STEP7振り返る・AIで磨く/第11章
プロポーザルの落選理由を次に活かす ― 評価結果の入手から点差分析と提案書の資産化まで
プロポーザルの落選理由は、発注者の評価結果を入手し、評価項目ごとの点差を分析することで特定できます。結果通知と公表資料を確認し、足りなければ非選定理由の説明を求め、さらに必要なら情報公開請求で採点結果や講評の開示を求めます。点差は1つか2つの項目に集中していることが多く、負け要因を内容・表現・価格・実績の4つに分類すると、次に直すべき点が明確になります。会社概要や体制、実績などの再利用パーツと振り返りシートを蓄積し、落選を次の受注につなげる改善サイクルを解説します。
この章の要点
- 11-1 評価結果・講評を入手する:落選した提案の改善は、発注者の評価結果を手に入れることから始まります。結果通知・公表資料・非選定理由の説明・情報公開請求の順で、入手できる情報を漏れなく集めます。
- 11-2 点差を分析する:落選の原因は「なんとなく弱かった」ではなく、評価項目ごとの点差で特定します。負け要因を内容・表現・価格・実績の4つに分類すると、次に何を直せばよいかが明確になります。
- 11-3 提案書資産を蓄積する:提案書は案件ごとの使い捨てにせず、再利用できるパーツと勝ち負けの記録を蓄積します。資産化すると、次の提案では作成時間を減らし、浮いた時間を案件固有の内容に回せます。
このページの目次
11-1評価結果・講評を入手する
落選した提案の改善は、発注者の評価結果を手に入れることから始まります。結果通知・公表資料・非選定理由の説明・情報公開請求の順で、入手できる情報を漏れなく集めます。
結果通知と講評の確認
公募型プロポーザルや総合評価落札方式で落選したとき、多くの企業は「残念でした」で終わらせてしまいます。しかし、落選した提案書には、次の受注につながる情報が最も多く含まれています。まず確認したいのは、発注者から届く結果通知と、発注者のホームページで公表される審査結果です。
自治体のプロポーザルの募集要項やガイドラインでは、選定・非選定の別を参加者全員に通知し、契約締結後などにホームページで評価結果を公表すると定めている例が多くあります。公表される内容は自治体によって差があり、次のような段階の例があります。
また、自治体によっては、選定されなかった参加者が非選定の理由について説明を求められる仕組みを設けています(仕組みの有無や手続きは自治体ごとに異なります)。説明を求められる期間は「通知日の翌日から起算して7日以内」のように短く区切られている例があるため、結果通知を受け取ったらすぐに募集要項を読み返し、期限内に手続きをしてください。説明の場で確認したい項目は、評価項目ごとの自社の得点、評価が低かった項目とその理由、契約候補者との差が大きかった項目の3つです。
評価点の開示を求める方法(情報公開請求を含む)
公表資料や非選定理由の説明で足りない場合は、情報公開制度を使う方法があります。自治体には各団体の情報公開条例が、国の行政機関には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」があり、審査結果の資料や採点表は開示請求の対象になりえます。
ただし、開示される範囲には限りがあります。評価項目や配点、自社の得点は開示される例が多い一方、他社の提案書や他社の詳細な得点は、法人の競争上の地位や正当な利益を害するおそれがある情報(いわゆる法人等情報。情報公開法では第5条第2号イ。多くの自治体の情報公開条例にも同様の規定があります)として、一部または全部が不開示になることがあります。自治体によっては「契約締結前は非公開、契約締結後は部分公開」のように、時期によって扱いを分ける基準を定めています。
- 悪い例: 「他社の提案書を全部見せてください」とだけ請求し、大半が黒塗りで返ってくる。
- 良い例: 「令和○年度○○業務委託に係る公募型プロポーザルの審査における、評価項目別の採点結果(自社分および全参加者の項目別得点)並びに審査講評」のように、対象文書を具体的に特定して請求する。
請求手続きには手数料や開示までの期間がかかります。国の行政機関では、開示請求があった日から原則30日以内に開示・不開示が決定され(情報公開法第10条。30日以内の延長あり)、開示請求手数料と開示実施手数料が必要です(同法第16条)。自治体では期限や手数料を条例で定めており、写しの交付費用だけを求める例もあります。自社の得点表だけなら、非選定理由の説明の場で口頭や書面で確認できることも多いため、まず担当課に問い合わせるのが効率的です。
よくある質問
Q非選定理由の説明を求めると、発注者に悪い印象を与えませんか。
説明を求める仕組みは、透明性の確保のために制度として用意されています。仕組みが設けられている案件で丁寧に依頼すれば、むしろ「次回に向けて改善しようとしている事業者」として受け止められることが多いとされています。
Q受託者が作った成果物も入手できますか。
報告書などの成果物はホームページで公開されていることがあります。公開されていない場合も、情報公開請求の対象になりうるので、次回の提案に向けた調査として活用できます。
11-2点差を分析する
落選の原因は「なんとなく弱かった」ではなく、評価項目ごとの点差で特定します。負け要因を内容・表現・価格・実績の4つに分類すると、次に何を直せばよいかが明確になります。
項目別の得点比較
評価結果を入手したら、評価項目を縦に、自社の得点・契約候補者の得点・満点・点差を横に並べた比較表を作ります。点差の絶対値だけでなく「配点に対する失点の割合」も計算しておくと、配点の大きい項目での失点と、配点の小さい項目での失点を同じ尺度で比べられます。
- 悪い例: 「総合点で5点負けた。次はもっと頑張ろう」と社内で共有して終わる。
- 良い例: 「総合点の差5点のうち、3.5点は『実施体制』(配点20点)で生じた。業務の理解度と独自提案はほぼ互角。体制の評価で差がついた理由を、講評と自社の提案書を照らして特定する」と分析する。
比較表を作ると、点差が1つか2つの項目に集中していることがよくあります(経験則)。改善はその項目から優先して取り組みます。
負け要因の分類:内容・表現・価格・実績
点差が大きい項目について、負けた原因を次の4つに分類します。分類によって打ち手がまったく異なるからです。
| 分類 | 典型的な症状 | 次回の打ち手 |
|---|---|---|
| 内容 | 課題の捉え方がずれていた、解決策が抽象的だった | 事前調査と骨子づくりを見直す |
| 表現 | 内容はあったのに評価者が見つけられなかった | 評価基準の言葉で見出しを作り、結論を先に書く |
| 価格 | 価格点で差がついた、提案上限額に近すぎた | 見積の前提と提案範囲を見直す |
| 実績 | 類似業務の実績や配置予定者の経験で差がついた | 実績づくりの案件を選ぶ、協力会社と組む |
「内容」と「表現」の区別が特に重要です。講評に「具体性に欠ける」と書かれていても、自社の提案書を読み返すと具体策は書いてあった、ということがよくあります。その場合は内容ではなく表現の問題であり、書いた場所や見出しの付け方を直せば点数が上がる可能性があります。逆に、具体策そのものが書かれていなかったなら、内容の問題として調査や検討の段階からやり直す必要があります。
「実績」による負けは、提案書の書き方だけでは短期間に解消できません。参加判断の段階で、実績づくりを目的とした案件を選ぶ、共同企業体(JV)や再委託先と組むといった中長期の打ち手を検討します。
よくある質問
Q項目別の得点が公表されず、総合点しかわからない場合はどうしますか。
非選定理由の説明を求め、評価が低かった項目を口頭でも確認してください。それも難しい場合は、社内で評価基準を使った模擬採点を行い、自社の提案書のどの項目が弱かったかを推定します。
11-3提案書資産を蓄積する
提案書は案件ごとの使い捨てにせず、再利用できるパーツと勝ち負けの記録を蓄積します。資産化すると、次の提案では作成時間を減らし、浮いた時間を案件固有の内容に回せます。
再利用パーツ:会社概要・体制・セキュリティ・実績
提案書の中には、案件が変わってもほとんど同じ内容になる部分があります。代表的なものは、会社概要、実施体制と配置予定者の経歴、情報セキュリティ・個人情報保護の管理策、類似業務の実績一覧、品質管理の仕組みです。これらを「最新版のパーツ」として1か所で管理しておくと、提案書の作成時間を大きく減らせます。
- 悪い例: 前回の提案書をコピーして使い回し、配置予定者の資格の有効期限切れや、古い従業員数がそのまま残る。
- 良い例: パーツごとに「最終更新日」「確認者」「次回見直し時期」を付けて管理し、提案書に組み込む前に数値と資格を最新の情報に更新する。
再利用パーツは、そのまま貼り付けるのではなく、案件の評価基準の言葉に合わせて見出しや冒頭の結論を書き換えて使います。パーツはあくまで素材であり、評価者に点を付けてもらうための「回答」に整え直す作業は毎回必要です。
勝ちパターン・負けパターンの記録
案件ごとに、結果と分析を1枚の振り返りシートにまとめます。記録する項目の例は次のとおりです。
- 案件名、発注者の種別、業務分野、方式(公募型プロポーザル、総合評価落札方式など)
- 参加者数、自社の順位、総合点と項目別の点差
- 講評の要旨と、点差の負け要因の分類(内容・表現・価格・実績)
- 評価が高かった記述(勝ちパターン)と低かった記述(負けパターン)
- 次回に向けた具体的な改善策と担当者
振り返りシートは、受注できた案件についても必ず作成してください。勝った提案書のどこが評価されたかを記録しておくと、勝ちパターンを再現できるようになります。数件分の記録がたまると、「この分野の発注者は体制の具体性を重視する」「価格点の比率が高い案件では提案上限額の何割程度で見積もった提案が勝っている」といった傾向が見えてきます。この記録は、次の案件の参加判断と骨子づくりの最も信頼できる材料になります。
よくある質問
Q振り返りに時間をかける余裕がありません。最低限何をすればよいですか。
「項目別の点差」「負け要因の分類」「次回の改善策を1つ」の3点だけでも記録してください。3点だけでも、同じ失敗を繰り返す確率を下げられます。
検索でよくある疑問
Qプロポーザルの落選理由はどうやって知る?
まず結果通知と、発注者のホームページで公表される審査結果を確認します。公表範囲は契約候補者名のみ、参加者別の総合点、項目別得点や講評までなど自治体によって差があります。足りない場合は、非選定理由の説明を求める仕組みがあれば利用します。説明を求められる期間は「通知日の翌日から起算して7日以内」のように短い例があるため、通知後すぐに募集要項を確認します。
Q情報公開請求で他社の提案書や得点は見られる?
審査結果の資料や採点表は開示請求の対象になりえますが、他社の提案書や詳細な得点は、法人の競争上の地位などを害するおそれがある情報(法人等情報)として一部または全部が不開示になることがあります。「評価項目別の採点結果と審査講評」のように対象文書を具体的に特定して請求すると、必要な情報を得やすくなります。
Qプロポーザルで負ける原因にはどんな種類がある?
点差の大きい項目の負け要因は、内容・表現・価格・実績の4つに分類できます。課題の捉え方や解決策がずれていれば内容、書いてあったのに評価者が見つけられなければ表現、価格点で差がつけば価格、類似実績や配置予定者の経験で差がつけば実績です。特に内容と表現の区別が重要で、表現の問題なら見出しや書く場所を直すことで点数が上がる可能性があります。
参考資料
法令・制度の記述は、次の一次資料・公的資料で確認しています。
- e-Gov法令検索「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)
- 高松市「高松市プロポーザル方式実施ガイドライン」(令和7年4月1日施行)
- 生駒市「プロポーザル方式の実施に関するガイドライン」(令和6年4月1日最終改正)
- 京都府「京都府公募型プロポーザル方式 事務マニュアル(歳出用)」(令和5年11月版)
- 大阪市「大阪市公募型プロポーザル方式ガイドライン」(令和4年3月)
- 国土交通省「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定)
- 田川市「プロポーザル方式による事業者選定に係る情報公開基準」
- 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)「PFI事業導入の手引き 実務編 ステップ4 民間事業者の募集、評価・選定、公表」