STEP1仕組みを知る/第1章

プロポーザルと総合評価の違い ― 入札方式ごとの提案書の役割と審査・配点の仕組み

プロポーザルと総合評価の違いは、総合評価落札方式が技術と価格を総合的に評価して(加算方式なら技術点と価格点の合計で)落札者を決める「入札」であるのに対し、公募型プロポーザルは提案内容で契約候補者を選び、その後に随意契約を結ぶ「手続き」である点です。価格だけで決まる一般競争入札を含め、方式によって提案書の役割はまったく異なります。このページでは、法令上の根拠、審査委員会の構成と一次審査・二次審査の流れ、技術点と価格点の比率、価格点の算定式、最低基準点、そして評価者が置かれている審査の現実を解説します。

執筆:村井宗明(元文部科学大臣政務官・AIエンジニア)公開:更新:読了目安:約11分

公共調達には、価格だけで決まる一般競争入札、価格と技術を総合的に評価して決まる総合評価落札方式、提案内容で相手を選んで随意契約する公募型プロポーザル・企画競争があり、方式によって提案書の役割はまったく異なります。この章では、入札方式の違い、審査委員会の構成と審査の流れ、評価基準と配点表の読み方、そして評価者が置かれている審査の現実を解説します。制度の仕組みを知ることが、点を取る提案書を書くための出発点です。

この章の要点

  • 1-1 入札方式の違いを知る:公共調達には「価格だけで決まる一般競争入札」「価格と技術を総合的に評価して決まる総合評価落札方式」「提案内容で相手を選んで随意契約する公募型プロポーザル・企画競争」があります。方式によって提案書が果たす役割はまったく異なります。
  • 1-2 審査委員会の構成と審査の流れ:プロポーザルの審査は、所管課・他部署の職員や外部有識者で構成する審査委員会が行うのが一般的です。一般的に一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)の2段階で進み、評価者ごとの個別採点を集計して順位を決めます。
  • 1-3 評価基準と配点表の読み方:配点表は「どこで何点取れるか」を示す設計図です。技術点と価格点の比率、評価段階ごとの点の付き方、最低基準点(足切り)の3点を最初に確認します。
  • 1-4 審査の現実:評価者は限られた時間で複数社の提案書を採点します。提案書は拾い読みされる前提で作り、採点の根拠をすぐ見つけられるようにすることが、点の取りこぼしを防ぐ最も確実な方法です。
このページの目次
  1. 1-1 入札方式の違いを知る
    1. 一般競争入札:価格のみで決まる
    2. 総合評価落札方式:価格と技術を総合的に評価して決まる
    3. 公募型プロポーザル・企画競争:提案内容で相手を選び随意契約する
    4. 方式によって提案書の役割が変わる
  2. 1-2 審査委員会の構成と審査の流れ
    1. 評価者の構成:所管課職員・他部署職員・外部有識者
    2. 一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)
    3. 個別採点と合議、点数の集計方法
  3. 1-3 評価基準と配点表の読み方
    1. 技術点と価格点の比率
    2. 価格点の算定式
    3. 評価段階(5段階評価など)と点数の付き方
    4. 加算点と最低基準点(足切り)
  4. 1-4 審査の現実
    1. 1社あたりにかけられる審査時間
    2. 拾い読みされる前提で書く
    3. 評価者が困る提案書:採点の根拠が見つからない

1-1入札方式の違いを知る

要点

公共調達には「価格だけで決まる一般競争入札」「価格と技術を総合的に評価して決まる総合評価落札方式」「提案内容で相手を選んで随意契約する公募型プロポーザル・企画競争」があります。方式によって提案書が果たす役割はまったく異なります。

一般競争入札:価格のみで決まる

国も自治体も、契約は一般競争入札が原則です(国は会計法第29条の3第1項、自治体は地方自治法第234条第1項・第2項に規定があります)。一般競争入札では、参加資格を満たし、仕様書どおりに履行できることを前提に、予定価格の範囲内で最も安い価格を示した者が落札者になります(業務委託のように発注者が代金を支払う契約の場合)。提案書の提出を求められないことが多く、求められても仕様を満たしているかの確認にとどまります。

総合評価落札方式:価格と技術を総合的に評価して決まる

総合評価落札方式は、価格と価格以外の要素(技術力、実施体制、品質確保の方策など)を総合的に評価し、最も評価の高い者を落札者とする方式です。自治体では地方自治法施行令第167条の10の2、国では会計法第29条の6第2項と予算決算及び会計令(予決令)第91条第2項が根拠になります。自治体が総合評価を行う場合は、落札者決定基準を定めようとするときに、あらかじめ二人以上の学識経験者の意見を聴かなければならず(地方自治法施行令第167条の10の2第4項、地方自治法施行規則第12条の4)、その際に「落札者を決定するときにも改めて意見を聴く必要がある」とされた場合は、落札者決定時にも意見を聴きます(同条第5項)。

入札であることに変わりはないので、技術提案書と入札書(価格)の両方を提出し、技術の評価と価格の両方を数値化した「評価値」で順位が決まります。評価値の算出方法には、技術点と価格点を足す加算方式と、技術評価点を入札価格で割る除算方式があります。国の調達では、情報システムなどの役務の調達で主に加算方式が用いられています。

公募型プロポーザル・企画競争:提案内容で相手を選び随意契約する

公募型プロポーザル方式は、価格だけの競争に適さない業務について、複数の事業者から企画や技術の提案を受け、最も適した事業者を「契約候補者」として選ぶ方式です。自治体では、性質や目的が競争入札に適しない契約として随意契約を認める地方自治法施行令第167条の2第1項第2号を根拠に、選定後にその事業者と随意契約を結ぶのが一般的です。国の機関では主に「企画競争」と呼ばれ(国土交通省の建設コンサルタント業務等のように「プロポーザル方式」と呼ぶ分野もあります)、会計法第29条の3第4項(契約の性質又は目的が競争を許さない場合)に基づく随意契約の相手方を選ぶための手続きとして運用されています(財務省「公共調達の適正化について」平成18年8月25日財計第2017号)。同通知は、企画競争を「複数の者に企画書等の提出を求め、その内容について審査を行う方法」と定義しています。計画策定、調査研究、システム構築、広報・イベントなどで多く使われます。

方式によって提案書の役割が変わる

方式 決まり方 提案書の役割
一般競争入札(価格のみ) 最低価格 仕様を満たすことの確認(求められない場合も多い)
総合評価落札方式 技術点+価格点(除算方式では技術評価点÷入札価格) 技術点を稼ぎ、価格差を逆転・維持する
公募型プロポーザル・企画競争 提案内容の評価(価格は一部または対象外) 評価点のほぼすべてを決める主戦場
  • 悪い例: プロポーザルの提案書を、一般競争入札の仕様確認書類と同じ感覚で「仕様書のとおり実施します」とまとめる。
  • 良い例: プロポーザルでは提案書が評価のほぼすべてを決めると理解し、評価項目ごとに具体策と根拠を書き込む。

よくある質問

Q「プロポーザル」と「総合評価」は何が一番違うのですか。

A

総合評価は入札の一種で、価格が評価に必ず組み込まれ、落札がそのまま契約につながります。プロポーザルは随意契約の相手を選ぶ手続きで、価格を評価しない、または配点を小さくする設計が多く、選定後に仕様や契約内容の協議を経て契約します。

1-2審査委員会の構成と審査の流れ

要点

プロポーザルの審査は、所管課・他部署の職員や外部有識者で構成する審査委員会が行うのが一般的です。一般的に一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)の2段階で進み、評価者ごとの個別採点を集計して順位を決めます。

評価者の構成:所管課職員・他部署職員・外部有識者

自治体のプロポーザルでは、案件ごとに審査委員会(自治体により選定委員会・評価委員会などと呼びます)を設けるのが一般的です。採点を行う評価者は、業務を所管する課の管理職、関係部署や情報政策・財政部門の職員、そして大学教員や専門家などの外部有識者で構成される例が多く見られます。自治体のガイドラインには、審査委員会の委員を5人以上10人以内とし、原則として外部の評価者を含める、といった定めを置く例があります。委員を5人以上とし、なるべく外部の者を加えるとする例もあります。

この構成から言えるのは、評価者の専門知識にはばらつきがあるということです。所管課の評価者は現場の課題に詳しく、外部有識者は専門分野に詳しく、他部署の評価者はどちらにも詳しくない場合があります。提案書は、専門外の評価者にも伝わる言葉で書く必要があります。

一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)

審査は次の流れで進むことが多いです。

  1. 参加資格審査:参加申込書や実績書類で、参加資格を満たすかを確認します。
  2. 一次審査(書類審査):提案書を評価基準に沿って採点します。参加者が多い場合は、ここで二次審査に進む事業者を数社に絞ります。
  3. 二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング):提案内容の説明と評価者からの質疑を行い、その内容も踏まえて採点します。

一次審査を行わず、書類とプレゼンを合わせて一度に採点する案件もあります。どちらの形でも、プレゼンは提案書の内容を前提に行われるので、提案書の完成度がそのまま審査全体の土台になります。

個別採点と合議、点数の集計方法

採点は、各評価者が評価項目ごとに独立して行うのが原則です。集計方法は案件ごとに募集要項や評価基準で定められ、次のような方法があります。

  • 全評価者の点数を合計する
  • 評価項目ごとに評価者の平均点を出して合計する
  • 評価項目ごとに最高点と最低点を付けた評価者の点数を除いて平均する

評価者間で評価が大きく分かれた場合に協議の場を設ける運用もあります。いずれの方法でも、1人の評価者の高評価だけでは勝てず、複数の評価者から安定して点を取る提案書が有利になります。

  • 悪い例: 外部有識者の専門分野に合わせ、高度な専門用語と理論の説明で全体を構成する。
  • 良い例: 専門用語には短い補足を付け、所管課職員にも他部署の評価者にも同じ結論が伝わる書き方にする。

よくある質問

Q評価者の名前は事前にわかりますか。

A

審査の公正性を守るため、選定前は評価者の氏名を公表しない運用が一般的です。評価者への接触は禁止されることが多く、違反すると失格になる場合があります。

1-3評価基準と配点表の読み方

要点

配点表は「どこで何点取れるか」を示す設計図です。技術点と価格点の比率、評価段階ごとの点の付き方、最低基準点(足切り)の3点を最初に確認します。

技術点と価格点の比率

総合評価落札方式やプロポーザルでは、技術点と価格点の比率が案件の性格を表します。国の調達では分野ごとに配分割合が定められており、デジタル庁の「デジタル庁調達手続マニュアル」(令和7年6月改訂)では、価格点:技術点の配分を、情報システムは1:1、または1:3以内(業務が複雑かつ多岐にわたるなど一定の要件をすべて満たす場合)、広報業務と調査業務は1:2以内、研究開発業務は1:3以内としています。国土交通省の建設コンサルタント業務等の運用ガイドラインでは、価格と技術の配点の比率を、簡易型は原則1:1(難易度に応じ1:2も可)、標準型は評価テーマの数・難易度に応じて1:2または1:3としています。

自治体のプロポーザルでは、価格を評価対象に含めない案件もあれば、参考見積価格を評価点全体の一部(例えば2割を上限とする例)として扱う案件もあります。

比率の傾向 読み取れること 提案書での対応
技術点の比重が大きい 品質・体制・独自性で差をつけたい 配点の大きい項目に具体策を厚く書く
価格点の比重が大きい 価格競争の色合いが強い 技術点で大きく離されない最低限の網羅を確保し、価格戦略を重視する
価格を評価しない 提案内容のみで選ぶ 提案上限額の範囲で実現できる最良の提案に集中する

価格点の算定式

価格点の算定式は、募集要項や評価基準に明記されていることが多く、案件ごとに異なります。本ガイドでは、例として次の式を用います。

  • 最低見積価格を基準にする式(例):「最低見積価格 ÷ 当該見積価格 × 配点」。参加者のうち最も低い見積価格を示した者が満点となり、他の参加者はその価格との比率で按分されます。

これと並んで、次の方式も用いられています。

  • 国の総合評価落札方式(加算方式):「(1 − 入札価格 ÷ 予定価格)× 配点」が用いられます(デジタル庁調達手続マニュアル、国土交通省の運用ガイドライン)。予定価格との差が大きいほど価格点が高くなります。
  • 自治体のプロポーザル:「(1 − 当該見積価格 ÷ 提案上限額)× 配点」のように、提案上限額を基準とする方式もあります。

どの式が使われるかで、価格を下げたときの点の動き方が変わります。参加する案件の式を確認し、技術点との関係で価格戦略を決めることが基本です。

評価段階(5段階評価など)と点数の付き方

技術点の採点は、評価項目ごとに段階評価で行うことが一般的です。例えば「5 特に優れている/4 優れている/3 標準/2 やや劣る/1 劣る」の5段階で評価し、それを項目の配点に換算します。配点20点の項目なら、「優れている」と「標準」の差だけで数点が動きます。

段階評価の基準として、「仕様書の要求水準を満たしている」を「標準」、「要求水準を上回る具体的な提案がある」を「優れている」以上とする設計がよく見られます。つまり仕様書をなぞっただけの記述は「標準」止まりになりやすく、上位の段階に上がるには、要求水準を超える具体策とその根拠が必要です。

  • 悪い例: 「仕様書に定める定例会を毎月開催します。」(要求水準をなぞっただけで「標準」になりやすい)
  • 良い例: 「仕様書の月1回の定例会に加え、導入直前の2か月間は週1回の短時間ミーティングを設け、課題を翌週までに解消します。」(要求水準を上回る具体策がある)

加算点と最低基準点(足切り)

国の情報システムの総合評価では、技術点が要求要件を満たしているかを評価する部分(必須項目、基礎点)と、それを上回る提案を評価する部分(加点)に分かれます。必須項目の最低限の要求要件を一つでも満たさない提案は不合格になります。

自治体のプロポーザルでも、合計点が一定の基準点に満たない場合は、1位であっても契約候補者にしない「最低基準点」を設けることがあります。満点の6割程度を目安とする例があります。最低基準点を設けている案件では、参加者が1社だけでも、最低基準点に届かなければ選定されません。

よくある質問

Q配点表が公表されていない場合はどうすればよいですか。

A

評価項目だけが示されている場合でも、項目の並び順と着眼点の文言から重点を推測できます。不明点は、募集要項に定められた質問受付期間内に質問書で確認します。回答は参加者全員に公表される例が多く見られます。

1-4審査の現実

要点

評価者は限られた時間で複数社の提案書を採点します。提案書は拾い読みされる前提で作り、採点の根拠をすぐ見つけられるようにすることが、点の取りこぼしを防ぐ最も確実な方法です。

1社あたりにかけられる審査時間

評価者の多くは、通常業務と並行して審査を行う職員です。提出から審査日までの期間は短く、その間に5社、10社と提案書を読み比べることもあります。1社に割ける時間は、案件の規模にもよりますが、数十ページの提案書を隅々まで精読できるほど長くはないと考えるのが現実的です。二次審査のプレゼンテーションとヒアリングも、1社あたり数十分程度に設定される例が多く、プレゼンテーション20分以内・ヒアリング10分程度と定める例があります。

拾い読みされる前提で書く

時間が限られた評価者は、採点表の項目を見ながら、提案書の目次や見出しをたどって該当箇所を探します。拾い読みされても点が取れるように、次の工夫をします。

  • 評価項目と同じ名称の見出しを、評価基準と同じ順番で並べる
  • 見出しの直後の2行以内で結論を書く
  • 冒頭に「評価項目と記載ページの対応表」を置く
  • 重要な数値や約束事は本文に埋もれさせず、要点として示す

評価者が困る提案書:採点の根拠が見つからない

評価者は、付けた点数について「なぜこの点なのか」を説明できなければなりません。結果の説明を求められたり、評価者間で協議したりする場面もあるからです。根拠が見つけにくい提案書に対しては、高い点を付けたくても付けられず、無難な中間点に寄せがちです。

  • 悪い例: 実施体制の説明が「会社概要」「業務の進め方」「品質管理」の3か所に分散し、どこが「実施体制の妥当性」への回答かわからない。
  • 良い例: 「4. 実施体制(評価項目:実施体制の妥当性)」の見出しの下に、体制図、各担当者の役割、類似業務の経験年数、交代要員をまとめて示す。

評価者を「困らせない」ことは、それだけで加点要素になりませんが、本来取れるはずの点を確実に取るための前提条件です。

よくある質問

Qページ数の上限いっぱいまで書いたほうが有利ですか。

A

分量そのものは評価されません。上限に近づけるより、評価項目ごとに根拠がすぐ見つかる密度と構成を優先してください。様式や上限ページの違反は失格につながる場合があるため、規定は必ず守ります。

検索でよくある疑問

Q自治体のプロポーザルの審査はどのような流れで進みますか?

A

一般的には、参加申込書や実績書類で参加資格を確認する参加資格審査、提案書を評価基準に沿って採点する一次審査(書類審査)、提案内容の説明と質疑を行う二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)の順に進みます。参加者が多い場合は一次審査で数社に絞ります。一次審査を行わず、書類とプレゼンを合わせて一度に採点する案件もあります。

Q総合評価やプロポーザルの技術点と価格点の比率はどれくらいですか?

A

案件ごとに異なります。国の例では、デジタル庁調達手続マニュアルは価格点:技術点の配分を、情報システムは1:1または1:3以内(一定の要件をすべて満たす場合)、広報業務と調査業務は1:2以内、研究開発業務は1:3以内としています。自治体のプロポーザルでは価格を評価しない案件もあれば、参考見積価格を評価点全体の一部(2割を上限とする例など)として扱う案件もあります。

Qプロポーザルの最低基準点とは何ですか?

A

合計点が一定の基準点に満たない場合、順位が1位であっても契約候補者にしないという基準です。満点の6割程度を目安とする例があり、参加者が1社だけでも最低基準点に届かなければ選定されません。国の情報システムの総合評価では、必須項目の最低限の要求要件を一つでも満たさない提案は不合格になる仕組みもあります。

参考資料

法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。