STEP3骨格を設計する/5-3/提案の骨格を設計する

提案書のストーリーを課題→解決策→効果でつなぐ ― 原因と根拠を加えた一貫性表で説得力を高める

提案書のストーリーは、発注者の課題→原因→解決策→効果→根拠が横一列でつながるように組み立てます。課題は仕様書や計画書など発注者自身の資料の言葉で、解決策は誰が・いつ・何を使うかの手順で、効果は数値と期限で書くと、評価者は実施方針の妥当性を判断しやすくなります。このページでは、プロポーザルや総合評価の企画提案書で使える5列の一貫性表の作り方、効果の数値化の手順(定量・定性・期限)、実績・調査・ベンチマークという根拠の種類を解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約11分

要点(結論)

提案書の基本的な筋道は「発注者の課題 → 自社の解決策 → 期待される効果」です。骨子段階では、この間に「原因」を、末尾に「根拠」を加えた5列の一貫性表を作り、各行が横一列でつながっているかを確かめます。課題は発注者の言葉で、解決策は手順で、効果は数値・状態・期限で、根拠は実績・調査・公開ベンチマークのいずれかで書くと、評価者は提案の妥当性を判断しやすくなります。

このページの目次
  1. 課題は発注者の言葉で書く
  2. 解決策は手順で書く
  3. 効果は数値と期限で書く
  4. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  5. 一貫性表を5列で作る手順(課題→原因→解決策→効果→根拠)
  6. 効果の数値化の手順(定量・定性・期限)
  7. 根拠の種類(実績・調査・ベンチマーク)
  8. 業務種別ごとの例文
  9. 書き換え手順(チェックリスト)
  10. よくある失敗パターンと処方箋
  11. AIに書き直させるときの指示例

課題は発注者の言葉で書く

ストーリーの出発点は課題です。課題は、提案者の推測ではなく、仕様書の背景・目的や、計画書・議会答弁など発注者自身の資料に書かれた言葉で示します。発注者が自ら認めている課題から出発すると、評価者はその後の解決策を「自分たちの課題への答え」として読みます。

課題を書くときは、「現状」と「あるべき姿」の差として示すと明確になります。

  • 悪い例: 「地域の観光振興に課題があります。」
  • 良い例: 「貴市観光振興計画では『日帰り客の滞在時間の延伸』を課題に掲げており、現状の平均滞在時間は計画の目標値を下回っています。現状と目標の差を埋めることが本業務の課題です。」

解決策は手順で書く

解決策は「何をするか」だけでなく、「どの順番で、誰が、何を使って行うか」まで書きます。手順で書かれた解決策は、評価者が実行可能性を判断でき、「この会社なら本当にできそうだ」という信頼につながります。

  • 悪い例: 「最適なシステムを導入し、業務の効率化を図ります。」
  • 良い例: 「①着手後1か月で窓口業務の所要時間を実測し、②待ち時間の主因となる手続きを特定したうえで、③該当手続きから事前入力の仕組みを段階的に導入します。」

ここで大切なのは、解決策の各手順が、課題の原因に対応していることです。課題で挙げていない問題を解決策で扱ったり、課題で挙げた問題に解決策が対応していなかったりすると、ストーリーが途切れます。

効果は数値と期限で書く

効果は「いつまでに」「何が」「どれだけ」変わるかを示します。発注者の計画に目標指標(KPI)がある場合は、その指標に合わせて効果を示すと、評価者は効果の価値をすぐに理解できます。

  • 悪い例: 「住民満足度の向上が期待されます。」
  • 良い例: 「事前入力の対象手続きでは、令和◯年度末までに窓口での記入時間を現状から半減させることを目標とし、月次で実績を報告します。」

数値は、根拠を説明できる範囲で設定します。過大な目標は評価者に疑問を持たれ、受注後に自社を苦しめます。根拠を示しにくい場合は、「目標値は着手後の実測結果を踏まえ、発注者と協議して確定します」のように、設定方法を示す書き方も有効です。

課題・原因・解決策・効果が横一列でつながっているかは、骨子段階で「一貫性表」を作って確認します。表の作り方と記入例は、次の「一貫性表を5列で作る手順」で示します。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

評価者が「実施方針の妥当性」「実施方法の実現性」を採点するとき、頭の中で行っているのは「この解決策は、本当にうちの課題を解決するのか」という因果の検証です。課題と解決策の間に原因が書かれていないと、評価者は「なぜその方法なのか」を自分で補わなければならず、補えなければ「根拠が薄い」として標準点止まりになりがちです。逆に、課題→原因→解決策が一本の線でつながっていると、評価者は検証に時間を使わず、「この提案者は原因を分かっている」という加点の判断に進めます。

効果の項目では、評価者は「期待できる」「向上する」といった言葉だけでは高く評価しにくいものです。評価するのは「何が、いつまでに、どれだけ」と、「それを言える根拠は何か」です。数値と期限と根拠がそろった効果は、評価者が上司や議会に「この提案を選んだ理由」として説明できる材料になります。説明できる材料があるかどうかが、効果の項目で点が分かれる理由です。

一貫性表を5列で作る手順(課題→原因→解決策→効果→根拠)

骨子段階で作る一貫性表は、「根拠」の列を加えた5列にします。根拠の列があることで、効果の数値が言い切れるかどうかを骨子の時点で判断できます。

手順1:課題の列を埋める 発注者の資料(仕様書の背景・目的、計画書、議会答弁、予算説明資料)から、発注者自身の言葉で課題を書き写します。出典も控えておきます。

手順2:原因の列を埋める 課題ごとに「なぜそれが起きているか」を1つに絞って書きます。原因が複数ある場合は行を分けます。原因は、事前調査で確認できたもの、または着手後に実測して特定すると明記したものに限ります。

手順3:解決策の列を埋める 原因ごとに、「①〜②〜③〜」の手順形式で、誰が・いつ・何を使って行うかを書きます。原因に対応していない手順は、別の行に移すか削除します。

手順4:効果の列を埋める 解決策ごとに、「いつまでに・何が・どれだけ」を書きます。定量・定性・期限の3要素を入れます。

手順5:根拠の列を埋める 効果の数値を言える理由を書きます。根拠が書けない行は、効果の表現を「目標値は着手後に協議して確定」に変えるか、根拠を集める作業を執筆前に行います。

手順6:横一列で読み上げる 各行を「〇〇という課題は△△が原因であり、□□を行うことで、◇◇までに◎◎になる。その根拠は××である」と一文に読み上げ、つながらない箇所を直します。

課題(発注者の言葉) 原因 解決策(手順) 効果(数値・期限) 根拠
繁忙期の窓口待ち時間が長い(総合計画の目標「待たない窓口」) 申請書の記入に平均12分かかり、記入待ちが行列化 ①着手1か月で所要時間実測 ②上位3手続きを特定 ③事前入力を段階導入 対象手続きの記入時間を年度末までに半減(12分→6分) 同規模自治体での導入実績(記入時間55%減)、着手後の実測で再確認
オンライン申請の利用率が計画目標を下回る 操作に不安を持つ高齢者層が窓口に戻る ①窓口横に操作サポート席を設置 ②主要5手続きの案内動画を作成 ③月次で利用率を確認し対象を拡大 利用率を計画目標(30%)に年度内に到達 他自治体の公開事例で同種サポートにより利用率が伸びた傾向(目安)、月次確認で軌道修正

効果の数値化の手順(定量・定性・期限)

効果は、次の3種類を組み合わせて書きます。

種類 内容 書き方の例
定量効果 数値で測れる変化 待ち時間を30分から15分に/回収率を25%から40%に/年間作業時間を400時間削減
定性効果 数値にしにくいが観察できる変化 担当者が交代しても手順書だけで運用できる状態/住民から窓口の分かりにくさに関する苦情が出ない状態
期限 変化がいつ起きるか 年度末までに/導入後3か月以内に/第2四半期の中間報告時点で

定量効果の数値を決める手順は、①発注者の計画書のKPIをそのまま使う、②KPIがなければ現状値を事前調査か着手後の実測で把握し、根拠のある改善率を掛ける、③根拠がなければ「目標値は実測後に協議して確定」とし、測り方と報告頻度だけを約束する、の順です。定性効果は、「〜という状態」で終わる文にし、誰がどう確認できるかを添えると評価者が検証できます。期限は、業務の契約期間内に収まるものに限ります。契約期間後の効果を書くなら、「契約期間中に〇〇まで到達し、その後の自走に必要な引継ぎを行う」と、契約期間内に自社が責任を持つ範囲を明示します。

根拠の種類(実績・調査・ベンチマーク)

効果の数値を支える根拠は、強い順に3種類あります。

種類 内容 強さ 書き方の注意
自社の実績 同種・同規模の業務で自社が出した結果 最も強い 発注者名は守秘に配慮して「人口規模〇万人の市」等で示す。数値は契約上公開できる範囲で
調査・実測 事前調査や着手後の実測で得たデータ 強い 着手後の実測を根拠にするときは、実測の時期と方法を手順の中に組み込む
公開ベンチマーク 国の公表資料・他自治体の公開事例・業界統計 中程度 「目安」「傾向」と表現し、自社の効果と直結させすぎない。出典を明記

根拠が1つもない効果は、骨子の段階で書き直します。「期待される」「見込まれる」という語尾で根拠の欠落をごまかすと、評価者には「言い切れない」と伝わります。

業務種別ごとの例文

ITシステム導入

悪い例: 「現行システムの老朽化という課題に対し、最新のクラウドシステムを導入することで、業務効率が大幅に向上します。」

良い例: 「貴市の現行システムは保守終了が迫り、年間の障害対応に職員延べ120時間を要しています(仕様書の背景より)。障害の主因は手作業の連携処理にあるため、①連携処理を自動化し、②職員向け操作研修を導入前後に2回行い、③3か月の並行稼働で安定性を確認します。これにより障害対応時間を導入後1年で年間40時間以下(約3分の2の削減)にすることを目標とします。根拠は、同規模自治体での同種導入において障害対応時間が約7割減少した自社実績です。」

なぜ良いか: 課題を発注者の数値(120時間)で示し、原因(手作業連携)→手順(①②③)→効果(40時間以下・1年)→根拠(自社実績)が一本でつながっています。目標の削減率(約67%)を根拠の実績(約7割減)以内に抑えているため、過大な約束にもなっていません。「大幅に向上」という抽象語が消えています。

調査・計画策定

悪い例: 「住民ニーズを的確に把握し、実効性のある計画を策定します。」

良い例: 「前回の住民アンケートは回収率22%にとどまり、20〜30代の回答が全体の5%でした(前回計画の資料より)。原因は紙の調査票のみで実施したことにあるため、①スマートフォンで回答できるウェブ調査を併用し、②子育て施設・大学・事業所に協力を依頼して配布経路を増やし、③回収状況を週次で確認して不足する層に追加配布します。これにより回収率35%以上、20〜30代の回答比率15%以上を目標とします。根拠は、同様の併用方式を採用した自社の調査業務での回収率実績です。」

なぜ良いか: 前回調査の数値を課題とし、原因(紙のみ)に対応する手順を示し、効果を回収率と年齢層比率の2つの数値で設定しています。根拠が実績であるため言い切れています。

イベント・広報

悪い例: 「市民の皆様に愛されるイベントを開催し、地域の賑わいを創出します。」

良い例: 「前回の来場者アンケートでは市外来場者が全体の12%で、観光振興計画の目標である30%を下回っています。原因は周知が市広報紙と庁舎掲示に限られていたことにあるため、①開催60日前から近隣3市の観光施設と連携した相互告知を行い、②SNS広告を市外在住者に限定して配信し、③来場者アンケートで居住地を把握して翌年の配分に反映します。これにより市外来場者比率を25%以上にすることを目標とします。根拠は、同種の広域告知を行った自社のイベント業務での市外来場者比率の実績です。」

なぜ良いか: 「愛される」「賑わい」という測れない言葉を消し、発注者の計画目標(30%)とのギャップを課題にしています。目標を計画値そのものではなく根拠を示せる25%に設定し、過大な約束を避けています。

書き換え手順(チェックリスト)

  • 課題は発注者の資料に書かれた言葉と数値で書き、出典を控えた
  • 課題は「現状」と「あるべき姿」の差として書いた
  • 課題ごとに原因を1つに絞って書いた(複数なら行を分けた)
  • 解決策は「①②③」の手順で、誰が・いつ・何を使うかまで書いた
  • 各手順が原因のどれに対応するかを確認し、対応しない手順を削除または移動した
  • 効果に定量(数値)・定性(状態)・期限の3要素を入れた
  • 効果の数値は発注者の計画KPIに合わせた(KPIがなければ測り方と報告頻度を書いた)
  • 根拠(実績・調査・ベンチマーク)を効果ごとに1つ以上書いた
  • 根拠が書けない効果は、言い切りをやめて「実測後に協議して確定」に変えた
  • 各行を一文に読み上げ、つながらない箇所を直した

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 何が起きるか 処方箋
課題を仕様書の言い換えで済ませる 理解度の項目で「読んだだけ」と評価される 計画書・議会答弁・前回成果物から数値を伴う課題を足す
原因を書かずに課題から解決策に飛ぶ 「なぜその方法か」が伝わらず妥当性で減点 一貫性表に原因の列を設け、空欄の行を埋めるまで執筆しない
解決策が課題と無関係に自社サービスの説明になる 課題への答えとして読まれない 各手順の末尾に「(原因〇〇への対応)」と書き、対応しない手順を削る
効果が「向上」「期待」で終わる 効果の項目で標準点以下 数値・状態・期限の3要素に書き直す
効果が過大で根拠がない 評価者に疑われ、受注後に自社を縛る 根拠のある範囲に下げるか、設定方法を書く
契約期間後の効果を約束する 実現性を疑われる 契約期間内の到達点と引継ぎ内容に書き換える

AIに書き直させるときの指示例

あなたは自治体プロポーザルの提案書コンサルタントです。
以下の【提案の下書き】を、「課題→原因→解決策→効果→根拠」の5列の一貫性表に分解してください。
ルール:
1. 課題は【発注者の資料】に書かれた言葉と数値だけを使う(推測で補わない)
2. 原因は課題ごとに1つ。下書きに書かれていなければ「(原因が未記載)」と書く
3. 解決策は①②③の手順形式に直し、各手順がどの原因に対応するかを示す
4. 効果は「定量(数値)/定性(状態)/期限」の3要素に分けて書く。欠けている要素は「(未記載)」と書く
5. 根拠は「自社実績/調査・実測/公開ベンチマーク」のどれかに分類する。なければ「(根拠なし)」と書く
6. 最後に、横一列でつながっていない行と、修正案を列挙する
【提案の下書き】(ここに貼り付け)
【発注者の資料】(ここに貼り付け)

よくある質問

Q原因が分からない課題はどう書けばよいですか。

A

「原因は着手後〇か月以内に実測・ヒアリングで特定する」と、特定の方法と時期を解決策の最初の手順にします。原因を推測で断定するより、特定する手順を示すほうが評価者の信頼を得られます。

Q効果の数値を書くと、受注後にその数値で縛られませんか。

A

提案書の記述は、契約書や仕様書で履行を求められたり、受注後の評価で確認されたりする例があるため、根拠のない数値は書かないでください。根拠のある数値は「目標」と明記し、達成の前提条件(発注者側の協力事項など)を添えると、受注後の協議の余地を残せます。

Q課題が多すぎて一貫性表が10行を超えます。

A

勝ちテーマに直結する課題を3〜5行に絞ります。残りは「その他の課題への対応」として実施方針の章の末尾に簡潔にまとめ、一貫性表は主要な行だけで作ります。

検索でよくある疑問

Q提案書の課題はどう書けば評価される?

A

提案者の推測ではなく、仕様書の背景・目的、計画書、議会答弁、予算説明資料など発注者自身の資料に書かれた言葉と数値で書き、出典を控えておきます。課題は「現状」と「あるべき姿」の差として示すと明確になります。仕様書の言い換えで済ませると、業務の理解度の項目で「読んだだけ」と評価されるおそれがあります。

Q提案書の効果に書く数値はどう決める?

A

①発注者の計画書のKPIをそのまま使う、②KPIがなければ現状値を事前調査か着手後の実測で把握し、根拠のある改善率を掛ける、③根拠がなければ「目標値は実測後に協議して確定」とし、測り方と報告頻度だけを約束する、の順で決めます。期限は業務の契約期間内に収まるものに限ります。

Q提案書の効果の根拠にはどんな種類がある?

A

強い順に、同種・同規模の業務で自社が出した実績、事前調査や着手後の実測で得たデータ、国の公表資料や他自治体の公開事例などの公開ベンチマークの3種類です。公開ベンチマークは「目安」「傾向」と表現し出典を明記します。根拠が1つもない効果は、「期待される」でごまかさず骨子の段階で書き直します。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。