STEP4伝わる文章で書く/6-3/評価者に伝わる文章術
提案書を具体的に書く ― 「迅速に」「適切に」を数値・固有名詞・実績・手順に置き換える方法
提案書を具体的に書くとは、「迅速に」「適切に」などの形容詞・副詞を、数値・固有名詞・実績・手順・根拠に置き換えることです。抽象的な記述には採点の根拠がなく評価者にとっては書いていないのと同じですが、「1時間以内に一次回答」と書けば他社と比べて点差を付けられます。このページでは、プロポーザルや総合評価の企画提案書・技術提案書で使える具体性の5要素、抽象語の言い換え一覧、数値が出せないときの代替、匿名審査での固有名詞の扱い、手順の粒度を解説します。
要点(結論)
「適切に」「十分な」「迅速に」などの形容詞・副詞を、数値・固有名詞・実績・手順に置き換えます。具体的な記述は、評価者にとって採点の根拠になり、実現性の証拠にもなります。具体性の5要素(数値・固有名詞・手順・実績・根拠)のうち評価項目ごとに3つ以上を入れ、数値が出せないときは、頻度・期限・条件・判断基準のいずれかで代替します。匿名審査の案件では、自社の商品名や社内資格名を一般名詞と機能・実績に置き換えます。
このページの目次
数値:回数・期間・人数・目標値
評価者が提案の実現性を判断するとき、最も手がかりにするのが数値です。提案書で使いやすい数値には次の種類があります。
- 回数・頻度:定例会を月1回、進捗報告を週1回
- 期間・期限:要件定義を契約後2か月以内に完了
- 人数・体制:専任3名、うち責任者1名は常駐
- 目標値:問い合わせ対応の初回回答を受付から2営業日以内
- 規模・実績:同種業務の受託件数、対象人口の規模
数値は「書けば良い」ものではなく、自社が守れる数値を書きます。守れない数値は契約後に発注者との信頼関係を損ないます。また、根拠のない目標値(たとえば効果を大きく見せるための推計)は、プレゼンテーションやヒアリングで根拠を問われたときに答えられなくなります。数値には「何を基準に」「どの期間で」をセットで書くと、根拠の説明がしやすくなります。
固有名詞:手法名・ツール名・資格名
「最新の手法で」「専用ツールを使って」「有資格者が」と書くだけでは、評価者は他社との違いを判断できません。手法・ツール・資格を固有名詞で書くと、評価者は内容を具体的に想像でき、確認もできます。
- 手法名:「ユーザーテスト」ではなく、何人を対象に、どの方法で行うのかを明記する
- ツール名:使用する工程管理ツールや分析ツールの名称と、その使い方を書く
- 資格名:「有資格者」ではなく、資格の正式名称と保有人数を書く
ただし、匿名審査(社名などの記載禁止)の案件では、自社製品名やサービス名が社名の推測につながる場合があります。募集要項の記載ルールを確認してから固有名詞を使います。
抽象語を具体語に置き換えた例
| 悪い例(抽象的) | 良い例(具体的) |
|---|---|
| 適切な体制で業務を遂行します。 | 管理責任者1名、担当者2名の計3名で実施し、責任者は類似業務を3件担当した経験を持ちます。 |
| 迅速に対応します。 | 障害の連絡を受けてから1時間以内に一次回答し、原因と対策を3営業日以内に報告します。 |
| 十分な研修を実施します。 | 操作研修を職員向けに計4回(各90分)実施し、研修後に理解度確認テストを行います。 |
| 豊富な実績があります。 | 過去5年間に同種の調査業務を6件受託し、うち3件は人口5万人規模の市町村の業務です。 |
| 住民の声を丁寧に聞きます。 | 住民ワークショップを2回(各回定員30名)開催し、意見を分類した記録を報告書に添付します。 |
良い例に共通するのは、評価者が「これなら実施できそうだ」「他社より手厚い」と判断できる材料が文中にあることです。具体性は、評価基準によく出てくる「実現性」「具体性」「妥当性」の得点に直結します。
評価者の視点:ここで点が分かれる理由
評価者が「具体性」で点を分ける理由は、抽象的な記述には採点の根拠がないからです。「迅速に対応します」という文に対して、評価者は「迅速とは何時間か」「本当にできるのか」「他社より速いのか」のどれにも答えられません。答えられない記述は、評価者にとって「書いていないのと同じ」です。一方「1時間以内に一次回答」という記述は、評価者が「1時間なら十分速い」「他社は3時間と書いている」と比較でき、点差を付ける根拠になります。
評価者の採点表には「具体的な記載があるか」「実現性があるか」という観点が多くの項目に含まれます。評価者はこれを、おおむね次のような段階で判断する傾向があります(経験則による目安です。採点基準は案件ごとに異なります)。
| 段階 | 記述の状態 | 評価者の受け取り方 |
|---|---|---|
| 1 | 抽象語のみ(適切に、十分に) | 記載なしと同等。最低点か中間点以下 |
| 2 | 項目の列挙はあるが数値・手順なし(研修を実施、体制を整備) | 「書いてはある」。中間点 |
| 3 | 数値・手順・固有名詞がある | 「実施内容がわかる」。中間点以上 |
| 4 | 数値・手順に根拠(実績・条件・判断基準)が添えられている | 「実現できる」。高得点 |
| 5 | 4に加え、他社より手厚い・独自の工夫がある | 最高点 |
段階1から3への引き上げは、抽象語を具体語に置き換える操作だけで達成できます。段階4は根拠の追加、段階5は提案内容そのものの差別化が必要です。文章術で確実に引き上げられるのは段階3までです。ただし、段階1〜2にとどまる下書きは多いため、置き換えだけでも点差が大きく変わることがあります。
もう一つの視点は、具体的な記述は「契約後の約束」として読まれるという点です。評価者は提案書の数値を、契約後に守られる水準として受け取ります。したがって数値を書くと点は上がりやすくなりますが、守れない数値を書くと契約後の信頼を失います。「守れる最大限の数値を書く」という姿勢が、評価と信頼の両方を守ります。
具体性の5要素
提案書の具体性は、次の5つの要素で構成されます。1つの段落にすべてを入れる必要はありませんが、評価項目ごとに最低3要素が含まれているかを確認します。
| 要素 | 内容 | 評価者が確認すること | 書き方の例 |
|---|---|---|---|
| ①数値 | 回数・期間・人数・目標値・規模 | 実施の水準と比較の材料 | 月1回、2か月以内、3名、2営業日以内 |
| ②固有名詞 | 手法名・ツール名・資格名・規格名 | 内容の確認可能性 | ○○法に基づく調査、△△資格保有者2名 |
| ③手順 | 作業の順序・段階・各段階の成果物 | 実現性と抜け漏れ | ①現状調査→②設計→③試行→④本稼働 |
| ④実績 | 同種・類似業務の件数・規模・時期 | 実行能力の証拠 | 過去5年に同種業務6件、うち人口5万人規模3件 |
| ⑤根拠 | 数値や手順を選んだ理由・前提条件 | 妥当性と再現性 | 同種調査の回収率(約35%)の実績値を基に、3,000世帯への配布で目標1,000票と設定 |
5要素の中で最も効果が大きいのは①数値と③手順です。この2つがあれば段階3(実施内容がわかる)に達します。④実績と⑤根拠が加わると段階4(実現できる)に上がります。②固有名詞は、匿名審査の制約に注意しながら使います。
5要素を使った段落の組み立ては、次の型に当てはめると漏れがなくなります。
[施策]は、[③手順:①〜②〜③〜]の順で、[①数値:期間・回数・人数]で実施します。
[②固有名詞:手法・資格・ツール]を用います。
[④実績:同種業務○件]で同じ手順を適用しており、[⑤根拠:その実績値・前提条件]を基に
これらの数値を設定しています。
抽象語→具体語の変換表
下書きに頻出する抽象語と、それぞれを具体語に変換する方法を表にまとめます。右列の「変換の問い」は、AIや担当者が下書きを点検するときに自分に投げかける質問です。
| 抽象語 | 変換の問い | 変換後の例 |
|---|---|---|
| 迅速に | 何時間・何営業日以内か | 受付から1時間以内に一次回答、3営業日以内に報告 |
| 適切に/適切な | 何を基準に判断するか、誰が行うか | 管理責任者が月次で確認し、基準(処理時間8分以内)を外れた場合は翌月に改善 |
| 十分な/十分に | 何回・何時間・何人か | 計4回(各90分)、全職員対象 |
| 柔軟に | どの条件のとき、どう変えるか | 繁忙期(3〜4月)は2名増員、2週間前までの要望で開催時間を変更 |
| 密に/緊密に | 何日ごとに、どの手段で | 週1回の定例会と、随時のメール・電話(当日中に返信) |
| 丁寧に | 何を・どの手順で確認するか | 交付前に別のスタッフが本人確認書類と交付物を照合(全件) |
| 確実に | 何で確認し、何が証拠になるか | 移行前後の件数と合計値を全テーブルで照合し、照合表を提出 |
| 効率的に | 何をどれだけ減らすか | 入力項目を現行の28項目から12項目に削減 |
| 積極的に | 何を何回行うか | 改善提案を月1件以上、月次報告書に記載 |
| 幅広く/多角的に | 何種類の対象・方法か | 交通事業者・医療機関・商業施設・自治会の4分野 |
| 速やかに | 何時間・何日以内か | 翌営業日までに貴市担当課へ報告 |
| 定期的に | 何日ごと・何回か | 毎月第2週、年12回 |
| 必要に応じて | どの条件のときか、誰が判断するか | 月次報告で平均待ち時間が15分を超えた場合、貴市と協議の上で増員 |
| 可能な限り | 何をどこまで行うか(上限を書く) | 契約期間内に最大3回まで無償で画面修正 |
| 最適な | 何を基準に選ぶか | 処理件数・保守費用・操作性の3基準で比較し、比較表を提出 |
| 高品質な/高い品質 | 何で測るか、誰が確認するか | 納品前に担当者以外の品質管理者が全件確認、誤記ゼロを基準 |
| 豊富な/多数の | 何件・何年・どの規模か | 過去5年に同種業務6件、人口5万人規模3件 |
| 経験豊富な | 何件・何年・どの役割か | 類似業務3件の責任者経験、業務経験12年 |
| 円滑に/スムーズに | 何を・どの段階で・誰と確認するか | 各段階の終了時に貴市と確認会を開き、承認を得てから次段階へ |
| しっかりと/きちんと | 何を・どの方法で | 記録簿に全件記載し、月次で貴市へ提出 |
| 継続的に | 何日ごとに、契約期間中に何回か | 毎月の改善提案(契約期間中12回)、契約終了時に引継書を提出 |
| わかりやすく | 誰にとって、何で確認するか | 職員5名による事前テストで操作に迷った箇所を修正 |
| 安心して/安全に | 何の対策を、どの基準で | 書類は施錠保管、持ち出し禁止、守秘義務誓約書を全員提出 |
| 寄り添って/親身に | 何を・どの頻度で行うか | 受講者ごとに月1回の個別相談(30分)を設定 |
| 徹底して/徹底します | 何を・誰が・どの頻度で確認するか | 管理責任者が週1回チェックリストで確認し、結果を月次報告 |
| 最新の | 何年版・何の規格か | 令和○年改定の○○ガイドラインに準拠 |
| 専門的な | 何の資格・何年の経験か | ○○資格保有者2名、当該分野の業務経験10年 |
変換表の使い方は、下書きを上から読み、左列の語を見つけるたびに「変換の問い」を自分に投げかけ、答えを文に書き込む、という操作です。答えが出ない場合は、その箇所に[要確認]を付けて担当者に確認します。答えを創作してはいけません。
なお、「必要に応じて」「可能な限り」のように実施の条件や範囲をぼかす語は、「〜します」で言い切る原則の「弱い文末の一覧と変換表」でも文末の問題として扱います。この表では「何を基準に・どこまで行うか」という具体性の観点から載せています。
数値が出せないときの代替
すべての記述に数値を入れられるわけではありません。「住民の満足度を高める」「職員の負担を減らす」のような成果は、提案の段階では数値にできないことがあります。そのときは、次の4つの代替手段のいずれかを使います。数値がなくても、代替手段があれば段階3(実施内容がわかる)に達します。
代替1:頻度 成果の数値が出せなくても、行動の頻度は書けます。「満足度を高めます」→「満足度アンケートを年2回実施し、結果を基に改善案を年2回提出します」。
代替2:期限 成果の時期が約束できなくても、行動の期限は書けます。「負担を減らします」→「契約後3か月以内に現行業務の作業時間を計測し、削減対象の作業を特定します」。
代替3:条件 成果が外部要因に左右される場合は、前提条件を書き、その条件下での行動を約束します。「利用率を向上させます」→「現行の申請件数の水準が続くことを前提に、周知を年4回行い、利用率を毎月集計して改善案を提示します」。
代替4:判断基準 数値目標の代わりに、何をもって達成とみなすかの基準を書きます。「わかりやすい画面にします」→「職員5名による事前テストで、全員が説明なしに申請を完了できることを、画面確定の基準とします」。
4つの代替手段は組み合わせて使えます。「満足度アンケートを年2回(頻度)、各回の実施後1か月以内に(期限)集計し、満足度が前回を下回った項目について(条件)改善案を提出し、翌回の調査で改善の有無を確認します(判断基準)」のように、1文に複数入れることで、数値目標がなくても実現性を示せます。
固有名詞の出し方と匿名審査との両立
固有名詞は、評価者が内容を確認できるという点で具体性を高めますが、匿名審査の案件では使い方に注意が必要です。匿名審査とは、評価の公平性のために、提案書に社名・ロゴ・社名を推測させる記述を禁じる方式です。募集要項に「提案書には社名を記載しないこと」「社名が特定できる表現は避けること」などと書かれていれば、匿名審査です。
固有名詞は、次の3種類に分けて扱います。
| 種類 | 例 | 匿名審査での扱い |
|---|---|---|
| A:公的な固有名詞 | 法令名、国のガイドライン名、規格名(JIS、ISO)、公的資格名 | 使ってよい。社名の推測につながらない |
| B:第三者の製品・サービス名 | 広く使われている工程管理ツール、分析ツール、クラウド基盤の名称 | 原則使ってよい。ただし自社が代理店・唯一の取扱者である場合は推測につながるため避ける |
| C:自社の製品・サービス・手法の名称 | 自社開発システムの商品名、自社の登録商標、社内手法の呼称 | 使わない。「当社のクラウド型文書管理サービス(以下「本サービス」)」のように一般名詞に置き換える |
Cの一般名詞への置き換えは、固有名詞が持っていた具体性を失わないように、名称の代わりに機能・仕様・実績を書きます。「○○システム(自社商品名)を導入します」→「当社が自治体向けに提供するクラウド型文書管理サービス(導入実績:自治体12団体、稼働率99.9%、決裁・保存・検索の3機能)を導入します」。評価者にとっては、商品名よりも機能と実績のほうが採点の根拠になります。
資格名は公的資格であればAに該当しますが、「○○(自社名)認定技術者」のような社内資格は社名を含むため使えません。公的資格に置き換えるか、「当該分野の業務経験○年」で代替します。
匿名審査でない案件でも、評価者が知らない固有名詞は具体性につながりません。ツール名を書くときは「○○(工程管理ツール。作業ごとの期限と担当者を一覧で管理し、遅延を自動で通知する)」のように、括弧で機能を添えます。
手順を書くときの粒度
手順は具体性の中心ですが、細かすぎても粗すぎても評価者には伝わりません。粒度の目安は次のとおりです。
粗すぎる手順(評価者が実現性を判断できない) 「調査→分析→計画策定」のように、仕様書の業務項目をそのまま並べただけの手順です。どの提案者が書いても同じになるため、点差が付きません。
細かすぎる手順(評価者が読み切れない) 「会議室の予約→資料の印刷→出席者への案内メール→…」のように、作業レベルまで書いた手順です。1ページに20以上の工程が並ぶと、評価者は要点を見失います。
適切な粒度(目安) 評価項目1つあたり、段階は3〜5個、各段階に「期間・成果物・確認方法」のいずれか2つ以上を添える粒度です。段階の数が6個以上になる場合は、大段階(3〜5個)と小段階(各2〜3個)の2階層に分けます。
| 段階 | 期間 | 主な作業 | 成果物 | 確認方法 |
|---|---|---|---|---|
| ①現状調査 | 契約後〜2か月 | 現行業務フローの聞き取り(全8課) | 現状業務フロー図、課題一覧 | 第1回確認会で貴市の承認 |
| ②改善案作成 | 3〜4か月目 | 他自治体事例の収集、改善案の作成 | 改善案(3案)、比較表 | 第2回確認会で1案を選定 |
| ③試行 | 5〜7か月目 | 選定案を2課で試行 | 試行結果報告書 | 作業時間の計測値で効果確認 |
| ④計画確定 | 8か月目 | 試行結果を反映し全課展開の計画化 | 業務改善計画書 | 最終確認会で貴市の承認 |
この表の粒度は、評価者が「各段階で何ができあがり、どこで発注者が確認するか」を把握できる程度です。各段階に成果物と確認方法があることで、「実現性」と「発注者との協議の機会」の両方を示せます。
手順を書く際の操作は、次のとおりです。
- 下書きの中の「〜し、〜し、〜します」という連続動作を、動詞ごとに区切ります。
- 区切った動詞を時系列に並べ、3〜5個の段階にまとめます。
- 各段階に番号を付け、期間(契約後○か月、○か月目)を添えます。
- 各段階の終わりに生まれる成果物を1つ書きます。成果物が思い付かない段階は、前後の段階に統合します。
- 各段階の終わりに発注者が確認する機会(確認会、承認、報告)を書きます。
- 段階が6個以上になった場合は、2階層に分けます。
実績の書き方
実績は「豊富な実績」「多数の自治体で」という抽象語で書かれることが最も多い要素です。実績を具体的に書くには、次の5項目を1件ごとに示します。
- 業務の種別:同種(同じ業務)か類似(近い業務)か
- 発注者の種別・規模:市町村か都道府県か、人口規模はどの程度か(匿名審査では自治体名を書かず規模だけ書く)
- 時期:何年度に実施したか(直近5年以内が目安)
- 規模:契約金額の規模、対象の件数・人数
- 担当者の役割:今回の管理責任者がその実績でどの役割を担ったか
悪い例: 当社は全国の自治体で同種業務の豊富な実績を有しており、そのノウハウを本業務に活かします。
良い例: 当社は、過去5年間(令和○年度〜令和○年度)に、人口3万〜8万人規模の市町で同種の業務改善計画策定業務を6件受託しています。うち3件は、本業務と同じく複数課(5〜10課)を対象とした業務フロー調査を含みます。本業務の管理責任者は、この3件のうち2件で管理責任者を務めました。
なぜ良いか: 良い例は期間・規模・件数・類似性・担当者の役割の5項目を示し、評価者が「同じ規模・同じ内容の経験が、同じ責任者にある」と判断できます。「全国」「豊富」「ノウハウ」は、評価者が確認できないため削除しています。
業務種別ごとの例文
ITシステム導入
悪い例: 導入後も手厚いサポート体制で、万一の障害にも迅速かつ的確に対応し、安定稼働を実現します。
良い例: 導入後の保守は、平日9〜17時のヘルプデスク(電話・メール、専任2名)で対応します。障害時は、連絡受付から1時間以内に一次回答、4時間以内に暫定復旧、3営業日以内に原因と再発防止策を書面で報告します。稼働率は月間99.5%以上を基準とし、月次報告書で実測値を示します。
なぜ良いか: 「手厚い」を体制(時間帯・人数)に、「迅速かつ的確」を時間基準(1時間・4時間・3営業日)に、「安定稼働」を稼働率(99.5%)と確認方法(月次報告)に置き換えています。
調査・計画策定
悪い例: 多様な住民の意見を幅広く収集し、丁寧に分析した上で計画に反映します。
良い例: 住民の意見は、次の3方法で収集します。①郵送アンケート(無作為抽出3,000世帯、回収目標1,000票)、②住民ワークショップ(2回、各回定員30名、年代別に募集)、③高校生アンケート(市内2校、各100名)です。分析は、アンケートを年代・居住地区別に集計し、ワークショップの意見を「移動の目的・時間帯・困りごと」の3分類で整理します。反映は、分類ごとの意見数と計画の施策を対応表にして計画書に掲載します。
なぜ良いか: 「多様な」「幅広く」を3つの収集方法と対象に、「丁寧に分析」を集計軸と分類に、「反映」を対応表という成果物に置き換えています。
イベント・広報
悪い例: SNSを効果的に活用し、若年層を含む幅広い世代への情報発信を行います。
良い例: 情報発信は、市公式SNS(3媒体)で事業開始の2か月前から週2回、計16回以上投稿します。若年層(10〜20代)向けには、市内の高校・大学の学生5名に撮影協力を依頼した短い動画を4本制作し、各媒体で投稿します。各投稿の閲覧数と反応数を週次で集計し、閲覧数が前週を下回った場合は投稿内容を見直します。
なぜ良いか: 「効果的に」を頻度(週2回・16回)と判断基準(前週比)に、「若年層を含む幅広い世代」を対象の年代と手段(動画4本)に置き換えています。
窓口・業務委託
悪い例: 経験豊富なスタッフを配置し、繁忙期にも柔軟に対応します。
良い例: スタッフ7名のうち4名は、他自治体の証明書発行窓口で2年以上の従事経験があります。繁忙期(3月15日〜4月15日)は2名を増員し、窓口を1つ臨時増設します。待ち時間が30分を超えた時点で現場責任者が貴市担当課に連絡し、追加の増員を協議します。
なぜ良いか: 「経験豊富」を人数と年数に、「柔軟に」を条件(期間)と行動(増員・増設)、さらに判断基準(30分超)に置き換えています。
研修・人材育成
悪い例: 受講者のレベルに合わせたきめ細かい研修で、確実なスキル定着を図ります。
良い例: 研修前に受講者全員へ理解度確認(15問、オンライン)を行い、正答率で基礎・応用の2コースに分けます。各コースは90分×4回とし、毎回の終了時に演習課題を提出していただきます。研修終了1か月後に同じ理解度確認を再実施し、正答率の変化を受講者ごとに最終報告書に記載します。
なぜ良いか: 「レベルに合わせた」を事前確認とコース分けの方法に、「きめ細かい」を回数と演習に、「確実な定着」を1か月後の再確認という判断基準に置き換えています。
よくある失敗パターンと処方箋
| 失敗パターン | 症状 | 処方箋 |
|---|---|---|
| 抽象語の重ね書き | 「迅速かつ丁寧に、きめ細かく対応」 | 変換表の「変換の問い」で1語ずつ数値・手順に置き換える |
| 守れない数値を書く | 「障害は30分以内に復旧」など実態と乖離した数値 | 自社の実績値を基に「守れる最大限」に修正し、根拠を添える |
| 数値に根拠がない | 「利用率を50%に向上」とだけ書く | 現状値・前提条件・算出方法を1文で添えるか、目標を条件付きにする |
| 数値の単位・期間がない | 「月1回」なのか「年1回」なのか不明な「定期的に」 | 頻度は「○か月に○回」「年○回」で統一する |
| 固有名詞だけで中身がない | 「○○手法を用いて」で説明がない | 括弧で機能・内容を添える |
| 匿名審査で自社商品名を書く | 社名入りの商品名、社内資格名 | 一般名詞+機能・実績に置き換える |
| 手順が仕様書の写し | 「調査→分析→計画策定」のみ | 各段階に期間・成果物・確認方法を添える |
| 手順が細かすぎる | 作業レベルの工程が20以上 | 大段階3〜5個と小段階の2階層に分ける |
| 実績が抽象的 | 「全国で豊富な実績」 | 件数・規模・時期・類似性・担当者の役割を書く |
| AIが数値を創作する | 下書きにない数値が書き換え後に現れる | 指示文に「数値の創作禁止・[要確認]で明示」を入れ、出力の数値を全件照合する |
書き換え手順(チェックリスト)
- 「迅速に」「適切に」「十分な」「柔軟に」「密に」などの抽象語を変換表で全件点検した
- 各評価項目に、具体性の5要素(数値・固有名詞・手順・実績・根拠)のうち3つ以上がある
- 回数・頻度には「○か月に○回」「年○回」の単位がある
- 期限には「契約後○か月以内」「受付から○時間以内」の起点がある
- 人数には役割(責任者・担当者・専任・常駐)が添えられている
- 目標値には現状値・前提条件・算出方法のいずれかが添えられている
- 数値が出せない箇所は、頻度・期限・条件・判断基準のいずれかで代替した
- 匿名審査の場合、自社商品名・社内資格名・社名を推測させる記述がない
- 手順は3〜5段階で、各段階に期間・成果物・確認方法のうち2つ以上がある
- 実績は件数・規模・時期・類似性・担当者の役割を示している
- すべての数値が自社で守れる水準であることを担当者が確認した
- 書き換え後に新たに現れた数値を、元の下書きまたは担当者の確認情報と全件照合した
AIに書き直させるときの指示例
あなたは自治体向け提案書の編集者です。評価者が採点の根拠を見つけやすい文章に整えるのが役割です。
次の提案書の下書きを、具体性の高い文章に書き直してください。
手順:
1. 下書きの中の抽象語(迅速に、適切に、十分な、柔軟に、密に、丁寧に、確実に、効率的に、
積極的に、幅広く、速やかに、定期的に、必要に応じて、可能な限り、最適な、高品質な、
豊富な、経験豊富な、円滑に、しっかりと、継続的に、わかりやすく、徹底して、最新の、
専門的な)をすべて抜き出す。
2. 抽象語ごとに「何時間・何回・何人・何を基準に・どの条件で」のいずれかの問いを立て、
下書きまたは【補足情報】に答えがあれば、その答えで抽象語を置き換える。
3. 答えがない場合は、抽象語を残さず「[要確認:○○の回数]」のように要確認マークに置き換える。
数値・実績・固有名詞を創作してはならない。
4. 手順を述べている箇所は、3〜5段階に番号を付け、各段階に期間・成果物・確認方法のうち
2つ以上を添える(情報がなければ[要確認])。
5. 実績を述べている箇所は、件数・規模・時期・類似性・担当者の役割の5項目に整理する。
6. 匿名審査の案件なので、自社商品名・社内資格名は一般名詞+機能・実績に置き換える。
【補足情報】
(担当者が確認済みの数値・実績・体制をここに貼る)
【下書き】
(ここに下書きを貼る)
文体はです・ます調。
出力は、書き換え後の本文と、要確認マークの一覧(マークと必要な情報)の2つに分けて示す。
よくある質問
Q実績が少ない場合はどう書けばよいですか。
件数が少なくても、規模・分野・発注者の種別・担当者個人の経験など、類似性の高い要素を具体的に書きます。「実績が少ないこと」を曖昧な表現で隠すより、手順や体制を具体的に書いて実現性を示すほうが評価されやすくなります。たとえば同種業務が1件でも、「人口規模が同じ」「対象課の数が同じ」「責任者が同じ」のいずれかがあれば、その一致点を明記します。
Q数値を書くと、契約後にその数値で縛られませんか。
縛られます。だからこそ数値には重みがあり、評価者は数値を信頼します。守れる水準で書くことと、外部要因に左右される成果は「前提条件付きの目標」として書くことの2点で、縛られるリスクを管理します。行動の数値(回数・期限・人数)は約束し、成果の数値(利用率・満足度)は条件付きにするのが基本の書き分けです。
Q変換表の抽象語をすべて消すと、文章が硬くなりすぎませんか。
提案書では硬くて構いません。文化審議会「公用文作成の考え方」も、伝えるべき重要なことははっきりと述べ、遠回しな書き方は避けるとしています。また、程度や時期を表す言葉は曖昧になりがちなので、数や量はできる限り具体的な数字で示すよう求めています。評価者は行政文書を読み慣れているため、数値と手順が並ぶ硬い文章のほうが読みやすいと受け取られやすくなります。やわらかさが必要なのは、プレゼンテーションの口頭説明の場面です。
検索でよくある疑問
Q提案書で数値が出せないときはどう書く?
頻度・期限・条件・判断基準の4つで代替します。「満足度を高めます」は「満足度アンケートを年2回実施し、結果を基に改善案を年2回提出します」(頻度)、「わかりやすい画面にします」は「職員5名による事前テストで全員が説明なしに申請を完了できることを基準とします」(判断基準)のように書きます。4つは組み合わせて使えます。
Q匿名審査の提案書で製品名や資格名は書ける?
法令名・ガイドライン名・規格名・公的資格名は社名の推測につながらないため使えます。広く使われる第三者の製品名も原則使えますが、自社が代理店・唯一の取扱者なら避けます。自社の製品・サービス・社内手法・社内資格の名称は使わず、一般名詞に置き換えたうえで、機能・仕様・実績を書いて具体性を保ちます。
Q提案書の手順はどのくらいの細かさで書く?
評価項目1つあたり段階は3〜5個とし、各段階に期間・成果物・確認方法のいずれか2つ以上を添える粒度が目安です。仕様書の業務項目を並べただけでは粗すぎて点差が付かず、作業レベルまで20以上並べると評価者が要点を見失います。段階が6個以上になる場合は、大段階と小段階の2階層に分けます。
参考資料
法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。
- 文化審議会「公用文作成の考え方(建議)」(令和4年1月7日)
- 文化審議会「公用文作成の考え方(建議)」本文・解説(令和4年1月) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf ※一文の長さ(50〜60字ほど)の目安は建議本文ではなく「(付)解説」Ⅲ-3「ア 一文を短くする」(解説p.32)にある。このほか、文の書き方(Ⅲ-3:一文の論点を一つにする、3つ以上の情報は箇条書、主語と述語の関係、接続助詞・中止法の多用回避、受身形・二重否定の抑制)、標題・見出しの付け方(Ⅲ-2)、結論を早めに示す(Ⅲ-4)、略語・図表の標題(Ⅰ-6)、専門用語・外来語の扱い(Ⅱ-2・Ⅱ-3)、曖昧さを避ける(Ⅱ-5)を参照
- 文化庁「文化審議会建議『公用文作成の考え方』について」(令和4年1月)
- 文化審議会国語分科会「新しい『公用文作成の要領』に向けて(報告)」(令和3年3月12日)
- 国土交通省「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定)
- 京都府「公募型プロポーザル方式 事務マニュアル」(令和5年11月)
- 大阪市「公募型プロポーザル方式ガイドライン」(令和4年3月)
- 福島県「公募型プロポーザル方式評価項目及び評価基準表」(河川改修事業CM業務委託の例、令和2年)