STEP3骨格を設計する/5-1/提案の骨格を設計する

提案書の章立てを評価項目にそろえる ― 評価基準表から目次・ページ配分・対応表を作る手順

提案書の章立ては、評価基準の評価項目を章、評価の着眼点を節にし、見出しには評価基準の文言をそのまま使います。評価者は採点表の項目ごとに根拠を探すため、目次が評価項目とずれていると記述が見つからず「記載なし」と扱われるおそれがあるからです。このページでは、プロポーザルや総合評価の企画提案書で、評価基準表から目次を作る手順、配点比によるページ配分、様式指定ごとの対応、冒頭に置く評価項目と記載ページの対応表の作り方を解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約11分

要点(結論)

提案書の章立ては、評価基準の項目の順番と名称にそろえ、冒頭に評価項目と記載ページの対応表を置き、ページ配分は配点比で決めます。評価者が採点表の上から順に読み進めたとき、該当する記述がすぐ見つかる構成が最も点を取りやすい構成です。様式指定(自由様式・指定様式・ページ上限)に応じた作り方と、既存の章立てを作り直す手順も示します。

このページの目次
  1. 評価基準の順番と名称のまま見出しを作る
  2. 様式指定がある場合とない場合
  3. 冒頭に「評価項目と記載ページの対応表」を置く
  4. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  5. 実演:架空の評価基準表から目次を作る
  6. 様式指定の3パターン別の対応(自由様式/指定様式/ページ上限)
  7. 書き換え手順(チェックリスト)
  8. 業務種別ごとの例文
  9. よくある失敗パターンと処方箋
  10. AIに書き直させるときの指示例

評価基準の順番と名称のまま見出しを作る

評価者は、採点表の項目ごとに「この項目の根拠はどこに書いてあるか」を探しながら読みます。提案書の章立てが評価項目とずれていると、評価者は記述を探し回ることになり、見つからなければ書いていないものとして採点されるおそれがあります。

章立ての基本は、評価基準の大項目を章、中項目や「評価の着眼点」を節にすることです。見出しの言葉も、評価基準の文言をそのまま使います。

評価基準の項目 悪い例(独自の見出し) 良い例(評価基準どおりの見出し)
業務の理解度 1. はじめに ― 私たちの想い 1. 業務の理解度
実施方針の妥当性 2. 当社のアプローチ 2. 実施方針の妥当性
実施体制 5. チーム紹介 3. 実施体制
独自提案 3. 当社ならではの強み 4. 独自提案

独自の見出しで個性を出したい場合は、「1. 業務の理解度 ― 『行かない窓口』実現の鍵は利用者支援にある」のように、評価基準の名称の後ろに副題として付けます。

様式指定がある場合とない場合

様式指定がある場合は、指定された様式番号・記載項目・ページ数・順番を厳守し、様式の中でさらに着眼点の順に小見出しを立てます。様式指定がない場合(任意様式)は、評価基準の項目順で章を立てます。仕様書の業務内容の順番と評価項目の順番が違う場合でも、評価項目の順番を優先します。評価者の手元にあるのは採点表だからです。評価基準が公表されていない場合は、募集要項に示された「提案を求める事項」の順番に従います。自由様式・指定様式・ページ上限が厳しい様式の3パターン別の詳しい作り方は、この節の後半の表にまとめています。

冒頭に「評価項目と記載ページの対応表」を置く

表紙の次(または目次の位置)に、評価項目と提案書の記載ページの対応表を置くと、評価者が根拠を探す時間を大幅に減らせます。

評価項目 評価の着眼点 配点 記載箇所
業務の理解度 本市の現状と課題を的確に把握しているか 20 1章 p.2〜4
実施方針の妥当性 目的達成に向けた方針が具体的か 20 2章 p.5〜7
実施体制 業務遂行に必要な体制・人員が確保されているか 15 3章 p.8〜9
独自提案 仕様を上回る効果的な提案があるか 15 4章 p.10〜11

配点の欄は、評価基準が公表されている場合だけ記載します。ページ数制限が厳しく対応表を置く余裕がない場合や、様式で禁止されている場合は、各章の見出しに評価項目名を正確に入れることで代替します。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

評価者は、提案書を「読む」のではなく「探す」人です。自治体のプロポーザルでは、所管課の職員に加えて他部署の職員や外部有識者が評価者になる例が多く、評価者は1社あたり限られた時間で採点表を埋めます。このとき評価者の頭の中では、次の3段階の判断が項目ごとに繰り返されます。

  1. 該当する記述はどこか(見つからなければ「記載なし」として低い評価になりやすい)
  2. 着眼点に答えているか(答えていれば標準点)
  3. 他社より具体的か・優れているか(優れていれば加点)

章立てが評価項目と一致している提案書は、1段階目を一瞬で通過し、評価者の時間と注意力をすべて2・3段階目に使ってもらえます。一致していない提案書は、1段階目で時間を使い切り、どれほど良い内容でも「探すのが大変だった」という印象のまま標準点以下に置かれやすくなります。点が分かれるのは内容の優劣だけでなく、「採点の根拠が見つかるまでの時間」でもあることを、骨格設計の出発点にしてください。

実演:架空の評価基準表から目次を作る

評価基準表から目次を作る手順を、架空の「住民窓口デジタル化支援業務」の評価基準で実演します。

手順1:評価基準表を書き写し、着眼点を分解する

No. 評価項目 評価の着眼点 配点
1 業務の理解度 ①本市の窓口業務の現状と課題を把握しているか ②本業務の目的を理解しているか 20
2 実施方針・実施方法 ①目的達成に向けた方針が明確か ②方法が具体的で実現可能か ③工程が適切か 25
3 実施体制 ①必要な人員・役割が確保されているか ②管理責任者の類似業務経験 15
4 独自提案 仕様書を上回る効果的な提案があるか 15
5 類似業務の実績 同種・同規模の自治体での実績 10
6 見積価格 提案上限額の範囲内で適切か 15

手順2:評価項目を章、着眼点を節にする

着眼点に①②③と番号が付いているときは、その番号順に節を立てます。番号がない場合は、着眼点の文を読点や「および」で区切り、区切った単位を節にします。

手順3:各章のページ配分を配点比で決める

本文のページ数に配点の割合を掛けます。ここでは提案書全体の上限を20ページとし、冒頭の対応表に1ページを使うため、本文は19ページとします。見積価格は別紙の見積書で評価されるため、本文の配分からは除きます。残り85点に対し、業務の理解度20点なら20÷85×19ページ=約4.5ページ、という計算です。同じ計算で、実施方針・実施方法25点は約5.6ページ、実施体制15点と独自提案15点はそれぞれ約3.4ページ、類似業務の実績10点は約2.2ページになります。四捨五入すると4・6・3・3・2ページで合計18ページとなり、1ページ余ります。この端数の1ページは、差別化ポイントを置く章(この例では独自提案)に寄せます。

手順4:できあがった目次

評価項目と記載ページの対応表 …… p.1
1. 業務の理解度 …… p.2〜5(4ページ)
  1-1 貴市の窓口業務の現状と課題
  1-2 本業務の目的に対する理解
2. 実施方針・実施方法 …… p.6〜11(6ページ)
  2-1 目的達成に向けた実施方針
  2-2 実施方法(具体的な手順と実現性)
  2-3 実施工程
3. 実施体制 …… p.12〜14(3ページ)
  3-1 人員配置と役割分担
  3-2 管理責任者の類似業務経験
4. 独自提案 …… p.15〜18(4ページ)
5. 類似業務の実績 …… p.19〜20(2ページ)

手順5:仕様書の必須要件をすべてどこかの節に割り当てる

仕様書の「〜すること」で終わる必須要件を要件一覧表(募集要項・仕様書・評価基準の要件を1行ずつ抜き出し、要件ID・原文(抜粋)・区分・対応ページなどを並べた表)に書き出し、それぞれを目次のどの節で記載するかを決めます。どの節にも割り当てられない要件があれば、最も近い節に「〇〇への対応」という小見出しを追加します。この時点で全要件の割当先が埋まっていれば、骨格は完成です。

様式指定の3パターン別の対応(自由様式/指定様式/ページ上限)

募集要項の様式指定は、大きく3パターンに分かれ、それぞれ章立ての作り方が変わります。

パターン 募集要項の記述例 章立ての作り方 注意点
自由様式 「様式は任意とする。A4縦、20ページ以内」 評価項目の順番・名称で章を立て、冒頭に対応表を置く ページ上限がない場合でも、評価者の負担を考え評価項目数×3〜4ページを目安に抑える
指定様式(様式ごとに記載事項が決まっている) 「様式3:実施方針(2ページ以内)」「様式4:実施体制(1ページ以内)」 様式の順番と記載事項を変えない。様式内で着眼点の順に小見出しを立てる 様式の枠・行数・フォントサイズの改変は失格のおそれ。様式に書く欄がない評価項目は、記載事項に最も近い様式の中で触れる
ページ上限が厳しい自由様式 「提案書はA4で5ページ以内」 対応表を省略し、章見出しそのものを評価項目名にする。1評価項目=1ページを基本に、配点の大きい項目だけ2ページ 図表で文章を圧縮する。会社概要や実績は、別紙提出が認められていれば本文から外す

指定様式のとき特に多い失敗が、「様式に『提案内容』としか書いていないので、何を書いてもよいと考えて自社紹介を長く書く」ことです。様式の記載事項が抽象的でも、評価基準の着眼点が存在するなら、着眼点の順に小見出しを立てて埋めてください。

書き換え手順(チェックリスト)

既にある章立て案を、評価基準に一致した章立てに作り直す手順です。

  • 評価基準表の評価項目を、配点とともに上から順に書き写した
  • 各評価項目の「着眼点」を①②③の単位に分解した
  • 章の見出しを、評価項目の名称そのままに置き換えた(言い換え禁止)
  • 節の見出しを、着眼点の文言そのままに置き換えた
  • 自社らしさを出したい見出しは、評価項目名の後ろに「―」で副題として付けた
  • 評価項目に対応しない章(「はじめに」「当社の想い」等)を削除し、必要な内容は該当する評価項目の章に移した
  • ページ配分を配点比で計算し、配点の大きい項目に多く割いた
  • 仕様書の必須要件をすべてどこかの節に割り当てた
  • 冒頭に評価項目×記載ページの対応表を置いた(置けない場合は見出しで代替)
  • 指定様式がある場合、様式番号・順番・ページ数・枠を一切変えていない

業務種別ごとの例文

ITシステム導入(評価項目「システムの機能・性能」「導入後の運用保守」)

悪い例: 「2. ソリューション概要」「3. サポート体制のご紹介」

良い例: 「2. システムの機能・性能 ― 仕様書の必須機能への対応と住民向け画面の操作性」「3. 導入後の運用保守 ― 問合せ対応時間と障害復旧目標」

なぜ良いか: 評価項目名がそのまま見出しになっているため、評価者が採点表と見比べた瞬間に該当箇所が分かります。副題で着眼点(必須機能・操作性・復旧目標)を予告しているため、拾い読みでも内容が伝わります。

調査・計画策定(評価項目「調査手法の妥当性」「住民参画の方法」)

悪い例: 「第2章 調査の進め方」「第3章 ワークショップについて」

良い例: 「2. 調査手法の妥当性 ― 回収率を高める調査設計」「3. 住民参画の方法 ― 若年層・子育て世帯を巻き込む3つの場」

なぜ良いか: 「進め方」「ワークショップ」という独自の言葉を、評価基準の「調査手法の妥当性」「住民参画の方法」に戻しています。評価者が「住民参画はどこに書いてあるか」と探す必要がなくなります。

イベント・広報(評価項目「企画内容の魅力」「集客・周知の方法」「安全管理」)

悪い例: 「1. コンセプト」「2. 当日のプログラム」「3. プロモーション」

良い例: 「1. 企画内容の魅力 ― 来場者が『また来たい』と感じる3つの仕掛け」「2. 集客・周知の方法 ― 開催前60日からの段階的周知」「3. 安全管理 ― 荒天・混雑・救護の対応基準」

なぜ良いか: イベント業界の慣用語(コンセプト・プログラム・プロモーション)ではなく、評価基準の言葉で章を立てています。安全管理は配点が小さくても独立した評価項目であるため、独立した章を設けて「記載なし」を防いでいます。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 何が起きるか 処方箋
仕様書の業務内容の順番で章を立てる 評価項目の順番と食い違い、評価者が探し回る 評価項目の順番を優先し、業務内容の順番は実施方針の章の中で使う
「はじめに」「おわりに」を置く 配点のないページにページ数を消費する 「はじめに」の内容は業務の理解度の章の冒頭へ、「おわりに」は削除
評価項目を独自の言葉に言い換える 評価者が同じ項目だと気づかない 評価基準の文言をそのまま見出しに使う
複数の評価項目を1つの章にまとめる 採点表の2項目に対し1か所しか根拠がなく、片方が低評価になる 配点の小さい項目でも1項目1章(または1節)にする
対応表のページ番号が本文とずれる 評価者が指定ページを開いても記述がなく、信頼を失う 最終版確定後に対応表のページ番号を必ず更新する
指定様式の枠を広げる・行を増やす 様式違反として減点または失格 枠内に収まるまで文章を圧縮し、図表で代替する

AIに書き直させるときの指示例

あなたは自治体プロポーザルの提案書コンサルタントです。
以下の【評価基準表】と【現在の章立て案】をもとに、次のルールで章立てを作り直してください。
1. 評価項目の順番と名称をそのまま章の見出しにする(言い換え禁止)
2. 評価の着眼点を①②③の単位に分解し、その順番で節の見出しにする
3. 評価項目に対応しない章は削除し、その内容を最も近い評価項目の章へ移す
4. 本文は全体で【N】ページとし、配点比でページ配分を計算して各章に示す
5. 最後に「評価項目×着眼点×配点×記載章」の対応表を作る
【評価基準表】(ここに貼り付け)
【現在の章立て案】(ここに貼り付け)

よくある質問

Q評価項目の順番では話の流れが不自然になります。それでも合わせるべきですか。

A

合わせるべきです。話の流れは各章の冒頭に1〜2行の「つなぎ」を入れることで補えます。採点のしやすさを犠牲にしてまで流れを優先する利点は小さいと考えてください。

Q評価基準が「総合的に判断する」としか書かれておらず、項目が公表されていません。章立てはどうしますか。

A

募集要項の「提案を求める事項」や「提案書の記載内容」の順番と名称で章を立てます。それも曖昧な場合は、自治体のプロポーザルガイドラインで評価項目の例としてよく挙げられる「業務の理解度・実施方針/実施方法・実施体制・類似実績・独自提案」の順で章を立て、見出しにその名称を使うと、評価者が一般的な採点表と照合しやすくなります。

Q評価項目の数が多く(10項目以上)、1項目1章にすると細切れになります。

A

配点の大きい項目を章、小さい項目をその章の中の節にまとめても構いません。ただし、まとめた場合も見出しには評価項目の名称を必ず残し、対応表で「どの節がどの評価項目に対応するか」を明示してください。

検索でよくある疑問

Q提案書のページ配分はどう決める?

A

本文のページ数に配点の割合を掛けて決めます。見積価格は別紙の見積書で評価されるため本文の配分から除きます。たとえば全体20ページのうち対応表に1ページを使い本文が19ページで、見積を除いた残り85点のうち業務の理解度が20点なら、20÷85×19ページで約4.5ページです。四捨五入で余った端数のページは差別化ポイントを置く章に寄せます。

Q指定様式の提案書では章立てを変えてもよい?

A

様式番号・記載事項・ページ数・順番は変えず、様式の中で評価の着眼点の順に小見出しを立てます。枠・行数・フォントサイズの改変は失格のおそれがあります。様式に「提案内容」としか書いていなくても自社紹介を長く書かず、着眼点の順に埋めます。書く欄がない評価項目は、記載事項が最も近い様式の中で触れます。

Q評価項目と記載ページの対応表はどこに置く?

A

表紙の次、または目次の位置に、評価項目・評価の着眼点・配点・記載箇所を並べた表を置きます。配点の欄は評価基準が公表されている場合だけ記載します。ページ数制限が厳しい場合や様式で禁止されている場合は、各章の見出しに評価項目名を正確に入れて代替します。ページ番号は最終版の確定後に必ず更新します。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。