自治体職員・地方議員・自治体と仕事をする事業者のための
自治体の予算の作り方公務員の仕事と一年のカレンダーから見た地方財政の実態
予算書は、来年度その町が何をするかの宣言です。この記事は、予算が生まれ、議決され、使われ、決算で検証されるまでを、制度・業務・カレンダー・実態の4つの視点で解説します。
自治体向けAIが正確に答えるための開発ナレッジ(RAGのコンテキスト)として整備した記事です。条文はe-Gov法令検索の現行条文、統計は総務省等の公表資料で確認しています。
予算の一年を、ひと目で
自治体の予算は、4月の執行開始から3月の議決まで、1年を通して動いています。月をクリックすると、その月に財政課・事業課・首長・議会・国が何をしているかを確認できます(日程はこの記事の架空の自治体「みらい市」の標準例です)。
この記事でわかること
- 制度地方自治法が定める予算のルール。款・項・目・節、補正予算、繰越明許費、決算認定まで。
- 業務予算要求書の書き方、積算と見積書、財政課ヒアリング、査定の方法、議会答弁の準備。
- カレンダー10月の予算編成方針から3月議会の議決まで。国の地方財政対策との連動も。
- 実態経常収支比率93.3%、使い切り予算、人口減少と物価高。最新の決算データで読み解きます。
目次
はじめに
基礎編
1年の流れ編
- 第4章予算の一年 ― 自治体カレンダー全体図自治体の予算編成の流れとスケジュールをわかりやすく解説。編成・執行・決算の約2年半サイクル、10月の予算編成方針から3月議会の議決まで、国の概算要求…
- 第5章春〜夏:計画と評価の季節自治体の4月から9月の予算業務をわかりやすく解説。人事異動と予算の引継ぎ、5月31日の出納閉鎖と出納整理期間、事務事業評価(行政評価)の書き方と予算…
- 第6章秋:予算編成方針と予算要求予算要求書の書き方と積算の実務をわかりやすく解説。予算編成方針の読み方、一件査定方式と枠配分方式、マイナスシーリング、要求書に書く目的・必要性・効果…
- 第7章冬:財政課査定と首長査定予算査定と財政課ヒアリングの実際をわかりやすく解説。ヒアリングでよく聞かれる質問と準備資料、査定の6つの視点、12月の地方財政対策で歳入が固まる仕組…
- 第8章2月〜3月:予算案の発表と議会審議予算案の発表から議会の議決までをわかりやすく解説。予算書と記者発表、施政方針、地方自治法第211条の提出期限、3月定例会と予算特別委員会、議会答弁の…
- 第9章執行・補正・決算 ― 予算は作って終わりではない予算の執行から決算までをわかりやすく解説。支出負担行為と契約、流用と予備費充用のルール、補正予算と専決処分、繰越明許費と事故繰越の違い、監査委員の決…
実態編
予算査定 実践編
- 第11章査定の設計:財政課は何を準備して査定に臨むか自治体の予算査定の進め方を財政課の準備からわかりやすく解説。一般財源を義務的経費から配る財源配分、義務的・経常・政策・臨時の要求の仕分け、標準単価表…
- 第12章査定の技法:金額を決める具体的な手順自治体の予算査定で金額を決める具体的な手順をわかりやすく解説。3年分の予算・決算・不用額による執行実績の分析、単価と数量の査定、月割り計上、要求どお…
- 第13章経費別の査定方法:節・性質ごとのポイント自治体の予算査定を経費ごとにわかりやすく解説。会計年度任用職員と時間外勤務、扶助費の対象者数×単価の推計、需用費と物価高、委託料の仕様・人工・見積、…
- 第14章事業タイプ別の査定ポイント:新規・継続・補助からAI・DX事業まで自治体の予算査定を事業のタイプ別にわかりやすく解説。新規事業の試行設計、継続事業のサンセット方式、補助事業の裏負担と補助終了後、施設のライフサイクル…
- 第15章査定業務のDX:システムとAIで査定を変える自治体の予算査定業務をシステムとAIで効率化する方法をわかりやすく解説。紙とExcelの二重管理や属人化の課題、差分把握や査定AIの機能、WiseV…
- 第16章査定を受ける側の実践:判断しやすい資料と再提案予算査定を受ける事業課向けに、財政課が判断しやすい説明資料の作り方をわかりやすく解説。現状→現行対応の限界→方法→必要額→成果→将来負担の説明の順番…
- 第17章ケーススタディ:みらい市の要求5件を査定する架空の自治体みらい市の予算要求5件を、財政課がどう査定するかを具体的な金額で解説。生成AI議事録システムの試行、子ども医療費助成の対象者数の精査と首…
展望編
付録
- 付録2予算の年間カレンダー ― 4月から翌3月までの月別の動き自治体の予算に関わる1年間の動きを月別カレンダーで一覧化。4月の執行開始、5月31日の出納閉鎖、9月議会の決算認定、10月の予算編成方針、11月の予…
- 付録1用語集 ― 予算・地方財政の基本用語自治体の予算と地方財政の用語209語を五十音順にわかりやすく解説。款・項・目・節、一般財源、地方交付税、基準財政需要額、繰越明許費、債務負担行為、財…
- 付録3よくある質問 ― 職員・民間事業者・住民からの35の疑問自治体の予算に関するよくある質問35問にわかりやすく回答。初めての予算要求、見積書は何社か、復活要求、流用、繰越、随意契約の上限額、補正予算、財政調…
よく調べられる予算用語
「繰越明許費とは」「経常収支比率とは」など、予算の仕事でよく出てくる用語を1語1ページで解説しています。
- 款・項・目・節款・項・目・節とは、歳入歳出予算を区分する4段階の階層です。
- 繰越明許費繰越明許費とは、歳出予算の経費のうち、その性質上または予算成立後の事由により年度内に支出を終…
- 債務負担行為債務負担行為とは、翌年度以降に支出が生じる契約などを今年度に結ぶため、予算で期間と限度額を定…
- 事故繰越事故繰越(法令上の表記は「事故繰越し」)とは、年度内に支出負担行為(契約など)をしたものの、…
- 地方交付税地方交付税とは、自治体間の財源の不均衡を調整し、どの地域でも一定の行政サービスを保障するため…
- 基準財政需要額基準財政需要額とは、各自治体が合理的かつ妥当な水準の行政を行うのに必要な一般財源を、全国一律…
- 財政調整基金財政調整基金とは、年度間の財源の不均衡を調整するために積み立てる基金です。
- 経常収支比率経常収支比率とは、人件費・扶助費・公債費など毎年度経常的な経費に、地方税や普通交付税など経常…
- 実質公債費比率実質公債費比率とは、公債費とそれに準じる経費(公営企業の償還に充てる繰出金など)が、標準財政…
- 補正予算補正予算とは、予算の調製後に生じた事由に基づき、既定の予算に追加その他の変更を加える予算です…
- 骨格予算骨格予算とは、首長選挙が年度当初に近い場合などに、人件費や継続事業など義務的・経常的な経費を…
- 流用流用とは、予算の執行段階で、ある経費の予算額を他の経費に融通して使うことです。
- 予備費予備費とは、予算外の支出や予算超過の支出に充てるため、歳入歳出予算に計上する経費です。
- 専決処分専決処分とは、本来議会の議決が必要な事項を、長が議会に代わって処分することです。
- 枠配分方式枠配分方式とは、財政課があらかじめ部局ごとに一般財源の配分額(枠)を示し、その範囲内で各部局…
- シーリングシーリング(ceiling、上限)とは、予算要求の段階で、前年度予算額などを基準に要求額の上…
- 臨時財政対策債臨時財政対策債(臨財債)とは、地方交付税の原資不足を補うため、本来交付税として交付されるべき…
- 一般財源一般財源とは、使い道が特定されておらず、自治体が自らの判断でどの経費にも充てられる財源です。
よくある質問から
初めて予算要求を担当することになりました。何から始めればよいですか?
初めての予算要求は、予算編成方針を読み、前年度の予算要求書と査定結果を確認することから始めます。予算編成方針には、要求の上限(シーリング)、重点分野、締切日などが示されます。多くの自治体では10月上旬に通知され、みらい市(この記事の架空例)の設定でも10月上旬に通知、11月中旬が要求締切です。
回答の続きを読む →財政課のヒアリングでは何を聞かれますか?
財政課ヒアリングでは、主に事業の必要性、積算の根拠、財源、効果、後年度負担が聞かれます。具体的には「なぜ来年度に必要なのか」「単価と数量の根拠は何か」「国や県の補助金は使えないか」「前年度の成果はどうだったか」「翌年度以降にいくら必要か」などです。
回答の続きを読む →予算査定では、どのような手順で金額が決まるのですか?
予算査定の金額は、財政課が全体の財源を義務的な経費から順に配ったうえで、事業ごとに執行実績・単価・数量を確かめて決まります。継続事業では過去3年分の予算額・決算額・不用額を並べ、不用額の理由を見分けます。単価は財政課の単価表・前年度の契約額・複数の見積を比べ、数量は対象者数や回数の実績から確かめます。
回答の続きを読む →首長選挙がある年は、自治体の発注に影響がありますか?
首長選挙が年度当初の前後にある年は、当初予算が骨格予算として編成され、新規事業の発注が遅れることがあります。骨格予算は法令上の用語ではなく運用上の呼び方で、人件費や継続事業などを中心に編成し、新規事業や政策的な経費は選挙後の補正予算(肉付け予算)に委ねるものです。
回答の続きを読む →自治体の予算書や予算の内容はどこで見られますか?
自治体の予算は、多くの場合その自治体のウェブサイトで公開されています。一般的には、2月中旬の予算案の記者発表資料、議会に提出された予算書・予算説明書、主要事業の概要などが掲載されます。
回答の続きを読む →この記事の読み方
- 初めて予算要求を担当する方第6章・第7章から。要求書の書き方と査定の視点がわかります。
- 財政課に異動した方第4章で1年の流れをつかみ、第1章〜第3章で制度と財政指標を固めたら、第11章からの予算査定 実践編へ。
- 事業者・議員・住民の方第4章のカレンダーと用語集、よくある質問が入口です。