」「貴市」「利用者」のいずれかを補う。受動態は能動態に直す。
5. 二重否定を肯定文に、「〜の実施を行う」型の名詞化を動詞に直す。
6. 専門用語・カタカナ語・略語は、仕様書に出てくる語はそのまま、それ以外は日本語に言い換えるか初出で説明を添える。仕様書の用語リストは次のとおり:[ここに列挙]。
7. 書き直し後、元の文と書き直した文を対にして表で示し、各行に変更理由(分割・主語補足・能動化・用語言い換え など)を書く。
文体はです・ます調。内容の追加や削除はせず、情報が不足している箇所は[要確認]と記す。

よくある質問

Q60字以内にすると文が幼稚に見えませんか。

A

短い文が続いても、内容が具体的で論理のつながりが接続詞で示されていれば、幼稚には見えません。幼稚に見える原因は文の短さではなく、内容の薄さと接続詞の欠落です。評価者は文章の格調ではなく、採点の根拠を探しています。

Q仕様書の文自体が長文で分かりにくい場合、提案書でもその書き方に合わせるべきですか。

A

用語は仕様書に合わせますが、文の長さまで合わせる必要はありません。仕様書の長文を短文に分けて要件を一つずつ列挙し、各要件への対応を書くと、評価者は仕様書と提案書を照合しやすくなります。

Q主語を「当社」と書くか「弊社」「提案者」と書くか迷います。

A

提案書全体で一つに統一すれば、どれでも構いません(本ガイドの例文では「当社」に統一しています)。募集要項で社名の記載が禁止されている匿名審査では、「提案者」など募集要項が指定する呼称を使います。重要なのは呼び方ではなく、作業の主体が発注者なのか提案者なのかを読み分けられることです。

検索でよくある疑問

Q一文は何文字までが読みやすい?

A

文化審議会「公用文作成の考え方」の解説は、適当な長さは一概に決められないとしつつ、50〜60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよいとしています。本書ではこれを踏まえて1文60字以内を目安とし、80字を超えたら分割します。60字を少し超えても意味が一つにまとまっている文は、無理に分ける必要はありません。

Q長い文はどこで切ればよい?

A

「〜が、」「〜ので、」「〜し、」「〜て、」「〜ており、」「〜とともに、」「〜ことで、」などの接続助詞・中止法の位置で切ります。切った文は述語を終止形に直し、主語を補い、「そのため」「その上で」などの接続詞で関係を示します。3つ以上の内容に分かれたら最初に全体像を1文で示し、並列の情報が3つ以上なら箇条書きにします。

Q提案書でカタカナ語や略語はどう扱う?

A

仕様書・評価基準に出てくる用語はそのまま使います。日本語で同じ意味の語があれば言い換え(ステークホルダー→関係者、スキーム→仕組み)、言い換えると意味が変わる語は初出で説明を添えます。略語は初出で正式名称を書き「(以下「〇〇」という。)」で定義します。用語が10個を超える場合は用語集を付けます。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。