STEP3骨格を設計する/5-5/提案の骨格を設計する

提案書の骨子レビューと模擬採点 ― 本文を書く前に要件充足・配点バランス・一貫性を確かめる

提案書のレビューは、本文の完成後ではなく、章立て・勝ちテーマ・一貫性表・差別化の配置をまとめた骨子の段階で行い、評価基準を使った模擬採点で弱い項目を見つけるのが効果的です。骨子での修正は、本文完成後の修正よりはるかに少ない手間で済みます。このページでは、入札・プロポーザルの提案書を対象に、骨子レビューの観点、執筆チーム以外の評価者役による模擬採点の手順、チームで書くときの分担表と文体統一ルール、提出日から逆算した工程表を紹介します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約11分

要点(結論)

本文を書き始める前に、章立て・勝ちテーマ・ストーリー・差別化の配置を「骨子」としてまとめ、関係者で合意します。骨子段階での修正は、本文完成後の修正よりはるかに少ない手間で済みます。レビューは要件充足・配点バランス・一貫性の観点でチェックリストに沿って行い、評価基準による模擬採点、分担表と文体統一ルール、公告から提出までの逆算工程表で執筆を管理します。

このページの目次
  1. 本文を書く前に骨子で合意する
  2. レビューの観点:要件充足・配点バランス・一貫性
  3. チームで書くときの分担と文体の統一
  4. 評価者の視点:ここで点が分かれる理由
  5. 骨子レビューのチェックリスト
  6. 模擬採点の方法
  7. チームで書くときの分担表
  8. 文体統一ルールの例
  9. スケジュール逆算:公告〜提出の標準工程表
  10. よくある失敗パターンと処方箋
  11. AIに書き直させるときの指示例

本文を書く前に骨子で合意する

骨子は、A4数枚程度で次の内容をまとめたものです。

  1. 勝ちテーマ(30字程度の一文)
  2. 章立て(評価項目と対応した見出し)と各章のページ配分
  3. 各章で伝える要点(見出しごとに1〜2行)
  4. 課題・原因・解決策・効果の一貫性を示す表
  5. 差別化ポイントと配置先

骨子の段階で、営業責任者、配置予定の管理責任者、技術担当者が合意しておきます。本文を書いた後に「方針が違う」と判明すると、大幅な書き直しが発生し、提出期限に間に合わなくなるおそれがあります。

レビューの観点:要件充足・配点バランス・一貫性

骨子レビューでは、次の3つの観点で確認します。

観点 確認すること
要件充足 仕様書・募集要項の必須要件がすべていずれかの章に割り当てられているか(要件一覧表との照合)
配点バランス 配点の大きい評価項目に十分なページが割かれているか、配点の小さい項目に偏っていないか
一貫性 勝ちテーマが各章に反映されているか、課題と解決策と効果が対応しているか、見積項目と提案内容が矛盾していないか

要件一覧表とは、募集要項・仕様書・評価基準の要件を1行1件で抜き出し、要件ID(文書記号+連番。例:仕様書ならS-01)・原文(抜粋)・区分(必須/任意/提案要求/参加資格/手続き/評価)・関係する評価項目・対応ページ・対応状況・担当の列を持たせた表です。骨子レビューでは、この表の「対応ページ」欄が骨子の章立てで埋まるかどうかを確認します。

チームで書くときの分担と文体の統一

章ごとに執筆者を分担すると早く書けますが、文体や用語がばらばらになりやすくなります。分担の前に、用語集(発注者の呼び方、事業名、システム名、自社の呼び方)、文体ルール(です・ます調、1文の長さ、箇条書きの記号、数字の表記)、最終編集者(全章を通読し、表現と論理を統一する責任者1人)の3つを決めておきます。最終編集者は、勝ちテーマが各章で同じ意味で使われているか、章と章の間で数値や体制の記述が食い違っていないかを確認します。分担表と文体統一ルールの具体例は、この節の後半に示します。

評価者の視点:ここで点が分かれる理由

骨子レビューを省くと、評価者の目には次の形で表れます。章によって文体が違う(ある章は「〜します」、ある章は「〜と考えられる」)、同じ事業を章ごとに違う名前で呼ぶ、実施体制の章の人数と工程表の人数が合わない、見積書にある項目が提案本文にない。評価者はこれらを「社内で統一できていない提案者が、受注後に発注者と統一した仕事ができるのか」という不安として受け取り、実施体制や実現性の項目で段階を下げます。

逆に、骨子で合意した提案書は、どの章を開いても同じテーマが同じ言葉で流れており、数値も人数も一致しています。評価者はこれを「準備の質」として感じ取り、合議の場で「全体がよくまとまっていた」という評価につながります。点が分かれるのは、文章の巧拙より先に、骨子段階で矛盾を潰したかどうかです。

骨子レビューのチェックリスト

骨子レビューは、骨子(A4数枚)と評価基準・要件一覧表を手元に置き、次の項目を順に確認します。

章立て

  • 章の見出しが評価項目の名称と順番に一致している
  • 節の見出しが評価の着眼点と一致している
  • 評価項目に対応しない章がない
  • 指定様式がある場合、様式の順番・ページ数・枠を守っている

勝ちテーマ

  • 30字程度で、発注者の課題と解決後の結果が入っている
  • 各章の要点に、テーマを章の内容で言い換えた1行がある
  • 発注者名を入れ替えると成り立たない(固有の課題が入っている)

要件充足

  • 要件一覧表の必須要件がすべて章・節に割り当てられている
  • 「〜が望ましい」の任意要件も、対応するものは割り当てられている

配点バランス

  • ページ配分が配点比とおおむね一致している(配点の小さい項目に偏っていない)
  • 差別化ポイントの主配置が配点の大きい項目にある

一貫性

  • 一貫性表の各行が課題→原因→解決策→効果→根拠で横一列につながっている
  • 実施体制の人数・役割と工程表の人数・期間が一致している
  • 見積書の項目と提案本文の作業内容が一対一で対応している
  • 効果の数値に根拠があり、契約期間内に収まっている

差別化

  • 差別化ポイントが主配置の章で見出しになる計画である
  • 差別化ポイントに根拠が付いている
  • 追加費用・発注者負担が生じる提案はその旨を明記する計画である

模擬採点の方法

骨子段階で、評価基準を使って模擬採点を行うと、本文を書く前に弱い項目が分かります。

手順1:評価者役を決める 執筆チーム以外の社内の人(できれば自治体業務の経験者)を1〜2名選びます。社外の協力者がいれば理想的です。

手順2:渡すもの 評価基準表、骨子(章立て・各章の要点・一貫性表・差別化の配置)、仕様書の背景・目的の部分だけを渡します。本文はまだないため、評価者役は「この骨子で本文を書いたら、各項目で何段階が付きそうか」を判断します。

手順3:採点表を作る 評価項目ごとに、5段階(5:特に優れている(他社より明らかに優れている)/4:優れている/3:標準/2:やや劣る/1:劣る(記載がないに等しい))で点を付け、理由を1行書いてもらいます。段階を配点に換算して合計点を出します。

評価項目 配点 段階(1〜5) 換算点 理由(1行)
業務の理解度 20 4 16 計画の目標値との差で課題を書いている
実施方針・実施方法 25 3 15 手順はあるが、原因との対応が2行目で切れている
実施体制 15 4 12 専任・副責任者の体制は明確。経歴の根拠が未記載
独自提案 15 2 6 評価項目との対応が不明。追加費用の有無が未記載
類似業務の実績 10 3 6 同規模の実績はあるが結果の数値がない
合計 85 ― 55 見積価格(15点)は別紙のため模擬採点の対象外

換算点は、段階÷5×配点で計算します(例:配点20点で段階4なら4÷5×20=16点)。

手順4:3以下の項目を直す 段階3以下が付いた項目は、骨子の時点で要点・一貫性表・差別化の配置を直します。理由の欄に書かれた言葉が、直すべき箇所そのものです。

手順5:本文完成後にもう一度行う 本文完成後に同じ評価者役で再採点し、骨子段階からの変化を確認します。骨子で4だった項目が本文で3に下がっていれば、執筆中に骨子から逸れた証拠です。

チームで書くときの分担表

分担表は、章ごとに執筆者・レビュー者・提出物・期限を決めた表です。執筆者とレビュー者は必ず別の人にします。

章(評価項目) 配点 ページ 執筆者 情報提供者 レビュー者 初稿期限 修正稿期限
1. 業務の理解度 20 4 営業担当 事前調査担当 管理責任者(予定) 公告後10日 公告後17日
2. 実施方針・実施方法 25 6 管理責任者(予定) 技術担当 営業担当 公告後12日 公告後17日
3. 実施体制 15 3 営業担当 総務(経歴・資格) 管理責任者(予定) 公告後10日 公告後17日
4. 独自提案 15 4 技術担当 管理責任者(予定) 営業責任者 公告後12日 公告後17日
5. 類似業務の実績 10 2 総務 営業担当 営業責任者 公告後10日 公告後17日
見積書 15 別紙 営業責任者 技術担当 経理 公告後14日 公告後17日
全体統合・対応表 ― 1 最終編集者 全員 営業責任者 ― 公告後19日

管理責任者(予定)が実施方針の章を自分で書くと、ヒアリングや受注後の説明と提案書の内容が一致しやすくなります。

文体統一ルールの例

分担執筆の前に、次のようなルール表を1枚配ります。

項目 ルール
文体 です・ます調。「〜と考えられる」「〜であろう」は使わない
語尾 約束できることは「〜します」。できないことは条件を付けて「〜の場合は〜します」
禁止語 「努めます」「検討します」「可能な限り」「しっかり」「徹底」「豊富な」「最適な」「最新の」
1文の長さ 60字以内を目安。読点は1文に3個以内
発注者の呼称 「貴市」で統一(様式で「本市」が指定されていればそれに従う)
自社の呼称 「当社」。匿名審査の場合は「提案者」
事業名・システム名 募集要項の正式名称を初出で使い、以降は用語集で決めた略称
数字 半角。桁区切りあり。単位は「分」「時間」「件」「%」で統一
箇条書き 「・」で統一。手順は「①②③」
見出し 評価項目名そのまま+副題は「―」でつなぐ
図表 図1・表1の通し番号。タイトルはメッセージ文(「体制図」ではなく「2名専任体制で即日対応」)

スケジュール逆算:公告〜提出の標準工程表

自治体のプロポーザルは、公告から提出まで3〜4週間程度とされる例が多く(自治体のガイドラインには、公募開始から提出期限まで原則として1か月以上を確保するよう努めると定める例もあります)、質問受付の締切と参加表明の締切が途中に入ります。提出日から逆算して工程を組みます。以下は公告から提出締切まで28日の場合の例です(日数は目安であり、案件ごとに募集要項で確認します)。

時期 工程 成果物 担当
公告〜2日目 募集要項・仕様書・評価基準の読み込み、参加判断 要件一覧表、参加判断の記録 営業責任者
〜4日目 事前調査(計画書・議会答弁・予算・前年度成果物) 課題リスト(出典付き) 事前調査担当
〜5日目 参加表明書の提出(締切が早い場合は2日目まで) 参加表明書 総務
〜6日目 質問書の提出(締切は募集要項で確認) 質問書 営業担当
〜7日目 骨子作成(章立て・勝ちテーマ・一貫性表・競合分析・差別化配置) 骨子(A4数枚) 営業担当+管理責任者(予定)
8日目 骨子レビュー会議と模擬採点、分担表・文体ルールの配布 合意済み骨子、分担表 全員
〜12日目 各章の初稿執筆(質問回答の公表があれば反映) 各章初稿 各執筆者
〜14日目 相互レビュー、見積書の作成 レビュー指摘一覧、見積書案 レビュー者、営業責任者
〜17日目 修正稿、図表作成 各章修正稿、図表 各執筆者
〜19日目 全体統合、文体統一、対応表のページ番号確定 統合版 最終編集者
〜21日目 第三者による模擬採点(本文版)、要件一覧表との最終照合 採点表、照合結果 社外協力者または別部署
〜23日目 最終修正、見積と本文の整合確認 最終版 最終編集者、営業責任者
〜25日目 提出書類一式の確認(様式・部数・押印・添付・ページ数・匿名性) 提出チェック表 総務
〜26日目 印刷・製本・電子データ作成 提出物 総務
27日目 提出(締切の前日) 提出控え 総務
28日目 締切日(予備日) ― ―

工程表で最も重要なのは、骨子レビュー(8日目)を動かさないことです。骨子が遅れると、執筆・レビュー・統合のすべてが圧縮され、最終照合が省かれて失格のリスクが上がります。公告から提出まで14日しかない案件では、各工程を半分にするのではなく、骨子作成と骨子レビューを3日目までに終え、執筆期間を確保します。

よくある失敗パターンと処方箋

失敗パターン 何が起きるか 処方箋
骨子を作らず各自が執筆を始める 章ごとに方針が違い、統合で大幅書き直し 骨子レビューを工程表に固定し、合意前の執筆を禁止する
営業だけで骨子を決め、管理責任者(予定)が関わらない ヒアリングで本人が答えられない、受注後に「書いていない」と揉める 管理責任者(予定)を骨子作成と実施方針の執筆に入れる
執筆者とレビュー者が同じ人 自分の論理の飛躍に気づかない 分担表で執筆者とレビュー者を別にする
最終編集者を決めない 文体・用語・数値の不一致が残る 統合の責任者を1人決め、統合期間を2日以上取る
対応表のページ番号を初稿時点で書く 最終版でずれる 統合完了後に対応表を更新する工程を置く
見積書を本文と別の人が別の時期に作る 見積項目と提案内容が食い違う 見積作成を相互レビューと同じ時期に置き、整合確認の工程を設ける
模擬採点を省く 弱い項目に気づかないまま提出 骨子段階と本文完成後の2回、評価基準で採点してもらう

AIに書き直させるときの指示例

あなたは自治体プロポーザルの評価者です。以下の【評価基準】と【骨子】を読み、
評価項目ごとに5段階(5:特に優れている(他社より明らかに優れている)/4:優れている/3:標準/2:やや劣る/1:劣る(記載がないに等しい))で模擬採点してください。
ルール:
1. 項目ごとに段階・換算点(段階÷5×配点)・理由(1行)を表にする
2. 理由は「何が書かれていれば上の段階になるか」を具体的に書く
3. 骨子の中で、章と章の間で矛盾している箇所(人数・期間・数値・用語)を列挙する
4. 仕様書の必須要件のうち、骨子のどの章にも割り当てられていないものを列挙する
5. 最後に、段階3以下の項目を上げるための修正案を優先順に3つ示す
【評価基準】(ここに貼り付け)
【骨子】(ここに貼り付け)
【仕様書の必須要件一覧】(ここに貼り付け)

よくある質問

Q1人で提案書を書く場合も骨子レビューは必要ですか。

A

必要です。1人で書く場合こそ、骨子の段階で社内の別の人に読んでもらうと、自分では気づけない要件漏れや論理の飛躍が見つかります。評価基準と骨子だけを渡して「どの項目で点が取れそうか」を聞くだけでも効果があります。

Q骨子レビューで意見が割れたとき、何を基準に決めますか。

A

評価基準の配点です。意見が割れた箇所について「この案はどの評価項目の何点に効くか」を双方が説明し、配点の大きい項目に効く案を採用します。それでも決まらないときは、発注者の資料(計画書・議会答弁)に書かれた課題に近い案を採用します。社内の好みや自社の都合では決めません。

Q工程表どおりに進まず、骨子レビューの時間が取れません。

A

骨子レビューは会議で1時間、模擬採点は1人30分程度が目安です。削るなら執筆の推敲時間であって、骨子レビューではありません。骨子で潰せる矛盾は、本文完成後には数日かけても直しきれないことが多いからです。

検索でよくある疑問

Q提案書の模擬採点はどうやって行う?

A

執筆チーム以外の社内の人(できれば自治体業務の経験者)1〜2名を評価者役にし、評価基準表・骨子・仕様書の背景と目的の部分を渡します。評価項目ごとに5段階で点を付け、理由を1行書いてもらい、換算点は段階÷5×配点で出します。段階3以下の項目は骨子の時点で直し、本文完成後にもう一度採点します。

Q提案書の骨子レビューでは何を確認する?

A

3つの観点で確認します。要件充足は、仕様書・募集要項の必須要件がすべていずれかの章に割り当てられているかを要件一覧表と照合します。配点バランスは、配点の大きい評価項目に十分なページがあるかです。一貫性は、勝ちテーマの反映、課題と解決策と効果の対応、実施体制と工程表の人数、見積書と本文の作業内容の一致を確かめます。

Qチームで提案書を書くとき文体をそろえるには?

A

分担の前に、用語集、文体ルール、全章を通読して統一する最終編集者の3つを決めます。文体ルールの例は、です・ます調、約束できることは「〜します」、「努めます」「検討します」などの禁止語、1文60字以内・読点2つまで、発注者の呼称「貴市」の統一などです。執筆者とレビュー者は別の人にします。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。