付録2予算の年間カレンダー ― 4月から翌3月までの月別の動き

自治体の予算スケジュール年間カレンダー|4月〜3月の月別一覧

本付録は、自治体の予算に関わる1年間の動きを月ごとに、財政課・事業課・首長・議会・国の別に示し、解説を付けたものです。日程はこの記事の架空の自治体であるみらい市(人口約5万人の一般市、普通交付税の交付団体、一般会計当初予算約230億円)の標準スケジュールで、実際の日程は自治体によって異なります。法令で期限が決まっている事項は根拠条文を併記しています。

4月予算執行の開始と人事異動執行・決算

Q4月に自治体の予算関係で何が行われますか?

4月は、3月に議決された当初予算の執行が始まり、人事異動で多くの職員が入れ替わる月です。

  • 財政課:新年度予算の執行開始(予算の配当・令達)、前年度分の出納整理期間(4月1日〜5月31日)の管理、繰越事業の確認
  • 事業課:人事異動に伴う事業の引継ぎ、年度当初の契約・補助金交付申請、前年度の未払金の支払
  • 首長:新年度の訓示、当初予算の重点事業の始動
  • 議会:3月31日付けの専決処分(税条例改正など)の承認を臨時会または6月定例会で行う自治体が多い
  • 国:国の予算の執行開始、各省からの補助金の内示・交付申請手続の開始

解説:4月は「新年度予算」と「前年度予算」の2つが同時に動く月です。会計年度は4月1日から翌年3月31日までですが(地方自治法第208条第1項)、前年度の現金の出し入れは翌年度5月31日の出納閉鎖まで続きます(同法第235条の5)。異動した職員は予算要求の経緯や積算根拠を引き継げないまま執行を担いがちなので、要求書や査定資料の保存・共有が重要です。

5月出納閉鎖と決算作業の開始執行・決算

Q5月に自治体の予算関係で何が行われますか?

5月は、前年度の出納を5月31日に閉鎖し、決算作業が本格的に始まる月です。

  • 財政課:5月31日の出納閉鎖、繰越明許費の繰越計算書の調製(5月31日まで)、決算統計(地方財政状況調査)の準備
  • 事業課:前年度事業の支払・収入の完了、繰越事業の執行管理、新年度事業の発注準備
  • 首長:新年度事業の状況把握、国・都道府県への要望活動
  • 議会:臨時会(議会人事、専決処分の承認など)を開く自治体もある
  • 国:財政制度等審議会の春の建議、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)の策定作業

解説:出納閉鎖とは、前年度の出納を翌年度5月31日で締め切ることです(地方自治法第235条の5)。これ以降は前年度の収入・支出ができず、決算の数値が固まります。繰越明許費を繰り越した場合は、長が翌年度5月31日までに繰越計算書を調製し、次の会議で議会に報告します(地方自治法施行令第146条第2項)。財政課はこの時期から決算統計の作成に追われます。

6月6月定例会と事務事業評価の開始評価・計画

Q6月に自治体の予算関係で何が行われますか?

6月は、6月定例会で補正予算などが審議され、前年度事業を振り返る事務事業評価が始まる月です。

  • 財政課:6月補正予算の編成・提出、決算統計の作成、繰越計算書の議会報告
  • 事業課:事務事業評価(前年度事業の成果・コストの点検)の開始、国の補助金の交付決定を受けた事業の補正要求
  • 首長:首長選挙の年は、骨格予算に政策的経費を追加する肉付け補正を6月に提出する例が多い
  • 議会:6月定例会(補正予算、専決処分の承認、繰越計算書の報告など)
  • 国:骨太の方針の閣議決定

解説:6月補正予算は、国の補助金の交付決定や制度改正への対応が中心ですが、首長選挙の年は肉付け補正として大きくなることがあります。事務事業評価は法令上の義務ではなく運用ですが、多くの自治体で6月ごろから評価シートの作成が始まり、結果が秋の予算要求に反映されます。国の骨太の方針は、翌年度の地方財政の方向性を読む最初の手がかりになります。

7月普通交付税額の決定と実施計画のローリング評価・計画

Q7月に自治体の予算関係で何が行われますか?

7月は、その年度の普通交付税の額が決定し、翌年度事業の「種」となる実施計画の見直しが進む月です。

  • 財政課:普通交付税の算定結果の確認と歳入見込みの修正、決算統計の提出、中期財政見通しの更新準備
  • 事業課:実施計画のローリング(翌年度以降3年程度の事業の追加・修正)、事務事業評価の取りまとめ
  • 首長:実施計画で翌年度の重点事業の方向性を示す
  • 議会:閉会中の常任委員会での所管事務調査など
  • 国:普通交付税の額の決定(法定期限は8月31日、近年は7月下旬)、翌年度予算の概算要求基準の閣議了解

解説:総務大臣は、遅くとも毎年8月31日までに普通交付税の額を決定しなければなりません(地方交付税法第10条第3項)。近年は7月下旬に決定されることが多く、令和8年度(2026年度)分は令和8年7月24日に決定されました。当初予算で見込んだ額との差は、9月以降の補正予算で調整します。実施計画は法令上の義務ではありませんが、多くの自治体で予算要求の前提となるため、大型事業はこの段階で位置付けておきます。

8月国の概算要求・サマーレビュー・決算調製評価・計画

Q8月に自治体の予算関係で何が行われますか?

8月は、国の概算要求が8月末に出そろい、自治体ではサマーレビュー(大型事業の事前協議)と決算調製が重なる月です。

  • 財政課:サマーレビュー(大型事業・新規事業の事前協議)、決算の取りまとめ、健全化判断比率の算定、9月補正予算の編成
  • 事業課:大型事業の事前協議資料の作成、決算資料(主要施策の成果説明書など)の作成
  • 首長:サマーレビューで翌年度の重点事業の方向性を確認
  • 議会:閉会中の委員会活動、決算審査への準備
  • 国:各省の概算要求の締切(8月末)、総務省の地方財政収支の仮試算

解説:会計管理者は出納閉鎖後3か月以内、つまり8月31日までに決算を調製して長に提出します(地方自治法第233条第1項)。長はこれを監査委員の審査に付し(同条第2項)、多くの自治体では8月中に審査が行われます。サマーレビューは法令上の手続ではなく運用で、秋の予算要求で初めて大型事業を出しても財源の手当てが間に合わないため、夏のうちに財政課と協議する仕組みです。国の概算要求では、翌年度の地方交付税の要求額も示されます。

9月9月定例会:決算認定と健全化判断比率の報告評価・計画

Q9月に自治体の予算関係で何が行われますか?

9月は、9月定例会で前年度の決算と健全化判断比率が議会に提出され、補正予算も審議される月です。

  • 財政課:決算認定の議案・健全化判断比率の報告の提出、9月補正予算(決算剰余金の基金積立など)、翌年度の予算編成方針の準備
  • 事業課:決算審査での答弁、事務事業評価の結果の公表準備、翌年度予算要求の準備
  • 首長:決算の概要と財政状況の説明
  • 議会:9月定例会(決算認定、補正予算)、決算特別委員会での審査
  • 国:財務省による概算要求の査定の開始

解説:長は監査委員の意見を付けた決算を、次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければなりません(地方自治法第233条第3項)。多くの自治体では9月定例会に提出します。健全化判断比率も、監査委員の審査を経て同じ時期に議会に報告し公表します(地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項)。決算剰余金は、2分の1以上を翌々年度までに積立てまたは地方債の繰上償還に充てる必要があり(地方財政法第7条第1項)、多くの自治体は9月補正で財政調整基金に積み立てます。

10月予算編成方針の通知と説明会予算編成

Q10月に自治体の予算関係で何が行われますか?

10月は、首長の名で翌年度の予算編成方針が10月上旬に通知され、予算編成が正式に始まる月です。

  • 財政課:10月上旬に予算編成方針を通知し職員向け説明会を開催、中期財政見通しの公表、予算要求システムの準備
  • 事業課:予算要求書の作成、積算のための参考見積書の依頼(事業者への見積依頼)
  • 首長:予算編成方針で重点施策と財政運営の考え方を示す
  • 議会:決算特別委員会の閉会中審査が10月にかかる自治体もある
  • 国:財務省の査定、財政制度等審議会での議論

解説:予算編成方針は法令上の手続ではなく運用で、首長のメッセージ、財政見通し、シーリング(要求上限)や枠配分の基準、日程などが示されます。この記事の架空の自治体であるみらい市の設定では、財政調整基金の残高約25億円から毎年5〜8億円を取り崩している現状を踏まえ、歳出の見直しを求めます。事業課はこの時期に事業者へ見積依頼を行うため、民間事業者には翌年度の事業内容が決まる重要な時期です。

11月予算要求の締切と財政課ヒアリングの開始予算編成

Q11月に自治体の予算関係で何が行われますか?

11月は、各部局が11月中旬までに予算要求書を提出し、11月下旬から財政課ヒアリングが始まる月です。

  • 財政課:11月中旬に予算要求を締め切り、要求額の集計、11月下旬から財政課ヒアリングを開始
  • 事業課:課内・部内調整と部長ヒアリングを経て予算要求書を提出、財政課ヒアリングへの対応
  • 首長:要求状況(要求総額と財源不足額)の報告を受ける
  • 議会:12月定例会の準備、会派からの予算要望書の提出(多くの自治体でこの時期)
  • 国:財政制度等審議会の秋の建議、経済対策に伴う国の補正予算の編成(年度による)

解説:予算要求の締切後、財政課は要求額を集計し、歳入見込みとの差である財源不足額を把握します。多くの自治体では要求段階で大きな財源不足が生じ、査定で圧縮していきます。この記事の架空の自治体であるみらい市の設定では、財政課の査定担当5人が分担し、11月下旬から12月中旬にヒアリングを行います。ヒアリングでは事業の必要性、積算根拠、財源、後年度負担などが確認されます。

12月12月定例会と国の予算政府案・地方財政対策予算編成

Q12月に自治体の予算関係で何が行われますか?

12月は、財政課ヒアリングが12月中旬に終わり、12月下旬に国の予算政府案と地方財政対策が決まって歳入の見通しが固まる月です。

  • 財政課:12月中旬までヒアリング、12月下旬から1月上旬にかけて財政課長査定、地方財政対策を踏まえた歳入見積りの修正
  • 事業課:ヒアリングでの追加資料の提出、12月補正予算への対応
  • 首長:12月定例会での答弁、査定の方向性の確認
  • 議会:12月定例会(給与改定などの補正予算、条例改正)
  • 国:12月下旬に国の予算政府案の閣議決定と地方財政対策の決定、特別交付税(12月交付分)の決定

解説:地方財政対策は、総務大臣と財務大臣の折衝を経て国の予算政府案と同時期に決定され、翌年度の地方交付税総額や一般財源総額が示されます。令和8年度(2026年度)分は令和7年12月26日に決定され、一般財源総額67.5兆円(交付団体ベース)、地方交付税20.2兆円、臨時財政対策債の新規発行ゼロでした。自治体はこれを受けて普通交付税などの見込額を見直すため、年末に歳入見積りが大きく変わることがあります。12月定例会では、人事院勧告等を踏まえた給与改定の補正予算が審議される例が多くあります。

1月財政課長査定・部長査定・市長査定予算編成

Q1月に自治体の予算関係で何が行われますか?

1月は、1月上旬の財政課長査定から1月中旬の部長査定、1月下旬の市長査定へと段階的に査定が進み、予算案の中身が決まる月です。

  • 財政課:1月上旬に財政課長査定を終え、1月中旬の部長査定・1月下旬の市長査定の資料作成と調整、財源不足の穴埋め(基金取崩し額の決定など)
  • 事業課:査定結果の確認、復活要求の準備、部長査定・市長査定への対応
  • 首長:1月下旬の市長査定で目玉事業や重点施策の最終判断
  • 議会:会派への予算説明の準備(自治体による)
  • 国:通常国会の召集と国の予算審議の開始

解説:部長査定や首長査定(この記事の架空例のみらい市では市長査定)は法令上の手続ではなく運用ですが、多くの自治体で同様の段階を踏みます。財政課長査定で減額された事業は、部長が復活要求を行うことがあります。首長査定では、目玉事業の採否や財政調整基金の取崩し額が政策判断として最終決定されます。みらい市の設定では、当初予算で5〜8億円程度の財政調整基金の取崩しを計上するのが通例です。

2月内示・予算案の発表・地方財政計画の閣議決定議会審議

Q2月に自治体の予算関係で何が行われますか?

2月は、2月上旬に査定結果が内示され、2月中旬に予算案が記者発表されて議会に提出される月です。

  • 財政課:2月上旬に内示と予算書・予算説明書の印刷、2月中旬の記者発表資料の作成、議案の提出
  • 事業課:内示額に基づく事業計画の修正、議会答弁の想定問答の作成
  • 首長:2月中旬の予算案記者発表、施政方針の準備
  • 議会:2月下旬に3月定例会が開会し、施政方針演説と予算案の提案説明
  • 国:例年2月に地方財政計画(地方交付税法第7条に基づく歳入歳出総額の見込額)の閣議決定と国会提出(令和8年度分は令和8年2月20日)

解説:長は遅くとも年度開始前、都道府県・指定都市は30日、その他の市町村は20日までに予算を議会に提出するようにしなければなりません(地方自治法第211条第1項)。一般市であるみらい市(この記事の架空例)は、期限より前の2月下旬に提出します。記者発表では一般会計の総額や前年度比、重点事業が公表され、住民や事業者が翌年度の事業を知る最初の機会になります。

3月3月定例会での審議と議決議会審議

Q3月に自治体の予算関係で何が行われますか?

3月は、3月定例会で当初予算案が審議され、3月下旬に議決されて翌年度予算が成立する月です。

  • 財政課:予算特別委員会の運営支援、3月補正予算(執行残の減額、繰越明許費の設定、基金積立など)の提出、当初予算の配当準備
  • 事業課:予算特別委員会での答弁、年度末の事業完了と検査、繰越手続、翌年度契約の準備
  • 首長:代表質問・一般質問への答弁
  • 議会:3月定例会(代表質問・一般質問・予算特別委員会、3月下旬に議決)
  • 国:国の予算の成立、地方税法・地方交付税法の改正法の成立、特別交付税(3月交付分)の決定

解説:当初予算は年度開始前に議会の議決を経なければならず(地方自治法第211条第1項)、多くの自治体では3月下旬に議決されます。議会は予算を増額修正することもできますが、長の予算提出の権限を侵すことはできません(同法第97条第2項)。年度内に議決できない場合は暫定予算(同法第218条第2項)を編成します。3月31日付けの地方税法改正に伴う税条例改正は、専決処分(同法第179条第1項)で対応する例が多くあります。

参考資料・出典

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