STEP6見せる・伝える・出す/第9章

プロポーザルのプレゼン・ヒアリング対策 ― 提案書を読み上げず勝ちテーマを強調するコツ

プロポーザルのプレゼンのコツは、提案書を読み上げず、勝ちテーマ(提案コンセプト)と差別化ポイント、配点の大きい評価項目の根拠に時間を集中させることです。二次審査のプレゼンテーション審査とヒアリングでは、評価者は提案内容が本当に実行できるか、この人たちに任せて大丈夫かを見ています。持ち時間に予備を残した時間配分、配置予定の管理責任者が中心になって話す役割分担、評価項目ごとの想定質問リストと「結論→根拠→確認」の答え方、オンライン審査での接続確認まで、自治体のプロポーザルで順位を落とさない準備を解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約9分

一次審査(書類審査)を通過しても、二次審査のプレゼンテーションとヒアリングで順位が入れ替わることは珍しくありません。評価者は、提案書に書かれた内容が本当に実行できるのか、この人たちに任せて大丈夫なのかを、短い時間の中で見極めようとしています。この章では、提案書を読み上げずに勝ちテーマを強調するプレゼンの組み立て、時間配分と話す人の決め方、想定質問の作り方と答え方、オンライン審査での注意点を解説します。

この章の要点

  • 9-1 プレゼンは提案書の「要約」ではなく「強調」:プレゼンテーション審査は、提出済みの提案書を短く言い直す場ではなく、評価者に「これだけは覚えて帰ってほしい」点を強く印象づける場です。提案書を読み上げず、勝ちテーマと差別化ポイントに時間を集中させます。
  • 9-2 時間配分と話す人:プレゼンの持ち時間は募集要項で決まっており、超過すると途中で打ち切られることがあります。時間配分を事前に決め、配置予定の管理責任者が中心となって話し、本番と同じ条件でリハーサルを重ねます。
  • 9-3 想定質問の作り方と答え方:ヒアリングでの受け答えは、提案書の記載が本当に実行できるかを確かめる場です。想定質問リストを事前に作り、「結論 → 根拠 → 確認」の順で短く答える練習をします。答えられない質問には、ごまかさず誠実に対応します。
  • 9-4 オンライン審査の注意点:オンラインでプレゼンやヒアリングを行う場合は、通信・機器・画面共有の不具合がそのまま評価に影響します。事前の接続確認と、トラブル時の代替手段を用意したうえで臨みます。
このページの目次
  1. 9-1 プレゼンは提案書の「要約」ではなく「強調」
    1. 提案書を読み上げない
    2. 勝ちテーマと差別化に絞る
  2. 9-2 時間配分と話す人
    1. 時間配分の目安
    2. 配置予定者(管理責任者)が話す意味
    3. リハーサルの方法
  3. 9-3 想定質問の作り方と答え方
    1. 想定質問リストの作り方
    2. 答え方:結論 → 根拠 → 確認
    3. 答えられない質問への対応
  4. 9-4 オンライン審査の注意点
    1. 通信・画面共有の事前確認
    2. カメラ・音声・資料の見せ方

9-1プレゼンは提案書の「要約」ではなく「強調」

要点

プレゼンテーション審査は、提出済みの提案書を短く言い直す場ではなく、評価者に「これだけは覚えて帰ってほしい」点を強く印象づける場です。提案書を読み上げず、勝ちテーマと差別化ポイントに時間を集中させます。

公募型プロポーザルでは、一次審査(書類審査)の後に、または書類審査と組み合わせて、二次審査としてプレゼンテーションとヒアリング(質疑応答)を行う例が多く見られます。評価者はすでに提案書を読んでいるか、手元に置いて聞いています。そこで提案書と同じ内容を同じ順番で話すと、評価者にとって新しい情報がなく、印象に残りません。プレゼンの役割は、提案書の中で評価を左右するポイントに評価者の注意を集めることです。

提案書を読み上げない

提案書の文章をスライドに貼り付け、それを読み上げる形式は最も避けるべきパターンです。評価者は話を聞くより先に文字を読み終えてしまい、話し手への注目が失われます。

  • 悪い例: 提案書の目次どおりに「1. 業務の理解度」「2. 実施方針」…と全項目を均等に説明し、各スライドには提案書の本文がそのまま載っている。
  • 良い例: 冒頭1分で「本提案の核心は、窓口の待ち時間を半分にする事前入力の仕組みです」と勝ちテーマを示し、その実現手段と根拠を3点に絞って説明する。詳細は「提案書○ページに記載しています」と案内する。

なお、募集要項やプレゼンテーションの実施要領で「提出した提案書に沿って説明すること」「提出書類以外の資料の使用を禁止する」と定められている場合があります。この場合、新しい資料は作れませんが、提案書のどのページを、どの順番で、どこを強調して説明するかは工夫できます。説明に使うページをあらかじめ決め、ページ番号を口頭で示しながら話すと、評価者は手元の提案書で該当箇所を追えます。

勝ちテーマと差別化に絞る

プレゼンで扱う内容は、次の3点を優先します。

  1. 勝ちテーマ(提案コンセプト):提案全体を一言で表す主張。冒頭と締めくくりで2回言います。
  2. 差別化ポイント:他社も書きそうな内容ではなく、自社だけが具体的に示せる手順・体制・実績。
  3. 配点の大きい評価項目の根拠:採点表で配点が大きい項目について、評価者が点を付けやすい具体的な数値や手順を示します。

配点の小さい項目や、どの社も同じ内容になりやすい項目(会社概要、一般的なセキュリティ認証など)は、プレゼンでは触れないか、ひと言で済ませます。

よくある質問

Q書類審査で高得点だったと思われる項目も、プレゼンで繰り返すべきですか。

A

繰り返す価値があるのは、勝ちテーマと直結する項目です。書類で十分伝わっている項目に時間を使うより、書類だけでは伝わりにくい「実際に動く様子」や「担当者の熟練度」を見せることに時間を使うほうが効果的です。

9-2時間配分と話す人

要点

プレゼンの持ち時間は募集要項で決まっており、超過すると途中で打ち切られることがあります。時間配分を事前に決め、配置予定の管理責任者が中心となって話し、本番と同じ条件でリハーサルを重ねます。

自治体のプロポーザルでは、「プレゼンテーション20分以内、ヒアリング10分程度」のように、説明と質疑の時間を分けて定める例が多く見られます。また、出席者を「5名以内」「管理責任者を含む○名以内」などと制限する例もあります。時間と人数は案件ごとに異なるため、必ず募集要項で確認します。

時間配分の目安

持ち時間20分の場合、次のような配分が1つの目安になります。

区分 時間の目安 内容
導入 2分程度 勝ちテーマの提示、発注者の課題の確認
本論 13分程度 差別化ポイント3点、配点の大きい評価項目の根拠
まとめ 2分程度 勝ちテーマの再提示、効果と約束
予備 3分程度 機器トラブルや話の遅れへの備え

導入・本論・まとめの合計は17分程度で、残りの3分程度を予備とします。

予備時間を残しておくことが重要です。時間ちょうどに収まる原稿は、本番の緊張や機器の切り替えで超過しやすくなります。

  • 悪い例: 持ち時間20分に対し、リハーサルで19分50秒だった原稿をそのまま本番で使い、最後のまとめに入る前に時間切れになった。
  • 良い例: 本番の目標を17分に設定し、時間が押した場合に省略するスライドを事前に決めておいた。

配置予定者(管理責任者)が話す意味

評価者は、プレゼンを通じて「この人たちに任せて大丈夫か」を見ています。契約後に実際に業務を担う管理責任者や主任担当者が話すと、提案内容と実施体制が一致していることが伝わります。

  • 悪い例: プレゼンが得意な営業部長がすべて説明し、質疑で業務の詳細を聞かれると「担当者に確認します」と答えた。
  • 良い例: 管理責任者が本論を説明し、技術的な質問には主任担当者が答える役割分担を事前に決めていた。営業担当は冒頭の挨拶のみ。

募集要項で出席者を提案書に記載した配置予定者に限定している場合もあります。誰が出席できるかを確認し、出席者全員に話す役割を持たせます。

リハーサルの方法

リハーサルは、少なくとも2回、本番と同じ条件で行います。

  1. 時間を計る:ストップウォッチで区分ごとの所要時間を記録し、配分を調整します。
  2. 評価者役を立てる:社内の別部署の人に評価基準と採点表を渡し、評価者役として聞いてもらいます。
  3. 質疑まで通す:説明だけでなく、想定質問を評価者役から投げてもらい、回答役の分担を確認します。
  4. 機器を本番と同じにする:会場の機器(プロジェクター、接続端子など)の条件を確認し、同じ条件で投影を試します。

よくある質問

Q出席者が当日病気で欠けた場合はどうすればよいですか。

A

代理出席の可否や手続きは募集要項で定められていることがあります。定めがなければ、分かった時点ですぐに発注者の担当窓口へ連絡し、指示を受けます。無断で別の人が出席すると、指示違反として扱われるおそれがあります。

9-3想定質問の作り方と答え方

要点

ヒアリングでの受け答えは、提案書の記載が本当に実行できるかを確かめる場です。想定質問リストを事前に作り、「結論 → 根拠 → 確認」の順で短く答える練習をします。答えられない質問には、ごまかさず誠実に対応します。

ヒアリングで評価者が聞くのは、提案書の中で「曖昧な点」「実現性が疑わしい点」「費用との関係が見えない点」です。質問の答え方次第で、書類審査の印象が上がることも下がることもあります。

想定質問リストの作り方

想定質問は、評価基準の項目ごとに洗い出します。社内の別部署の人に提案書を読んでもらい、「評価者ならどこを突くか」を出してもらうと、作成者が気づかない弱点が見つかります。

評価項目 想定質問の例 回答の要点 回答者
業務の理解度 本市の課題をどう捉えていますか 課題3点と、その根拠となる計画・データ 管理責任者
実施方針 職員の負担はどの程度増えますか 職員の作業時間の見込みと、負担軽減策 管理責任者
実施体制 管理責任者が不在のときは誰が対応しますか 代理者の氏名・役割、連絡体制 管理責任者
スケジュール 開始が1か月遅れた場合でも納期に間に合いますか 前倒し可能な工程と、短縮できる作業 主任担当者
独自提案 この提案は提案上限額(見積額)の範囲内ですか 範囲内か追加費用かを明言 管理責任者
類似業務実績 類似業務で苦労した点は何ですか 具体的な課題と、それをどう解決したか 主任担当者
見積 見積のこの項目の内訳を教えてください 工数・単価の考え方 管理責任者(積算の考え方を事前に共有)

「苦労した点」「失敗した経験」のような質問は、取り繕うより、具体的な課題と対処を話すほうが信頼につながります。

答え方:結論 → 根拠 → 確認

質疑応答は、次の3段階で答えます。

  1. 結論:最初の一文で質問への答えを言い切ります。
  2. 根拠:理由や具体例を1〜2点だけ添えます。
  3. 確認:「ご質問の趣旨に沿っていますでしょうか」と確認し、ずれていれば補足します。
  • 悪い例: 「スケジュールについてですが、当社としましては、これまでにも多くの案件で……」と経緯から話し始め、結論が最後まで出てこない。
  • 良い例: 「はい、間に合います。データ移行と研修準備を並行して進めることで2週間、操作検証の一部を前倒しすることでさらに2週間、合わせて1か月を短縮できるためです。提案書の工程表、12ページに記載しています。お答えになっていますでしょうか。」

ヒアリングの時間は限られています。1問あたりの回答は1分以内を目安にし、多くの質問に答えられるようにします。

答えられない質問への対応

その場で答えられない質問を受けた場合、推測で答えたり、できない約束をしたりしてはいけません。誤った回答や過大な約束は、契約後のトラブルや信頼の失墜につながります。

  • 悪い例: 既存システムとの連携方法を問われ、確認していないにもかかわらず「問題なく連携できます」と答えた。
  • 良い例: 「現時点では既存システムの仕様を確認できていないため、確実なことは申し上げられません。契約後の最初の2週間で仕様を確認し、連携方式をご提案します」と、分からないことと、その後の対応を分けて答えた。

後日回答を認めるかどうかは案件によって異なるため、「後ほど書面で回答してよいか」はその場で確認します。

9-4オンライン審査の注意点

要点

オンラインでプレゼンやヒアリングを行う場合は、通信・機器・画面共有の不具合がそのまま評価に影響します。事前の接続確認と、トラブル時の代替手段を用意したうえで臨みます。

近年は、遠方の事業者への配慮や悪天候への備えとして、Web会議システムを使ったプレゼンテーション・ヒアリングを認める自治体があります。対面かオンラインかは発注者が指定する場合と、事業者が選べる場合があり、使用するWeb会議システムも発注者が指定する例が多く見られます。通信環境は事業者側で用意することが前提とされている例が多いため、接続不良は自社の責任として扱われる可能性があります。

通信・画面共有の事前確認

本番前に、次の項目を確認します。

  1. 指定のWeb会議システムで接続できるか:社内のセキュリティ設定で特定のシステムが使えない場合があります。情報システム担当に事前に確認します。
  2. 発注者が接続テストの機会を設けているか:設けられている場合は必ず参加します。
  3. 通信回線は安定しているか:可能であれば有線LANで接続し、予備としてモバイル回線も用意します。
  4. 画面共有の手順:資料を共有するのは誰か、ファイルはどこに置いておくか、通知のポップアップが映り込まない設定になっているかを確認します。
  5. トラブル時の連絡先:接続が切れた場合に連絡する電話番号を、発注者の案内から控えておきます。
  • 悪い例: 本番直前に会議システムのアップデートが始まり、接続が開始時刻に間に合わなかった。
  • 良い例: 前日に同じ端末・同じ回線で接続テストを行い、本番30分前には端末を起動し、アップデートやメール通知を停止しておいた。

カメラ・音声・資料の見せ方

オンライン審査では、評価者が見ているのは画面の中の小さな映像と、共有された資料だけです。

  • カメラ:話し手の顔が明るく、正面から映るようにします。背景には社名やロゴが映り込まないようにします。匿名審査の場合、社名が分かる背景や服装は禁止事項に当たることがあります。
  • 音声:ノートパソコンの内蔵マイクより、外付けのマイクやヘッドセットのほうが聞き取りやすくなります。複数人が同じ部屋から参加する場合は、ハウリングを防ぐため、マイクとスピーカーを1台に集約します。
  • 資料:画面共有では資料が小さく表示されることがあるため、文字は大きく、1画面の情報量は少なくします。どのページを説明しているかを口頭で伝え、評価者が手元の提案書と照らし合わせられるようにします。

よくある質問

Qオンライン審査中に回線が切れたら失格になりますか。

A

扱いは募集要項によって異なります。再接続を待つ、電話で継続する、時間を改めるなどの対応を定めている場合があります。事前に募集要項を確認し、定めがなければ質問期間中に質問書で確認しておくと安心です。

検索でよくある疑問

Qプロポーザルのプレゼンは誰が話すべき?

A

契約後に実際に業務を担う管理責任者や主任担当者が中心になって話すのが基本です。評価者は「この人たちに任せて大丈夫か」を見ており、配置予定者が話すことで提案内容と実施体制の一致が伝わります。営業担当は冒頭の挨拶程度にとどめ、技術的な質問には主任担当者が答えるなど、出席者全員の役割を事前に決めておきます。

Qプロポーザルのプレゼン時間はどう配分する?

A

持ち時間20分の場合、導入2分程度、本論13分程度、まとめ2分程度、予備3分程度が1つの目安です。時間ちょうどの原稿は本番の緊張や機器の切り替えで超過しやすいため、目標を17分程度に設定し、押した場合に省略するスライドを決めておきます。時間と人数の条件は案件ごとに異なるため、募集要項で確認します。

Qヒアリングで答えられない質問をされたらどうする?

A

推測で答えたり、できない約束をしたりせず、分からないことと、その後の対応を分けて答えます。例えば「既存システムの仕様を確認できていないため確実なことは申し上げられません。契約後2週間で仕様を確認し、連携方式をご提案します」のように伝えます。後日書面で回答してよいかは案件によって異なるため、その場で確認します。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。