付録3よくある質問 ― 職員・民間事業者・住民からの35の疑問

自治体予算のよくある質問35|予算要求・査定・随意契約・補正予算

本付録は、自治体の予算について寄せられることの多い35の質問を、自治体職員・民間事業者・住民の順にQ&A形式でまとめたものです。各回答は冒頭に主な対象を示し、第1文で結論を述べます。法令で決まっている事項は根拠条文を示し、自治体によって運用が異なる事項は「多くの自治体では」と明記しています。「みらい市」はこの記事の架空の自治体(人口約5万人、一般会計当初予算約230億円の一般市)です。

自治体職員の方へ14問

Q初めて予算要求を担当することになりました。何から始めればよいですか?

主な対象:自治体職員

初めての予算要求は、予算編成方針を読み、前年度の予算要求書と査定結果を確認することから始めます。予算編成方針には、要求の上限(シーリング)、重点分野、締切日などが示されます。多くの自治体では10月上旬に通知され、みらい市(この記事の架空例)の設定でも10月上旬に通知、11月中旬が要求締切です。次に、前年度の要求書・積算資料・決算額を見比べ、何が認められ、何が削られたのかを把握します。そのうえで、事業の目的・必要性・効果・積算根拠・財源・後年度負担を整理し、要求書を作成します。分からない点は前任者や財政課の担当者に早めに相談することが、手戻りを防ぐ近道です。

Q予算要求の積算に使う見積書は何社から取ればよいですか?

主な対象:自治体職員

参考見積書の取得数は法令で決まっておらず、各自治体の財務規則や予算編成要領によるため、所属自治体のルールを確認してください。多くの自治体では、金額の妥当性を確認するため複数社(2〜3社程度)から見積りを取ることを求めています。1社だけの見積りでは価格が適正か判断できず、財政課ヒアリングで根拠の弱さを指摘されやすくなります。見積額をそのまま計上せず、過去の契約実績、公表単価(設計労務単価や物価資料など)、他自治体の事例と比較して検証することが大切です。なお、予算積算のための参考見積りと、契約時の見積合わせ(随意契約の手続)は別のものです。

Q財政課のヒアリングでは何を聞かれますか?

主な対象:自治体職員

財政課ヒアリングでは、主に事業の必要性、積算の根拠、財源、効果、後年度負担が聞かれます。具体的には「なぜ来年度に必要なのか」「単価と数量の根拠は何か」「国や県の補助金は使えないか」「前年度の成果はどうだったか」「翌年度以降にいくら必要か」などです。法令上の手続ではなく運用ですが、多くの自治体では11月下旬から12月中旬に行われ、みらい市(この記事の架空例)の設定でも財政課の査定担当5人が分担して実施します。決算額、事務事業評価の結果、見積書、関係法令、他自治体の事例を準備し、説明の筋道を課内で確認しておきます。

Q査定で削られた予算を復活させることはできますか?

主な対象:自治体職員

査定で減額・不計上となった予算は、復活要求という形で再度計上を求めることができますが、認められるのは一部です。復活要求は法令上の手続ではなく運用で、多くの自治体では財政課長査定の結果を受け、部長査定や首長査定の場で行います。同じ内容の再要求は認められにくく、査定で指摘された問題点への回答、事業費の圧縮、補助金などの財源確保、部内の他事業の削減と組み合わせた提案など、新しい理屈と材料が必要です。復活が難しい場合は、年度途中の補正予算での対応や、翌年度に向けて実施計画へ位置付け直すことも検討します。

Q年度の途中で予算が足りなくなったらどうすればよいですか?

主な対象:自治体職員

年度途中に予算が不足した場合は、流用、予備費の充用、補正予算の3つの方法で対応します。款・項の間の流用は原則としてできませんが、各項の経費は予算で定めた範囲で流用でき(地方自治法第220条第2項)、目・節の間の流用は各自治体の規則に基づき長の権限で行えます。予算外・予算超過の支出には、一般会計に計上する予備費を充用できますが、議会が否決した費途には使えません(同法第217条第1項・第2項)。金額が大きい場合や新たな事業の場合は、補正予算を編成して議会の議決を得ます。いずれも、まず財政課に相談し、所属自治体の財務規則を確認することが基本です。

Q年度内に工事が終わらない場合はどうなりますか?

主な対象:自治体職員・民間事業者

年度内に工事が終わらない見込みの場合は、繰越明許費または事故繰越の手続で翌年度に予算を繰り越します。繰越明許費は、性質上または予算成立後の事由で年度内に支出を終わらない見込みのある経費を、予算で定めて繰り越す制度です(地方自治法第213条)。多くの自治体では3月補正予算で設定します。事故繰越は、年度内に契約などの支出負担行為をしたものの、避けがたい事故で年度内に支出を終えられなかった経費を繰り越す制度です(同法第220条第3項ただし書)。どちらも翌年度に繰越計算書を調製して議会に報告します。何の手続もなければ、予算は年度末で失効します。

Q4月に異動してきました。前任者の予算をどう引き継げばよいですか?

主な対象:自治体職員

異動後の予算の引継ぎでは、当初予算の要求書・積算資料・査定結果、執行予定表、契約状況、繰越事業の有無を最初に確認します。会計年度は4月1日に始まりますが(地方自治法第208条第1項)、前年度予算の出納は5月31日まで続くため(同法第235条の5)、4月・5月は新年度と前年度の2つの予算を同時に扱います。特に、査定で付いた条件(「入札後に減額」「事業効果を検証すること」など)や議会での答弁内容は、文書に残っていないと見落としがちです。前任者が在籍しているうちに、未完了の契約や補助金の手続、年度内に必要な報告を一覧にして確認しておくと安心です。

Q大きな新規事業を予算化したいとき、いつから準備すればよいですか?

主な対象:自治体職員

大きな新規事業は、要求締切の半年以上前、遅くとも夏までに準備を始める必要があります。多くの自治体では、夏ごろに実施計画のローリングやサマーレビュー(事前協議)が行われ、大型事業や新規事業はこの段階で財政課や企画課と協議しておくことが求められます。秋の予算要求で初めて提案しても、財源の手当てや他事業との調整が間に合わず、査定で見送られやすくなります。みらい市(この記事の架空例)の設定では、7月の実施計画ローリングと8月のサマーレビューで事業の方向性を固め、10月上旬の予算編成方針を経て11月中旬に要求します。補助金の活用を考える場合は、国の概算要求(8月末)の内容も確認します。

Q補助金がある事業はなぜ査定で優先されやすいのですか?

主な対象:自治体職員

補助金がある事業が優先されやすいのは、自治体が自由に使える一般財源の負担が少なくて済むためです。国庫補助金などの特定財源は対象事業にしか使えませんが、例えば補助率2分の1の事業なら市の負担は事業費の半分で済みます。査定では「一般財源がいくら必要か」が重視されるため、同じ効果なら補助金のある事業が有利になります。ただし、補助金には補助対象外の経費や、補助期間終了後の維持管理費などの後年度負担が伴います。補助金があるから実施するのではなく、事業の必要性を第一に、補助終了後の財源まで見通して判断することが大切です。

Q年度末に予算を使い切ろうとするのはなぜですか?

主な対象:自治体職員・住民

年度末に予算を使い切ろうとする行動は、予算が余ると翌年度の予算を減らされるのではないかという懸念から生まれます。会計年度独立の原則(地方自治法第208条第2項)により、予算は年度内に使わなければ原則として失効し、執行残が大きいと「過大な要求だった」と査定で判断される懸念があります。しかし、不要な支出は税金の無駄遣いで、住民の信頼を損ないます。多くの自治体では、執行残を3月補正予算で減額し、財源を基金に積み立てたり翌年度に回したりしています。入札差金などで生じた残額は、無理に使わず財政課に報告することが求められます。

Q予算査定では、どのような手順で金額が決まるのですか?

主な対象:自治体職員

予算査定の金額は、財政課が全体の財源を義務的な経費から順に配ったうえで、事業ごとに執行実績・単価・数量を確かめて決まります。継続事業では過去3年分の予算額・決算額・不用額を並べ、不用額の理由を見分けます。単価は財政課の単価表・前年度の契約額・複数の見積を比べ、数量は対象者数や回数の実績から確かめます。年度の途中から始める事業は、実際に動く月数分を計上します。法令で決まった手順ではなく各自治体の運用ですが、多くの自治体で共通する考え方です。詳しくは第11章・第12章を参照してください。

Q査定で「試行」や「条件付き」とされたのは、どういう意味ですか?

主な対象:自治体職員

「試行」は事業の必要性を認めつつ、効果を確かめるために対象や期間を限って始める査定の結論で、「条件付き」は補助金の採択などの条件が満たされた場合に限って執行できる計上の仕方です。どちらも「認めない」という結論ではありません。試行の場合は、指標・比べる基準・拡大の判断基準を決め、事業開始前に現状値を測っておくことが、翌年度に拡大を求める根拠になります。条件付きの場合は、条件と、満たされなかったときの扱いを査定調書で確かめておきます。査定の結論の型は12-4・12-5で扱っています。

QAIやシステムを導入する予算は、査定で何を聞かれますか?

主な対象:自治体職員

AIや情報システムの導入予算では、対象業務と利用規模、総保有コスト(導入から使い終えるまでの総費用)、効果、運用体制、検証方法、情報漏えいなどのリスクへの備えが聞かれます。とくに、作業時間の削減と歳出の削減は同じではないため、時間外勤務手当や委託費のように「歳出が減る効果」と、生まれた時間を別の業務に回す「余力が生まれる効果」を分けて示します。無償トライアルで試した場合は、有償化した後の費用と比べます。詳しくは14-6〜14-9を参照してください。

Q前任者の予算査定の経緯が分かりません。どうすればよいですか?

主な対象:自治体職員

前任者の査定の経緯は、まず財政課に前年度の査定調書や査定理由を確認し、あわせて前年度の要求書・積算資料・決算額を見比べることで把握します。査定理由には、翌年度の要求で示してほしい資料(申し送り)が書かれていることがあります。多くの自治体では、査定額はシステムに残っていても、理由やヒアリングのやり取りが記録されていないことがあるため、財政課の担当者に直接聞くことも有効です。自分が担当した年度の経緯は、次の担当者のために記録として残しておきます(15-6参照)。

民間事業者の方へ11問

Q自治体に事業を提案するなら、いつがよいですか?

主な対象:民間事業者

自治体に新しい事業やサービスを提案するなら、翌年度予算の要求書が作られる前の、夏から秋の初めがよい時期です。多くの自治体では10月上旬に予算編成方針が通知され、11月中旬ごろに予算要求が締め切られます。事業課はこの間に参考見積書を集めて積算するため、10月以降の提案は間に合わないことがあります。大きな事業であれば、7月ごろの実施計画の見直しや8月のサマーレビュー(事前協議)の前に情報提供しておくのが理想です。予算が成立するのは翌年3月下旬で、実際の発注は翌年度の4月以降になるため、提案から受注までは1年近くかかると考えておく必要があります。

Q予算に載っていない事業を受注することはできますか?

主な対象:民間事業者

予算に計上されていない事業を自治体が発注することは、原則としてできません。契約などの支出負担行為は法令または予算の定めるところに従って行う必要があり(地方自治法第232条の3)、予算の裏付けがない契約は結べないためです。年度途中に新たな必要が生じた場合は、流用、予備費の充用、補正予算などで予算を確保してから発注されます。そのため、年度途中の提案はすぐには契約に至らないのが一般的です。翌年度の予算に計上してもらうには、秋の予算要求前に担当課が積算できるよう、仕様や概算額の情報を提供することが重要です。

Q自治体から見積依頼が来ました。どう対応すればよいですか?

主な対象:民間事業者

秋に自治体から届く見積依頼の多くは、翌年度予算を要求するための参考見積りです。予算の積算に使われるため、内訳(単価・数量・諸経費)を明確にし、根拠のある金額を提示することが大切です。参考見積りを出しても、その事業者との契約が約束されるわけではありません。予算成立後は、原則として一般競争入札などの手続で契約の相手方が決まります(地方自治法第234条第1項)。参考見積りの金額が高すぎると予算化されにくく、低すぎると実際の入札で採算が合わなくなるおそれがあります。複数年にわたる事業では、翌年度以降の費用(保守・更新など)も示すと、担当課が後年度負担を説明しやすくなります。

Q自治体にシステムの無償トライアルを提案するとき、何に気をつければよいですか?

主な対象:民間事業者

無償トライアルを提案するときは、検証する業務と指標、終了後の扱い(有償契約が任意か必須か、データの返却方法)、扱ってよい情報の範囲を、始める前に自治体と取り決めることが大切です。自治体がトライアル後に本予算で導入するには、トライアルの結果を予算要求の資料として示す必要があり、導入前後の比較データがなければ査定で効果を説明できません。また、有償化後の総保有コストと、LGWAN接続やデータの学習利用の有無など安全面の説明も求められます。トライアルを本予算につなげる流れは14-8で扱っています。

Q複数年の契約はどうやって結ぶのですか?債務負担行為とは何ですか?

主な対象:民間事業者・自治体職員

複数年にわたる契約は、あらかじめ予算で債務負担行為を定めることで結べるようになります。歳出予算などの範囲内のものを除き、自治体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として期間と限度額を定めておく必要があります(地方自治法第214条)。システムの複数年運用委託、指定管理者との協定、施設の建設などで使われます。ただし、実際の支払は各年度の歳出予算に計上して行います。また、電気・ガス・水の供給や不動産の賃借、政令で定める契約は、長期継続契約(同法第234条の3)として債務負担行為なしで複数年契約できる場合があります。

Q4月1日からすぐに契約・事業を始めることはできますか?

主な対象:民間事業者

4月1日から事業を始めるには、前年度中に入札などの準備を進めておく必要があります。当初予算は多くの自治体で3月下旬に議決されるため、予算成立前に契約を締結することはできません。そこで、議会の議決を前提に入札公告などの準備行為を進めて議決後・新年度に契約する方法や、前年度の予算で債務負担行為を設定して前年度中に契約する方法がとられます。指定管理や継続的な業務委託は後者の方法を用いることが多くあります。方法は自治体や事業によって異なるため、発注スケジュールは担当課の公表資料や入札情報で確認してください。

Q首長選挙がある年は、自治体の発注に影響がありますか?

主な対象:民間事業者

首長選挙が年度当初の前後にある年は、当初予算が骨格予算として編成され、新規事業の発注が遅れることがあります。骨格予算は法令上の用語ではなく運用上の呼び方で、人件費や継続事業などを中心に編成し、新規事業や政策的な経費は選挙後の補正予算(肉付け予算)に委ねるものです。肉付け予算は多くの場合6月定例会で審議されるため、新規事業の発注は夏以降にずれ込みます。継続中の事業や法令に基づく事業は通常どおり執行されます。みらい市(この記事の架空例)の設定でも、「ある年」の翌年度に市長選挙があり、その年度の当初予算は骨格予算になる可能性があります。

Q補正予算で発注される事業にはどんな特徴がありますか?

主な対象:民間事業者

補正予算で発注される事業は、国の経済対策や災害対応、制度改正に伴うものが多く、短期間での執行が求められる点に特徴があります。補正予算は、予算の調製後に生じた事由に基づき既定の予算に追加・変更を加えるものです(地方自治法第218条第1項)。国が秋から冬にかけて経済対策の補正予算を編成すると、自治体でも12月や3月の補正予算に関連事業が計上され、繰越明許費(同法第213条)を設定して翌年度に実施することがよくあります。事業者には年度をまたいで発注が集中する時期になるため、国の補正予算の動向と自治体の議会日程を確認しておくと準備しやすくなります。

Q随意契約はどのような場合に認められますか?

主な対象:民間事業者

随意契約は、競争入札によらずに契約の相手方を選ぶ方法で、法令で定める場合に限って認められます。随意契約は政令で定める場合に該当するときに限り行うことができ(地方自治法第234条第2項)、具体的な要件は地方自治法施行令第167条の2第1項に定められています。主な例は、予定価格が政令の範囲内で自治体の規則で定める額を超えない少額の契約、性質または目的が競争入札に適しない契約、緊急の必要により競争入札に付することができない場合などです。少額随意契約の上限(令和7年4月1日施行、指定都市以外の市町村)は、工事・製造の請負200万円、財産の買入れ150万円、物件の借入れ80万円、財産の売払い50万円、物件の貸付け30万円、その他100万円です。少額随意契約でも、多くの自治体では複数の事業者から見積りを取る「見積合わせ」を行います。

Q自治体の予算書や予算の内容はどこで見られますか?

主な対象:民間事業者・住民

自治体の予算は、多くの場合その自治体のウェブサイトで公開されています。一般的には、2月中旬の予算案の記者発表資料、議会に提出された予算書・予算説明書、主要事業の概要などが掲載されます。長は、議決された予算の送付を議長から受け、再議などの措置が不要と認めるときは、直ちにその要領を住民に公表しなければなりません(地方自治法第219条第2項)。予算編成過程(各課の要求額や査定結果)を公表している自治体もあります。事業者にとっては、予算説明書の事業名と金額が翌年度の発注予定を把握する手がかりになります。議会の会議録では、予算審議での質疑内容も確認できます。

Q市の事業の補助金をもらうにはどうすればよいですか?

主な対象:民間事業者・住民

自治体の補助金を受けるには、その補助金が予算に計上されている必要があり、補助金ごとに定められた交付要綱に従って申請します。補助金の多くは年度当初から募集が始まりますが、予算額に達すると年度途中で受付を終了することがあります。自治体は公益上必要がある場合に寄附または補助をすることができ(地方自治法第232条の2)、補助の目的や対象、補助率は各自治体の要綱で定められます。交付決定前に着手した事業は対象外となることが多いため、申請時期に注意してください。翌年度の新しい補助制度は、2月の予算案発表で明らかになるのが一般的です。

住民の方へ10問

Q自治体の予算とは、そもそも何ですか?

主な対象:住民

自治体の予算とは、1年間(4月1日〜翌年3月31日)の収入と支出の見積りであり、住民の代表である議会が議決した「お金の使い方の計画」です。予算は歳入歳出予算、継続費、繰越明許費、債務負担行為、地方債、一時借入金、歳出予算の各項の経費の金額の流用の7つの事項で構成されます(地方自治法第215条)。首長が予算を作って議会に提出し(同法第211条第1項)、議会が審議して議決します。予算に計上されていない支出は原則としてできないため、予算は自治体が翌年度に何をするかを示す宣言でもあります。みらい市(この記事の架空例)の一般会計当初予算は約230億円です。

Q市の借金(地方債)が多いと聞きました。大丈夫なのでしょうか?

主な対象:住民

地方債(自治体の借金)は、残高の大きさだけでなく、返済の負担が財政に占める割合で判断することが大切です。地方債は公共施設の建設や災害復旧など法律で定められた用途に限って発行でき(地方財政法第5条。臨時財政対策債など特別の法律による特例もあります)、施設を将来使う世代にも費用を分担してもらう意味があります。財政の健全性は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)に基づく実質公債費比率(早期健全化基準25%)や将来負担比率(指定都市を除く市町村の早期健全化基準350%)で確認できます。総務省「令和7年度市町村普通会計決算の概要(速報)」(令和8年9月29日公表)によると、実質公債費比率の市町村平均は5.5%です。これらの指標は毎年9月ごろ議会に報告・公表されます。

Q財政調整基金を取り崩すとはどういうことですか?

主な対象:住民

財政調整基金を取り崩すとは、自治体の「貯金」を引き出して、その年度の財源不足を補うことです。財政調整基金は年度間の財源の不均衡を調整するための基金で、地方自治法第241条第1項に基づき条例で設け、一般財源が大きく伸びた年度の超過額の積立て等は地方財政法第4条の3第1項が定めています。多くの自治体では、当初予算の編成段階で収入が支出に足りないとき、基金を取り崩して収支を合わせています。みらい市(この記事の架空例)の設定では、残高約25億円のうち毎年5〜8億円の取崩しを当初予算に計上しています。決算で余りが出れば基金に積み戻されますが、取崩しが続くと数年で残高が尽きるおそれがあり、歳出の見直しが必要になります。

Q経常収支比率が93%というのは、悪い状態なのですか?

主な対象:住民

経常収支比率93%は全国の市町村の平均的な水準ですが、自由に使える財源が少ない「硬直的」な状態であることを意味します。経常収支比率は、人件費・扶助費・公債費など毎年必ず必要な経費に、地方税や普通交付税など毎年入る一般財源がどれだけ使われているかを示す比率です。93%であれば、経常的な一般財源のうち新しい事業や施設整備に回せるのは残りの7%程度です。総務省「令和7年度市町村普通会計決算の概要(速報)」(令和8年9月29日公表)によると、市町村平均は93.3%です。法定の基準値はありませんが、高齢化や物価・人件費の上昇で比率は上がる傾向にあり、多くの自治体で事業の見直しが課題になっています。

Q地方交付税とは何ですか?なぜ国からお金がもらえるのですか?

主な対象:住民

地方交付税は、どの地域に住んでいても一定水準の行政サービスを受けられるよう、国が集めた税の一部を自治体の財政力に応じて配分する仕組みです。原資は所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額です(地方交付税法第6条第1項)。本来は地方の税源ですが、地域によって税収に大きな差があるため、国がいったん集めて調整しています。普通交付税は「標準的な行政に必要な額(基準財政需要額)」から「標準的な税収等(基準財政収入額)」を差し引いた不足額を基本に算定されます(同法第10条第2項)。使い道が自由な一般財源で、みらい市(この記事の架空例)のような交付団体には重要な収入です。

Qふるさと納税は市の予算にどう影響しますか?

主な対象:住民

ふるさと納税は、他の地域から寄附を受ければ歳入が増え、市民が他の自治体に寄附すれば住民税が減るという、両方向の影響があります。寄附を受けた自治体では寄附金として歳入に計上されますが、返礼品や事務経費に寄附額の一定割合(基準では5割以下)がかかります。一方、市民が他の自治体に寄附すると、地方税法に基づく寄附金税額控除(同法第314条の7など)により、個人住民税が減収になります。普通交付税の交付団体では、住民税の減収の75%は基準財政収入額の減少を通じて交付税で補われますが、残りは自治体の負担です。寄附金は年度変動が大きいため、予算では慎重に見積もるのが一般的です。

Q住民が予算づくりに意見を言うことはできますか?

主な対象:住民

住民は、パブリックコメントや住民説明会、議員への要望などを通じて、予算づくりに意見を言うことができます。法令上、予算は首長が調製し議会が議決するものですが(地方自治法第211条第1項)、多くの自治体では、予算編成過程の公表、パブリックコメント、住民説明会、市長への提案制度などで意見を受け付けています。予算の一部の使い道を住民の提案や投票で決める「住民参加型予算」に取り組む自治体もあります。議員に要望を伝えることや、議会の予算審議を傍聴・中継で確認することも有効です。翌年度予算に意見を反映させたい場合は、予算編成方針が出る10月より前、夏ごろまでに伝えるのが効果的です。

Q議会は予算案を修正できますか?否決されたらどうなりますか?

主な対象:住民

議会は予算案を修正することができ、否決することもできます。減額修正のほか増額修正もできますが、首長の予算提出の権限を侵すことはできません(地方自治法第97条第2項)。否決された場合、首長は再議に付すか、内容を見直して再提出します。法令により負担する経費などを議会が削除・減額した場合、首長は再議に付さなければならず、それでも削除・減額されたときは、その経費を予算に計上して支出できます(同法第177条第1項第1号・第2項)。年度開始までに当初予算が成立しない場合は、暫定予算(同法第218条第2項)で行政サービスを継続します。

Q予算がきちんと使われたかは、誰がどうやって確認するのですか?

主な対象:住民

予算が適切に使われたかどうかは、決算を通じて監査委員と議会が確認します。会計管理者は出納閉鎖(5月31日)後3か月以内に決算を調製して首長に提出し、首長はこれを監査委員の審査に付したうえで、意見を付けて議会の認定に付します(地方自治法第233条第1項〜第3項)。多くの自治体では9月定例会で決算を審議します。議会が決算を認定しなくても決算の効力は変わりませんが、首長は必要と認める措置を講じたときにその内容を議会に報告し公表しなければなりません(同条第7項)。財政健全化法に基づく健全化判断比率も同じ時期に報告・公表され、住民はウェブサイトで確認できます。

Q一般会計と特別会計は何が違うのですか?

主な対象:住民

一般会計は福祉・教育・道路など自治体の基本的な行政サービスをまとめて経理する会計で、特別会計は特定の事業の収支を分けて経理する会計です。自治体の会計は一般会計と特別会計に区分され、特別会計は特定の事業を行う場合などに条例で設置します(地方自治法第209条第1項・第2項)。市町村では国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療などが代表的です。保険料収入と給付の支出を一般会計と分けることで、事業ごとの収支や負担と給付の関係を明確にできます。水道や病院などは地方公営企業法に基づく公営企業会計で経理されます。報道される「市の予算額」は、通常は一般会計の当初予算額です。

参考資料・出典

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