STEP5評価項目ごとに書く/7-7/評価項目別の書き方
独自提案の書き方 ― 評価基準に紐づき、費用の扱いが明確で、実現の裏付けがある付加価値提案
独自提案は、業務理解で示した課題に直結し、「見積額に含む(追加費用なし)」か「オプション・別途見積」かを見出しで明記し、類似業務での実施例などの裏付けがあるときに評価されます。評価者は「この業務の目的にどれだけ効き、本当に実行でき、追加負担はないか」で採点しており、「〜も可能です」は約束ではないため採点の対象になりません。この節では、創意工夫・提案性として配点される付加価値提案の3条件、評価されない独自提案の典型、無償・有償の書き分けと提案上限額との関係、提案1件ごとの記述の型を解説します。
要点(結論)
独自提案は「仕様の範囲内(追加費用なし)か、追加費用が必要か」を必ず明記します。評価されるのは、発注者の課題に直結し、実現性と効果の根拠がある提案です。
このページの目次
独自提案は「創意工夫」「提案性」「独自性」などの名称で配点されます。国土交通省のガイドラインでは、技術提案について的確性・実現性・独創性の観点で評価する考え方が示されており、独創性だけでなく、与条件との整合(的確性)や裏付け(実現性)も問われる点が参考になります。
評価者の視点:ここで点が分かれる理由
独自提案に相当する評価項目の着眼点は、「業務の目的達成に資する独自の工夫があるか」「提案の実現性・有効性が認められるか」「発注者の負担や費用を増やさずに効果を高める工夫があるか」といった形で示されるのが一般的です。つまり評価者は、「面白い提案か」ではなく「この業務の目的にどれだけ効き、本当に実行でき、追加負担はないか」の3点で採点しています。
満点に近い答案は、業務理解で示した課題に対応する独自提案が1〜3件あり、それぞれに「何をするか・なぜ効くか・類似の実施例・費用の扱い」がそろっています。中間の答案は、提案の着想はよいが、効果の根拠や費用の扱いが曖昧で、評価者が「本当にやるのか」と疑いながら読む状態です。低得点の答案は、自社製品の宣伝、仕様書の内容の言い換え、あるいは「〜も可能です」と並べるだけで実施の約束がないものです。評価者から見ると、「可能です」は提案ではなく、採点の対象になりません。
仕様の範囲内か追加費用かを明記する
追加費用の扱いが不明な独自提案は、評価者を困らせます。採点時に「この提案は見積額に含まれているのか」を判断できず、契約後のトラブルの種にもなるためです。
悪い例: 付加価値として、AIチャットボットによる24時間問い合わせ対応を提案します。
良い例: 【独自提案1(見積額に含む・追加費用なし)】よくある問い合わせ上位50件のFAQを作成し、申請画面に掲載します。 【独自提案2(オプション・別途見積)】問い合わせ対応の自動化として、FAQを学習させた自動応答の試行導入を提案します。費用と効果の見込みは参考資料に示します。採否は貴市の判断とし、本提案の見積額には含みません。
評価される独自提案、されない独自提案
| 評価されやすい独自提案 | 評価されにくい独自提案 |
|---|---|
| 業務理解で示した課題の解決に直結する | 課題と関係のない自社製品の紹介 |
| 類似業務での実施例や効果の根拠がある | 実績や根拠のない新技術の羅列 |
| 発注者の負担を増やさない | 職員の追加作業が多く必要になる |
| 契約期間内に実現できる | 次年度以降の予算を前提にしている |
| 費用の扱いが明確 | 費用の扱いが不明 |
独自提案の数は1〜3件に絞るのが目安です。多すぎると、本体業務への集中度が疑われることがあります。
独自提案の3条件
評価される独自提案は、次の3条件を同時に満たしています。1つでも欠けると点になりにくいため、提案を書く前に条件を確認してください。
| 条件 | 内容 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 1 評価基準に紐づく | 業務の目的・評価項目のどれに効く提案かが説明できる | 「この提案は評価項目◯◯の『〜』に対応する」と一文で言えるか |
| 2 仕様の範囲内または費用明示 | 見積額に含むなら「追加費用なし」、含まないなら「オプション・別途見積」と明記する | 見積書の項目と対応しているか |
| 3 実現性の裏付け | 類似業務での実施例、試算、体制上の担保がある | 「過去に〜で実施し、〜の効果があった」と書けるか |
無償・有償の明示方法と提案上限額との関係
費用の扱いは、提案の見出しに必ず入れます。無償(見積額に含む)の場合は、さらに見積内訳のどの項目に含まれているかを書くと、後から「サービスだと思っていた」という行き違いを防げます。有償(オプション)の場合は、本体の見積額とは分けて参考見積を示し、「採否は発注者の判断」「本提案の見積額には含まない」の2点を明記します。
提案上限額との関係では、見積額に含む独自提案を増やしすぎると、本体業務の積算が圧迫され、見積の妥当性を疑われることがあります。無償の独自提案は、本体業務の作業と重なる範囲(既存の成果物を活用して作れる資料、既存の定例会で実施できる報告など)に絞るのが現実的です。なお、募集要項でオプション提案が禁止または制限されていなければ、オプションを「採用すれば上限額を超える」形で示すこと自体は問題ありませんが、本体の見積額が上限額に収まっていることが前提です。
悪い例: 当社独自のノウハウにより、各種追加サービスを無償で提供することも可能です。
良い例: 【独自提案1(見積額に含む・追加費用なし)】効果測定報告書の作成にあわせ、報告書の要約を住民向け広報用に1ページで作成します。報告書と同じデータを使うため追加作業は小さく、見積内訳「効果測定」の工数に含めています。 【独自提案2(オプション・別途見積:参考額○○円)】次年度以降の継続測定のため、月次の利用状況を自動集計するダッシュボードの構築を提案します。採否は貴市の判断とし、本提案の見積額には含みません。
なぜ良いか: 「可能です」ではなく実施を約束する書き方になり、無償分は見積のどこに含むか、有償分は参考額と採否の主体が明記されています。評価者は迷わずに採点できます。
この項目の標準構成(テンプレート)
独自提案の項目は、「独自提案の考え方(1〜2文:業務理解で示した課題のどれに、どの方向で付加価値を加えるか)」の後に、提案を1件ずつ次の型で並べます。この型で書くと、評価者が「対応する課題→内容→効果→費用」を一度で確認できます。
【独自提案n(費用の扱い:見積額に含む/オプション・別途見積)】提案の名称 ・対応する課題:業務理解で示した課題◯「〜」 ・提案内容:何を、いつ、誰が行うか(2〜3文) ・期待効果:発注者にとっての効果を、可能なら数値の目安で ・実現性の根拠:類似業務での実施例、試算の前提、必要な体制 ・発注者側の負担:確認作業の有無と所要時間(「追加作業なし」と言える場合は明記)
書き換え手順(チェックリスト)
- 独自提案は1〜3件に絞ったか
- 各提案が業務理解で示した課題のどれに対応するかを明記したか
- 対応する評価項目(着眼点)を一文で言えるか
- 費用の扱い(見積額に含む/オプション・別途見積)を見出しに入れたか
- 無償分は見積内訳のどの項目に含むかを書いたか
- 有償分は参考額と「採否は発注者の判断」を書いたか
- 実現性の根拠(実施例・試算・体制)を書いたか
- 発注者側の追加作業の有無を書いたか
- 契約期間内に完了する提案になっているか(次年度予算を前提にしていないか)
- 「〜も可能です」「〜できます」で終わる文を「〜します」に直したか
業務種別ごとの例文
IT導入
悪い例: 当社の最新AI技術を活用し、貴市の業務を高度化します。当社製品◯◯の導入をお勧めします。
良い例: 【独自提案1(見積額に含む・追加費用なし)】職員向け操作研修の後に、各課の実際の申請データを使った「よくある操作ミス」の事例集を作成し、庁内ポータルに掲載します。課題B「職員の習熟度のばらつき」に対応し、研修後の問い合わせを減らします。人口規模が同程度の市での同種研修では、事例集の掲載後に問い合わせ件数が約3割減りました。
なぜ良いか: 製品名の宣伝ではなく、課題に対応する具体的な作業を約束しています。実施例の効果が数値の目安で示され、費用の扱いも明確です。
調査・計画策定
悪い例: 計画策定後のフォローアップも、ご要望があれば対応いたします。
良い例: 【独自提案1(見積額に含む・追加費用なし)】計画書の本編に加え、各施策の担当課・指標・目標値・確認時期を1枚にまとめた「進行管理シート」を作成します。課題C「策定後の進捗確認の仕組みがない」に対応し、計画書の章構成に沿って作るため追加作業は限定的です。
なぜ良いか: 「ご要望があれば」という条件付きではなく、成果物として具体的に約束しています。策定後の運用まで見据えた提案で、計画の実効性という発注者の関心に直接応えています。
イベント・広報
悪い例: SNSを活用した広報も実施可能です。
良い例: 【独自提案1(見積額に含む・追加費用なし)】開催前3週間に、貴市公式SNSで使える投稿素材(画像5点、投稿文案5本)を作成して提供します。課題A「若年層の参加が少ない」に対応し、投稿は貴市の広報担当が既存の運用ルールで行うため、職員の追加作業は投稿作業のみです。
なぜ良いか: 「可能です」を「提供します」に直し、素材の数量と発注者側の作業範囲まで書いています。発注者のSNS運用ルールを尊重する姿勢も、実現性の裏付けになります。
よくある失敗パターンと処方箋
| 失敗パターン | 評価者の受け止め | 処方箋 |
|---|---|---|
| 自社製品・サービスの宣伝になっている | 売り込みであって提案ではない | 製品名を消し、課題に対して「何をするか」に書き直す |
| 仕様外の大風呂敷(次年度の全庁展開など) | 契約期間内に実現できない | 契約期間内で完結する範囲に切り出す |
| 発注者の作業が増える提案 | 負担が増えるなら要らない | 発注者の作業を自社が引き取るか、負担の少ない形に変える |
| 費用の扱いが書いていない | 見積に含まれているのか不明 | 見出しに「見積額に含む/オプション」を明記する |
| 「可能です」「対応できます」の羅列 | 約束していないので採点できない | 実施する提案だけを「〜します」で書く |
| 本体業務の内容を独自提案として再掲 | 仕様書の言い換えで独自性がない | 仕様書に書かれていない付加価値だけを残す |
AIに書き直させるときの指示例
以下の「独自提案」の下書きを、評価者が「この業務の目的に効き、本当に実行でき、追加負担がない」と判断できる内容に書き直してください。
条件:
1. 提案は1〜3件に絞り、各提案を「見出し(費用の扱い:見積額に含む/オプション・別途見積)/対応する課題/提案内容/期待効果/実現性の根拠/発注者側の負担」の型で書く。
2. 自社製品名の宣伝、仕様書の内容の言い換え、次年度予算を前提にした提案は削除する。
3. 「〜も可能です」は「〜します」に直す。実施しないものは書かない。
4. 期待効果は添付の類似業務の実施例を根拠にし、数値は「目安」「約」を付ける。架空の実績を作らない。
5. です・ます調。発注者は「貴市」、自社は「当社」と書く。
下書き:
(ここに貼り付け)
業務理解で示した課題:
(ここに貼り付け)
類似業務の実施例:
(ここに貼り付け)
よくある質問
Q独自提案が思いつきません。何から考えればよいですか。
業務理解で挙げた課題のうち、仕様書の作業だけでは解決しきれないものを探してください。「成果物を使いやすくする工夫」「業務終了後に発注者が自走できる仕組み」「発注者の確認作業を減らす工夫」の3方向で考えると、本体業務と重なる範囲で無償提案を作りやすくなります。
Qオプション提案を出すと、高い会社と思われませんか。
本体の見積額と明確に分け、「採否は発注者の判断」と書いてあれば、本体の価格評価には含めない扱いとする例が多く見られます。ただし、オプション提案の可否や扱いは募集要項で確認してください。むしろ、発注者が次年度の予算要求を検討する材料になり、関係構築につながることがあります。
Q独自提案は何件まで書けますか。
様式に上限がなければ1〜3件が目安です。4件以上になると、本体業務への集中度や無償分の積算の妥当性を疑われやすくなります。
検索でよくある疑問
Q独自提案を「〜も可能です」と書くと評価されないのはなぜですか?
「可能です」は実施の約束ではないため、評価者は採点の対象にできないからです。低得点の答案には、自社製品の宣伝や仕様書の言い換えとともに、「〜も可能です」と並べるだけのものが目立ちます。実施する提案だけを「〜します」で書き、実施しないものは書かないようにすると、評価者が迷わずに採点できます。
Q無償の独自提案を増やせば有利になりますか?
増やしすぎは逆効果になることがあります。見積額に含む独自提案が多いと本体業務の積算が圧迫され、見積の妥当性を疑われるためです。無償の提案は、既存の成果物を活用して作れる資料や既存の定例会で実施できる報告など、本体業務の作業と重なる範囲に絞り、見積内訳のどの項目に含むかを明記するのが現実的です。
Q独自提案に自社製品やサービスを入れてもよいですか?
課題と関係のない自社製品の紹介は、売り込みであって提案ではないと受け止められ、評価されにくくなります。製品名を前面に出すのではなく、業務理解で示した課題に対して「何をするか」を書き、類似業務での実施例や効果の根拠、発注者側の負担の有無を添えて、契約期間内に実現できる範囲で示してください。
参考資料
法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。
- 国土交通省「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定)
- 国土交通省「技術調査:入札・契約」
- 大阪市「大阪市公募型プロポーザル方式ガイドライン」(令和4年3月)
- 京都府「京都府公募型プロポーザル方式 事務マニュアル」(令和5年11月)
- 守口市「守口市公募型プロポーザル方式 事務マニュアル」(令和7年4月)
- 福島県「公募型プロポーザル方式評価項目及び評価基準表(別表1)」(令和3年2月、道路改築事業CM業務委託の個別案件)
- 周南市「プロポーザル方式における評価基準(別紙1)」
- 横浜市「横浜市委託に関するプロポーザル方式運用基準」(平成17年4月制定、令和3年6月最近改正)
- 総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和8年3月27日改定)
- 総務省「地方公共団体における情報セキュリティ監査に関するガイドライン」(令和7年3月改定)
- 総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改定等に係る検討会」
- 内閣官房 国家サイバー統括室(旧 内閣サイバーセキュリティセンター)・デジタル庁・総務省・経済産業省「ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)公式サイト」
- 内閣官房 国家サイバー統括室(旧 内閣サイバーセキュリティセンター)「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」
- 総務省「地方公共団体のISMAP制度の取扱いについて」(令和6年12月、規制改革推進会議資料)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)
- e-Gov法令検索「行政手続法」(平成5年法律第88号)
- 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)を含む)
- 個人情報保護委員会事務局「個人情報保護法の概要(地方公共団体職員向け)」(令和5年4月)
- 個人情報保護委員会「地方公共団体等における令和3年改正個人情報保護法の施行に向けた本年度の取組及び次年度の対応の方向性について」(令和5年3月)
- 日本規格協会「JIS Q 27001:2023 情報セキュリティマネジメントシステム―要求事項」(2023年)
- 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針」(2023年12月)