STEP5評価項目ごとに書く/7-4/評価項目別の書き方

提案書のスケジュールと工程表 ― マイルストーン・発注者の確認期間・予備期間で実現できる工程計画を示す

提案書のスケジュール(工程表)は、自社の作業期間だけでなく、成果物の提出日・承認日というマイルストーンと、発注者側の確認・決裁・庁内照会の期間、予備期間を書き込むことで「このとおり進めば終わる」と評価されます。評価者は工程表を単独では読まず、実施方針のフェーズや作業量と突き合わせて工程計画の妥当性を判断しています。この節では、ガントチャート形式の工程表の型、期間の根拠とクリティカルパスの書き方、短納期案件と年度末納期の注意点、遅延時の検知・報告・挽回策を例文付きで解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約11分

要点(結論)

工程は、マイルストーン(成果物の提出日・承認日)と発注者側の作業・確認期間を組み込んで示します。発注者の作業時間を見込んでいない工程表は、実現性が低いと判断されます。

このページの目次
  1. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  2. ガントチャートとマイルストーン
  3. 工程表の型
  4. 発注者側の作業・確認期間を組み込む
  5. 短納期案件の書き方
  6. 年度末納期の注意
  7. 遅延時の挽回策
  8. この項目の標準構成(テンプレート)
  9. 書き換え手順(チェックリスト)
  10. 業務種別ごとの例文
  11. よくある失敗パターンと処方箋
  12. AIに書き直させるときの指示例
  13. よくある質問

工程の評価では、「業務量を正しく見積もっているか」「無理のない計画か」「遅延したときの手当てがあるか」が見られます。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

評価基準表の典型的な着眼点は、「各工程で想定される業務量が工程に反映され、実施手順と工程計画の整合が確認できる」(満点)、「実施手順との整合が認められる」(中間)、「該当しない」(0点)という3段階です。つまり評価者は、工程表を単独で見るのではなく、実施方針のフェーズ・作業量と突き合わせて読んでいます。配点は価格以外の評価点全体の5〜10%程度とする例が見られますが(目安)、工程の不自然さは実施方針や体制の評価にも波及します。

評価 答案の特徴 評価者の内心
満点 実施方針のフェーズと工程表の行が一致し、各作業の期間が業務量に見合い、マイルストーン・発注者の確認期間・予備期間が明示され、年度末の検査期間が確保されている 「このとおり進めば終わる」
中間 フェーズ別の工程表はあるが、発注者の確認期間がなく、各作業の期間の根拠が見えない。予備期間がない 「紙の上では終わるが、現実には遅れそうだ」
低得点 「契約後速やかに着手し年度内に完了」程度、または工程表が実施方針と食い違っている 「計画していない」

点が分かれるのは「発注者側の時間を見込んでいるか」です。自治体の業務は、成果物の確認・庁内調整・決裁・議会対応で日数を要します。それを織り込んでいない工程表は、どれほど整然としていても「実務を知らない」と判断されます。

ガントチャートとマイルストーン

ガントチャートには、作業の期間だけでなく、成果物の提出日と発注者の承認日をマイルストーンとして明示します。年度末の納期から逆算し、検査に必要な期間も含めて書きます。

悪い例: 契約締結後、速やかに業務に着手し、年度内に完了します。

良い例: 6月の契約締結後、7月末に現状分析報告書(マイルストーン1)、10月末に改善設計書の承認(マイルストーン2)、1月末に職員研修の完了(マイルストーン3)、2月末に効果測定報告書の提出(マイルストーン4)を予定します。3月は検査対応と修正の予備期間とします。

工程表の型

工程表は、次の要素をそろえた表にします。月単位(短い業務は週単位)の列に、フェーズ別の作業行、発注者の作業行、マイルストーン行、予備期間行を加えます。

行の種類 内容 表記の例
作業行(フェーズ別) 自社の作業期間 実線の帯
発注者の作業行 確認・承認・庁内照会・データ提供の期間 点線の帯+「貴課確認(10営業日)」
マイルストーン行 成果物提出日、承認日、報告会、研修日 ◆印+日付(例:◆7/31 現状分析報告書提出)
予備期間行 修正対応・検査対応のための余裕 網掛け+「予備(修正・検査対応)」
定例会行 定例会の開催時期 ●印

工程表の下には、次の3点を本文で添えます。

  1. 期間の根拠:「現状分析は、対象10課のヒアリング(2週間)と集計・報告書作成(2週間)で1か月とします」のように、主要な作業の期間に業務量の根拠を一文付けます。これが「業務量が工程に反映されている」と判断される根拠になります。
  2. クリティカルパス:「設計書の承認(10月末)が遅れると研修開始が遅れるため、設計案は9月中旬に中間確認の機会を設けます」のように、遅れると全体に響く工程と、その対策を書きます。
  3. 発注者の繁忙期への配慮:「議会定例会(9月・12月・3月)の期間は貴課の確認作業を避けて計画しています」のように、職員が対応しにくい時期を外していることを示します。

発注者側の作業・確認期間を組み込む

自治体の業務では、成果物の確認、庁内調整、決裁に時間がかかります。工程表に「貴課確認:2週間」「庁内関係課への照会:3週間」のように発注者側の期間を書き込むと、発注者の実情を理解していることが伝わります。議会日程や年度末の繁忙期など、職員が対応しにくい時期を避けた計画にすることも有効です。

発注者側の期間の目安は次のとおりです(業務や自治体により異なるため、あくまで例です)。

発注者側の作業 目安 備考
成果物の確認(中間成果物) 5〜10営業日 分量に応じて調整
計画素案・設計書の承認(決裁あり) 10〜15営業日 課長・部長決裁の段階数による
庁内関係課への照会・意見集約 3〜4週間 関係課が多いほど長くなる
議会・審議会への説明 定例会の日程に依存 説明資料の事前確認期間も必要
パブリックコメント 意見募集期間(例:1か月)+意見整理2〜3週間 自治体の条例・要綱で意見募集期間が定められている場合がある(国の意見公募手続は行政手続法第39条第3項で30日以上)
既存データ・資料の提供 2〜3週間 個人情報を含む場合は手続きが加わる

短納期案件の書き方

契約から納期まで数か月しかない案件では、工程表の書き方で「無理をしていない」ことを示す必要があります。

  • 並行作業を明示する:「調査と設計準備を並行し、調査結果が出た段階で設計に反映します」のように、直列ではなく並行で進める箇所を示します。
  • 発注者の即応をお願いする箇所を明示する:「短納期のため、設計案の確認は5営業日でお願いします。確認しやすいよう、変更点を一覧にした確認シートを添えます」のように、負担軽減策とセットで依頼します。
  • 着手前の準備を書く:「契約前に既存の公開資料の読み込みを済ませ、契約当日にキックオフを開催します」のように、契約後の立ち上がりを早くする工夫を書きます。契約前の作業は発注者の指示なしには行えず、発注者からの資料提供も前提にできないため、準備は公開資料の読み込みに限ります。
  • 削ってよいものを提案する:「短納期を踏まえ、中間報告書は定例会資料で代替することを提案します(貴課と協議のうえ決定)」のように、形式的な成果物を減らす提案も有効です。
  • それでも予備期間を1〜2週間は確保する:予備期間ゼロの工程表は、短納期案件ほど「破綻する計画」と見られます。

年度末納期の注意

自治体の委託業務は3月末納期が多く、年度末特有の注意点があります。

  1. 検査期間を見込む:納品日=納期ではなく、納品後に発注者の検査(完了検査)があります。3月中旬までに最終成果物を納め、下旬は検査と軽微な修正に充てる計画にします。
  2. 職員の繁忙を避ける:3月は人事異動の内示、議会、予算執行の締めが重なり、職員の確認作業が滞ります。重要な承認は2月中に終えます。
  3. 担当者の異動に備える:4月の人事異動で発注者の担当者が変わる場合があります。業務完了報告書と引継ぎ資料は、新任者が読んでも分かる形にすることを書いておくと、評価者(現任者)に安心感を与えます。
  4. 請求・支払いの手続き:検査合格後に請求書を提出し、出納整理期間内に支払われる流れを理解していることを一文添えると、実務経験が伝わります。
  5. 翌年度に続く業務:複数年度にまたがる業務では、年度ごとの成果物と検査を分けて書き、年度末に区切りが付く計画にします。

遅延時の挽回策

遅延は起こるものとして、「どの時点で検知し」「誰が判断し」「どう挽回するか」を書きます。

段階 内容 書き方の例
検知 遅延を把握する仕組み 「週次の進捗報告で、計画比1週間以上の遅れが見込まれる場合を遅延と定義します」
報告 発注者への報告期限と内容 「遅延の見込みが判明してから3営業日以内に、原因・影響範囲・挽回策を書面で報告します」
挽回策(人員) 人員の追加・応援 「社内の応援要員(同種業務経験者2名)を投入します。追加費用は請求しません」
挽回策(工程) 並行化・順序変更 「後続作業のうち先行可能なもの(研修資料作成など)を前倒しします」
挽回策(範囲) 発注者と協議のうえ優先順位を調整 「成果物の品質を落とさないことを優先し、必要な場合は貴課と協議のうえ提出順序を調整します」
予備期間の充当 予備期間を使う判断 「予備期間の充当は管理責任者が判断し、定例会で貴課に報告します」

挽回策で「残業で対応します」「全力で巻き返します」と書くのは逆効果です。具体的な人員・工程・範囲の手当てを書いてください。

この項目の標準構成(テンプレート)

1. 工程の考え方(1〜2文:納期からの逆算、発注者の繁忙期への配慮、予備期間の確保)
2. 工程表(月または週単位、フェーズ別作業行・発注者の作業行・マイルストーン行・予備期間行・定例会行)
3. 主要作業の期間の根拠(3〜5項目、業務量との対応)
4. マイルストーン一覧(成果物名・提出日・承認日)
5. クリティカルパスと対策
6. 遅延時の検知・報告・挽回策

書き換え手順(チェックリスト)

  • 工程表の行が実施方針のフェーズと一致しているか
  • マイルストーン(成果物提出日・承認日)が日付付きで明示されているか
  • 発注者側の確認・承認・庁内照会の期間が工程表に書き込まれているか
  • 主要作業の期間に業務量の根拠(対象数・回数・人員)が添えられているか
  • 予備期間(修正・検査対応)が確保され、目的が明記されているか
  • 年度末納期の場合、検査期間と職員の繁忙期を考慮しているか
  • 議会日程などの職員が対応しにくい時期を避けているか
  • 遅延の定義・報告期限・挽回策(人員・工程・範囲)が書かれているか
  • 「速やかに」「着実に」など、期間が読めない語を日付や日数に置き換えたか

業務種別ごとの例文

IT導入(短納期:住民向けアプリの改修、契約から納期まで4か月)

悪い例: 短期間ではありますが、当社の豊富な経験を活かし、スケジュールどおりに完了させます。

良い例: 契約から納期まで4か月のため、要件確認と設計を並行して進めます。第1〜2週:既存アプリの仕様確認と改修要件の確定(貴課確認は5営業日でお願いします。確認用に変更点一覧を添付します)。第3〜8週:設計・改修(第5週に画面イメージの中間確認を設け、手戻りを防ぎます)。第9〜12週:テスト(当社テスト2週間、貴課の受入テスト1週間)。第13〜14週:修正と公開準備。第15〜16週:予備期間(修正対応・検査対応)。公開は年度末の繁忙期を避け、2月第2週を予定します。

なぜ良いか: 短納期案件で「経験を活かす」と言うだけでは評価されません。並行作業、中間確認、発注者の確認期間の短縮依頼(負担軽減策付き)、予備期間の確保という「無理をしない根拠」を示しています。

調査・計画策定(年度末納期:環境基本計画の改定)

悪い例: 3月末の納期までに、計画書を完成させます。

良い例: 年度末納期を踏まえ、計画書の最終案は2月中旬に提出し、2月下旬〜3月上旬を貴課の最終確認と環境審議会への報告に充てます。3月中旬に成果品を納品し、下旬は完了検査と軽微な修正の期間とします。審議会(7月・11月・2月予定)とパブリックコメント(12月、意見募集1か月)が全体の節目となるため、素案は10月末、審議会用の資料は各回の3週間前に貴課へ提出し、確認期間を確保します。4月の人事異動に備え、業務完了報告書には次年度の進行管理に必要な事項(指標の測定方法、データの所在)をまとめます。

なぜ良いか: 審議会・パブリックコメントという計画策定特有の節目を軸に逆算し、年度末の検査期間と人事異動への備えまで書いています。評価者は「この会社は年度末の実務を分かっている」と判断できます。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 症状 処方箋
期間が読めない語 「速やかに」「適宜」「随時」「着実に」 日付・週数・営業日数に置き換える
発注者の時間ゼロ 自社の作業だけが並び、確認・承認・照会の期間がない 発注者の作業行を追加し、目安の日数を書く
工程と方針の不一致 実施方針のフェーズ名と工程表の行が違う 同じ名称・同じ順番にそろえる
予備期間なし 納期直前まで作業が詰まっている 納期前に2〜4週間の予備期間を置き、目的を書く
年度末の無理 3月下旬に最終成果物提出 3月中旬納品、下旬は検査対応にする
根拠のない期間 「設計:3か月」とあるが、なぜ3か月か分からない 対象数・回数・人員から期間を説明する一文を添える
精神論の挽回策 「全力で巻き返す」「残業で対応」 人員・工程・範囲の具体策と報告期限を書く

AIに書き直させるときの指示例

以下の「スケジュール・工程管理」の下書きを、評価者が「業務量が工程に反映されている」と判断できる内容に書き直してください。
条件:
1. 添付の実施方針のフェーズと同じ名称・順番で工程表(Markdown表、月単位)を作る。行は「フェーズ別作業/貴課の作業(確認・承認・照会)/マイルストーン/予備期間/定例会」。
2. マイルストーンは「◆月日:成果物名の提出(貴課確認○営業日)」の形で書く。
3. 主要作業3〜5項目について、期間の根拠(対象数・回数・人員)を一文ずつ書く。
4. 納期の2〜4週間前に予備期間を置き、「修正・検査対応」と目的を明記する。年度末納期なら3月中旬納品・下旬検査とする。
5. 議会定例会など職員が対応しにくい時期を避けた旨を一文書く。
6. 遅延時の対応を「遅延の定義/報告期限/挽回策(人員・工程・範囲)/予備期間充当の判断者」で書く。
7. 「速やかに」「適宜」「随時」「着実に」「全力で」は使わない。
8. 日付が確定できない箇所は「【要確認:契約日】」と印を付ける。
下書き:
(ここに貼り付け)
実施方針のフェーズと作業量:
(ここに貼り付け)
契約予定日・納期・議会日程:
(ここに貼り付け)

よくある質問

Q工程に余裕を持たせると、遅い計画と見られませんか。

A

予備期間は「品質確保と修正対応のための期間」と目的を明示すれば、むしろ評価されやすくなります。予備期間がない工程のほうが、遅延リスクを抱えた計画と判断されがちです。

Q契約日が確定していない段階で、日付入りの工程表を書いてよいですか。

A

募集要項の「契約予定日」「履行期間」を起点にして書き、「契約日が前後した場合は、マイルストーンを同じ日数だけ繰り下げ、貴課と協議のうえ確定します」と一文添えてください。日付がないより、仮の日付がある工程表のほうが実現性を評価できます。

Q発注者の確認期間を書くと、「遅れたら発注者のせい」と言っているように見えませんか。

A

「確認しやすいよう、変更点一覧と確認シートを添えます」「候補日は当社から複数提示します」のように、発注者の負担を減らす工夫とセットで書けば、責任転嫁には読まれません。むしろ、確認期間を見込まない計画のほうが、契約後に発注者を急かすことになります。

検索でよくある疑問

Q提案書の工程表にはどんな行を入れればよいですか?

A

月単位(短い業務は週単位)の列に、フェーズ別の作業行、発注者の作業行(確認・承認・庁内照会など)、マイルストーン行(成果物提出日・承認日)、予備期間行、定例会行をそろえます。表の下には、主要な作業の期間の根拠、遅れると全体に響くクリティカルパスと対策、議会日程など発注者の繁忙期への配慮を本文で添えます。

Q自治体の確認期間はどのくらい見込めばよいですか?

A

業務や自治体により異なりますが、目安の例として、中間成果物の確認は5〜10営業日、決裁を伴う計画素案や設計書の承認は10〜15営業日、庁内関係課への照会・意見集約は3〜4週間、既存データの提供は2〜3週間です。議会や審議会への説明は定例会の日程に依存し、説明資料の事前確認期間も必要です。

Q年度末納期の工程で注意することは何ですか?

A

納品後には発注者の完了検査があるため、3月中旬までに最終成果物を納め、下旬は検査と軽微な修正に充てる計画にします。3月は人事異動の内示や議会、予算執行の締めが重なるため、重要な承認は2月中に終えます。4月の異動に備え、業務完了報告書は新任者が読んでも分かる形にすることも書いておくと安心感を与えます。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。