第3章第1節 支援策② 地域産業クラスター計画(B)

コネクター度・ハブ度とは?地域産業クラスター計画への支援策と補助金審査

都道府県が知事の主導で作る地域産業クラスター計画(類型B)に、国はどんな支援をするのでしょうか。このページでは、5つの支援(個別企業の支援・成長資金・クラスター全体の環境整備・規制改革・人材育成)を「課題 → 対応方針 → 主な施策例」の順に読みます。特に、自治体が計画に位置付けた企業が、国の補助金の審査で考慮される仕組みは、企業にも自治体にも見逃せないポイントです。

原文の場所:第3章 第1節 ア Ⅱ 2 p.18〜21国経済産業省関係府省庁都道府県地方公共団体政府系金融機関地域金融機関中堅・中小企業スタートアップ地場産業大学

このページの要点

  • 9-1Bの支援(1)個別企業:リスクや資金余力の不足で投資が停滞するおそれがあり、自治体も地元企業を十分かつ柔軟に支援できていない。国が都道府県主導の育成産業を重点支援し、コネクター度・ハブ度が高く自治体が計画に位置付け伴走支援する企業は、経済産業省の中堅・中小企業向け補助金で審査に反映する。
  • 9-2Bの支援(2)成長資金:政府系金融機関等と地域金融機関の取組を強化し、地域ファンドの機能を高める。施策例は投資・融資、官民金連携支援、地域未来金融アクションプランの策定、企業価値担保権の活用促進。
  • 9-3Bの支援(3)環境整備:個別企業支援だけでは効果が地域全体に波及しないため、協調領域での協力・シナジーとインフラ・拠点を含む環境整備が必要。地域未来交付金等で自治体独自の取組を支え、産業用地の計画的整備を関係府省庁が連携して支援する。
  • 9-4Bの支援(4)規制・制度改革:新分野への参入や新技術の開発で既存の規制が障害になる場合、国家戦略特区制度等で改革を加速する。
  • 9-5Bの支援(5)産業人材育成:需給のミスマッチと地域外人材への過度な依存を防ぐため、計画的な人材育成・リスキリングを進め、地域一体となった人材確保・育成・定着を支援する。

9-1Bの支援(1) 個別企業の支援 ― 計画に位置付けた企業は補助金の審査で考慮#

Q地域産業クラスター計画に位置付けられた企業は、国の補助金で有利になるのですか?

答え:中核企業や関連企業は、リスクや資金余力の不足から投資に二の足を踏み、取組が停滞するおそれがある。国は都道府県が主導して育成を図る産業を重点的に支援し、地方公共団体が地元企業や地場産業を柔軟に支援できる仕組みを構築する。経済産業省の中堅・中小企業向け補助金では、コネクター度・ハブ度が高く、地方公共団体が計画に位置付け伴走支援を行う企業を、各補助金の性質を踏まえ適切な形で審査に反映する。

原文 地域未来戦略 (p.18〜19)

2. B.地域産業クラスター計画における課題と主な支援施策

(1) 産業クラスターを構成する個別企業の支援

○課題

将来、当該地域の地域経済をけん引していく産業クラスターを育成するに当たり、中核的な役割を担う企業やサプライチェーン上の関連企業においては、相応の設備投資が発生することが見込まれるが、リスクを伴うため投資に二の足を踏む、資金余力が限られているため投資を逐次でしか行えない等の理由で取組が停滞するおそれがある。また、地方公共団体が地域の実情に応じて地元の企業・地場産業を十分かつ柔軟に支援できているとは言えない状況にある。

○対応方針

都道府県が主導して育成を図る産業に対して国が重点的に支援していく。また、地方公共団体が地域の実情に応じて地元の企業や地場産業を柔軟に支援できる仕組みを構築する。

※例えば、経済産業省の中堅・中小企業向けの補助金注11では、コネクター度注12、ハブ度注13が高く、地域経済への貢献度が高いと考えられる企業であって、地方公共団体が計画に位置付け伴走支援を行う企業に対し、各補助金の性質を踏まえ、適切な形で審査に反映する。

○主な施策例

✓地方公共団体主導による産業振興施策への支援

✓中堅・中小企業やスタートアップが行う、工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援

✓売上高 100 億円超を目指す中小企業の大規模投資の支援

✓中小企業等が行う技術的革新性のある製品・サービス開発や新市場・高付加価値事業への進出、輸出に向けた国内体制の強化に係る設備投資等の支援

✓地域未来投資促進税制を活用した建物・機械等の設備投資の促進

✓地域金融機関等による中堅・中小企業の人材確保への支援

✓地域をけん引する産業の成長に資するスタートアップと地元の企業・地場産業の協業に向けた取組支援

脚注

注11中堅等大規模成長投資補助金、中小企業成長加速化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、中小企業省力化投資補助金等を含む。

注12企業が所在する都道府県の域外販売額のうち当該企業の域外販売額の比率。

注13企業が所在する都道府県の域内仕入額のうち当該企業の域内仕入額の比率。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

  • 課題:クラスターの中核企業やサプライチェーン上の関連企業には相応の設備投資が必要。でも、リスクがあるので二の足を踏む、資金の余裕がないので少しずつしか投資できないなどの理由で、取組が止まってしまうおそれがある。さらに、自治体も地元企業や地場産業を十分かつ柔軟に支援できているとは言えない、と原文は率直に書いています。
  • 対応方針:①都道府県が主導して育てる産業を、国が重点的に支援する。②自治体が地域の実情に応じて地元企業を柔軟に支援できる仕組みをつくる。

このページで一番注目したいのが※印の部分です。経済産業省の中堅・中小企業向け補助金(注11:中堅等大規模成長投資補助金、中小企業成長加速化補助金など)では、次の条件を満たす企業について、各補助金の性質を踏まえて適切な形で審査に反映するとされています。

  1. コネクター度(注12)が高い
  2. ハブ度(注13)が高い
  3. 地域経済への貢献度が高いと考えられる
  4. 地方公共団体が計画に位置付け、伴走支援を行う企業
指標 原文の定義(注) わかりやすく言うと
コネクター度 企業が所在する都道府県の域外販売額のうち、当該企業の域外販売額の比率 県の外に売ってお金を稼いでくる役割がどれだけ大きいか
ハブ度 企業が所在する都道府県の域内仕入額のうち、当該企業の域内仕入額の比率 県内の会社からたくさん仕入れて地元にお金を回す役割がどれだけ大きいか

つまり、「外から稼いで、地元に回す」企業ほど地域経済への貢献が大きい、という考え方です。

施策例は7つです。

主な施策例
地方公共団体主導による産業振興施策への支援
中堅・中小企業やスタートアップが行う、工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援
売上高100億円超を目指す中小企業の大規模投資の支援
中小企業等の技術的革新性のある製品・サービス開発、新市場・高付加価値事業への進出、輸出に向けた国内体制の強化に係る設備投資等の支援
地域未来投資促進税制を活用した建物・機械等の設備投資の促進
地域金融機関等による中堅・中小企業の人材確保への支援
スタートアップと地元の企業・地場産業の協業に向けた取組支援

ポイント

  • 中核企業や関連企業は、リスクや資金余力の不足から投資に二の足を踏み、取組が停滞するおそれがある。
  • 国は都道府県が主導して育成を図る産業を重点的に支援し、地方公共団体が地元企業や地場産業を柔軟に支援できる仕組みを構築する。
  • 経済産業省の中堅・中小企業向け補助金では、コネクター度・ハブ度が高く、地方公共団体が計画に位置付け伴走支援を行う企業を、各補助金の性質を踏まえ適切な形で審査に反映する。
  • 施策例には、売上高100億円超を目指す中小企業の大規模投資の支援や、地域未来投資促進税制を活用した設備投資の促進などが並ぶ。

よくある疑問

Q計画に位置付けられれば、必ず補助金がもらえるのですか?

A

いいえ、原文は「各補助金の性質を踏まえ、適切な形で審査に反映する」としており、採択が約束されるわけではありません。審査でどのように考慮されるかは補助金ごとに異なるため、経済産業省の各補助金の公募要領で確認してください。

Qコネクター度とハブ度はどう違うのですか?

A

コネクター度は「県外への販売」に注目し、県全体の域外販売額のうちその企業が占める比率です。ハブ度は「県内からの仕入れ」に注目し、県全体の域内仕入額のうちその企業が占める比率です。前者は外から稼ぐ力、後者は地元に波及させる力を表すと読めます。

9-2Bの支援(2) 成長資金への対応 ― 官民金連携と地域未来金融アクションプラン#

Q地域産業クラスター計画の成長資金にはどんな支援がありますか?

答え:地域産業クラスターの形成に向けて、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえた対応が必要とされている。政府系金融機関等の資金供給と地域金融機関の地域金融力を強化し、地域ファンドの機能強化を図る。施策例は、政府系金融機関等による投資・融資、官民金連携支援、地域未来金融アクションプランの策定、企業価値担保権の活用促進の4つ。

原文 地域未来戦略 (p.19〜20)

(2) 成長資金への対応

○課題

地域における投資増大、資金循環を促進する観点から、地域産業クラスターの形成に向けて、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえながら、対応を検討することが必要である。

○対応方針

地域における政府系金融機関等による資金供給の強化とともに、地域金融機関の地域金融力強化に向けた取組を更に推進する。また、地域金融機関による地域ファンドの活用状況をモニタリングしながら、ファンド運用人材の育成等を促し、地域ファンドの機能強化を図る。

○主な施策例

✓政府系金融機関等による投資・融資

✓民間投資の誘発・創出に向けた官民金連携支援

✓地域未来金融アクションプランの策定

✓企業価値担保権の活用促進

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

課題と対応方針は、戦略産業クラスター計画(A)とほぼ同じ文章です。

  • 課題:地域での投資増大と資金循環のため、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえて対応を検討する必要がある。
  • 対応方針:政府系金融機関等による資金供給の強化、地域金融機関の地域金融力の強化、そして地域ファンドの機能強化(活用状況のモニタリングと運用人材の育成等)。

違いは施策例です。Aの2つに、2つが加わって4つになっています。

主な施策例 Aにもある?
政府系金融機関等による投資・融資 ある
民間投資の誘発・創出に向けた官民金連携支援 Bで追加
地域未来金融アクションプランの策定 Bで追加
企業価値担保権の活用促進 ある

官民金連携とは、「官」(国や自治体)、「民」(企業)、「金」(金融機関)が力を合わせることです。都道府県が育てたい産業を決め、金融機関がお金の面から支え、企業が投資する。この3者がバラバラに動くのではなく、同じ方向を向くことで、民間の投資を呼び込もうというわけです。

地域未来金融アクションプランは名前だけが挙がっていて、中身は原文に書かれていません。詳細は所管府省庁の公表資料で確認してください。

ポイント

  • 地域産業クラスターの形成に向けて、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえた対応が必要とされている。
  • 政府系金融機関等の資金供給と地域金融機関の地域金融力を強化し、地域ファンドの機能強化を図る。
  • 施策例は、政府系金融機関等による投資・融資、官民金連携支援、地域未来金融アクションプランの策定、企業価値担保権の活用促進の4つ。

9-3Bの支援(3) 環境整備支援 ― 競争だけでなく「協調」でクラスター全体を強く#

Q地域産業クラスター計画で、地域全体の競争力を高めるためにどんな支援がありますか?

答え:個別企業支援のみではクラスター全体に効果が波及しない可能性があり、協調領域における協力・シナジーの仕組みづくりと、インフラ・拠点整備を含めた環境整備が必要不可欠。地方公共団体の独自の取組等を地域未来交付金等で支援する。産業用地の計画的な整備のため、土地利用の調整をはじめとした支援を関係府省庁が連携して行う。

原文 地域未来戦略 (p.20)

(3) 産業クラスター全体での競争優位性を強化する環境整備支援

○課題

地域産業クラスターを形成・育成するに当たり、個別企業支援のみでは当該地域産業クラスター全体に効果が波及せず、地域経済としての成長には不十分となってしまう可能性があることから、競争だけではなく、協調領域における協力・シナジーの創出を促す仕組みづくりや、地域の事情に合わせた、インフラ整備や拠点整備等を含めた環境整備が必要不可欠である。

○対応方針

地方の暮らしの安定を実現し、都道府県による地域産業クラスター計画が真に地方の活力を最大化することにつながるように、地方公共団体の独自の取組等を地域未来交付金等において支援する。

また、産業用地の計画的な整備を促進するため、土地利用の調整を始めとした必要な支援を関係府省庁が連携して行う。

○主な施策例

✓地域未来交付金、企業版ふるさと納税等を活用した、地域の事情に合わせたインフラを含めた環境整備

✓地域未来投資促進法の特例等を用いた円滑な土地利用調整の推進

✓産業育成に資する良質な不動産への投資の促進

✓産業競争力強化に貢献する新たな研究大学群の形成や共創拠点としてのキャンパス機能の強化

✓観光拠点整備の推進

✓観光地全体のサービス水準や労働生産性の向上に向けた、複数の宿泊施設等が利用する共同設備の導入支援

✓地域の食や食文化とフードテック等の組合せによる産業振興の推進

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

  • 課題:個別企業を支援するだけでは、効果がクラスター全体に波及しないかもしれない。そこで、競争だけでなく協調領域での協力・シナジー(相乗効果)を生む仕組みづくりと、インフラ整備や拠点整備を含めた環境整備が「必要不可欠」とされています。
  • 対応方針:①地方公共団体の独自の取組等を地域未来交付金等で支援する。②産業用地の計画的な整備のため、土地利用の調整をはじめとする支援を関係府省庁が連携して行う。

「協調領域」とは、ライバル同士でも一緒にやった方が得な部分のことです。たとえば、検査装置や物流倉庫を共同で使う、地域の共通ブランドを一緒に作る、人材育成を共同で行う、などが考えられます。製品の性能や価格では競争しても、土台の部分は協力する。これは地域産業クラスター計画の位置付けにあった「共同利用・共同事業」にもつながる考え方です。

施策例は7つです。観光や食が入っているのがBの特徴です。

種類 主な施策例
地域の環境整備 地域未来交付金、企業版ふるさと納税等を活用した、地域の事情に合わせたインフラを含めた環境整備
土地 地域未来投資促進法の特例等を用いた円滑な土地利用調整の推進
不動産 産業育成に資する良質な不動産への投資の促進
大学 新たな研究大学群の形成や共創拠点としてのキャンパス機能の強化
観光 観光拠点整備の推進
観光(共同) 観光地全体のサービス水準や労働生産性の向上に向けた、複数の宿泊施設等が利用する共同設備の導入支援
食 地域の食や食文化とフードテック等の組合せによる産業振興の推進

「複数の宿泊施設等が利用する共同設備」は、協調領域のわかりやすい例です。旅館が1軒ずつ設備をそろえるのではなく、温泉街全体で共同のリネン(シーツ・タオル)工場や予約システムを持つようなイメージです。

ポイント

  • 個別企業支援のみではクラスター全体に効果が波及しない可能性があり、協調領域における協力・シナジーの仕組みづくりと、インフラ・拠点整備を含めた環境整備が必要不可欠。
  • 地方公共団体の独自の取組等を地域未来交付金等で支援する。
  • 産業用地の計画的な整備のため、土地利用の調整をはじめとした支援を関係府省庁が連携して行う。
  • 施策例には、地域未来交付金や企業版ふるさと納税等を活用した環境整備、観光拠点整備、複数の宿泊施設等の共同設備の導入支援などがある。

よくある疑問

Q地域未来交付金はどんなことに使えるのですか?

A

原文のこの節では、地方の暮らしの安定を実現し、地域産業クラスター計画が地方の活力を最大化することにつながるよう、地方公共団体の独自の取組等を支援すると書かれています。施策例では、企業版ふるさと納税等とあわせて、地域の事情に合わせたインフラを含めた環境整備に活用するとされています。対象経費などの詳細は所管府省庁の公表資料で確認してください。

9-4Bの支援(4) 規制・制度改革 ― 新分野への参入を国家戦略特区で後押し#

Q地域産業クラスター計画で新しい分野に挑む企業が規制に困ったらどうするのですか?

答え:次世代を担う新たな分野への参入や新技術の開発に取り組む企業にとって、既存の規制・制度が障害になる場合がある。国家戦略特区制度等を活用し、産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。地域限定の特例措置化の提案や法制化が必要な大胆な提案を優先し、データ収集・調査・実証と一体的な財政・金融支援で特区制度の活用を後押しする。

原文 地域未来戦略 (p.20〜21)

(4) 規制・制度改革

○課題

産業クラスターの形成を契機として、次世代を担う新たな分野への参入や新技術の開発等に取り組もうとする企業にとって、既存の規制・制度が障害になる場合がある。

○対応方針

国家戦略特区制度等を活用し、産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。地域特性を踏まえ地域を限定して実施することを目指す特例措置化に係る提案や大胆な改革を実現するために特例措置の法制化が必要な提案を優先的に取り扱うとともに、それらを含め、新たな規制・制度改革に必要なデータ等の収集や先進的な取組の調査・実証等と一体的な財政・金融支援等により、特区制度の活用を徹底して後押ししていく。

○主な施策例

✓国家戦略特区制度等を活用した規制・制度改革

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

  • 課題:産業クラスターの形成をきっかけに、次世代を担う新たな分野への参入や新技術の開発に取り組もうとする企業にとって、既存の規制・制度が障害になる場合がある。
  • 対応方針:国家戦略特区制度等を活用し、産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。

対応方針の文章は、戦略産業クラスター計画(A)とほぼ同じです。優先的に取り扱うのは、

  1. 地域特性を踏まえて地域を限定して実施する特例措置化の提案
  2. 大胆な改革のために特例措置の法制化が必要な提案

で、改革に必要なデータ収集や調査・実証と一体的に財政・金融支援を行い、特区制度の活用を後押しします。

AとBの違いは「課題」の書き方です。Aは17の戦略分野の技術の社会実装が中心でしたが、Bは地元の企業が新しい分野に参入するときの壁に注目しています。たとえば、ものづくりの会社が医療機器や新しいエネルギーの分野に進出しようとするとき、業界ごとのルールが壁になることがあります。そうした壁を、地域を限った特例から崩していく考え方です。

ポイント

  • 次世代を担う新たな分野への参入や新技術の開発に取り組む企業にとって、既存の規制・制度が障害になる場合がある。
  • 国家戦略特区制度等を活用し、産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。
  • 地域限定の特例措置化の提案や法制化が必要な大胆な提案を優先し、データ収集・調査・実証と一体的な財政・金融支援で特区制度の活用を後押しする。

9-5Bの支援(5) 産業人材育成 ― 地域一体で人材を確保・育成・定着#

Q地域産業クラスター計画では、人材の確保や育成にどんな支援がありますか?

答え:高度な専門性を持った産業人材の需要増で需給のミスマッチが発生し得る。地域外人材の過度な活用は地域への裨益を減らすおそれがある。育成が必要な産業人材の需要を明確化し、中長期の計画的な人材育成及びリスキリングを進める。施策例は、地域の産業ニーズを踏まえた人材育成、地方大学・産業創生法の検討結果を踏まえた措置、地域一体となった人材確保・育成・定着の取組への支援の3つ。

原文 地域未来戦略 (p.21)

(5) 産業人材育成

○課題

産業クラスターの形成に当たり、当該地域において、これまでと異なる種類の高度な専門性を持った産業人材の需要が増加し、需給のミスマッチが発生し得る。産業クラスターの形成を担う人材の不足がクラスターの成長を阻害するだけでなく、地域外人材の過度な活用により地域への裨益が減少するおそれがある。

○対応方針

育成が必要となる産業人材の需要を明確化し、それを踏まえた中長期にわたる計画的な人材育成及びリスキリングを進める。

くわえて、地方大学・産業創生法の施行状況等を踏まえ、地域における若者の修学及び就業の促進に関する支援等の在り方について検討する。

○主な施策例

✓高等教育の規模の適正化を図りつつ地域の産業ニーズを踏まえた人材育成等の推進

✓地方大学・産業創生法に基づく、施行状況等についての検討結果を踏まえた措置の推進

✓地域一体となった人材確保・育成・定着を行う取組への支援

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

課題と対応方針は、戦略産業クラスター計画(A)と同じ内容です。

  • 課題:これまでと異なる種類の高度な専門人材の需要が増え、需給のミスマッチが起こり得る。人材不足はクラスターの成長を妨げ、地域外人材の過度な活用は地域への恩恵(裨益)を減らすおそれがある。
  • 対応方針:人材の需要を明確にして、中長期の計画的な人材育成とリスキリングを進める。地方大学・産業創生法の施行状況等を踏まえ、若者の修学・就業を促す支援の在り方を検討する。

施策例は3つで、Aの7つより絞られています。

主な施策例 Aとの関係
高等教育の規模の適正化を図りつつ地域の産業ニーズを踏まえた人材育成等の推進 Aと共通
地方大学・産業創生法に基づく、施行状況等についての検討結果を踏まえた措置の推進 Aと共通
地域一体となった人材確保・育成・定着を行う取組への支援 Bで新たに登場

Bで加わった「地域一体となった人材確保・育成・定着」がポイントです。1社だけで人を採用し、育て、辞めないようにするのは、中堅・中小企業にとって大きな負担です。地域の企業、自治体、学校などがまとまって、人を「集める・育てる・地域に根付かせる」ことを支援する、と読めます。9-3の「協調領域」の考え方を人材にも当てはめたもの、とも言えるでしょう。

ポイント

  • 高度な専門性を持った産業人材の需要増で需給のミスマッチが発生し得る。地域外人材の過度な活用は地域への裨益を減らすおそれがある。
  • 育成が必要な産業人材の需要を明確化し、中長期の計画的な人材育成及びリスキリングを進める。
  • 施策例は、地域の産業ニーズを踏まえた人材育成、地方大学・産業創生法の検討結果を踏まえた措置、地域一体となった人材確保・育成・定着の取組への支援の3つ。

よくある疑問

Qなぜ「地域外人材の過度な活用」が問題なのですか?

A

原文は、地域外人材の過度な活用により「地域への裨益が減少するおそれがある」としています。働く人の多くが地域外から来て地域外に住む場合、給料が地域の消費や税収に回りにくく、地元の若者の働く場も増えにくくなるためと考えられます。地域外人材を使うこと自体ではなく、「過度な」活用が問題とされています。

出典・参考資料

  • 内閣官房「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)本文 p.18〜21: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf
  • 地域産業クラスター計画の位置付け・要件は、本文 p.9〜11「B. 地域産業クラスター計画」に書かれています。
  • 支援施策の全体像(「強く豊かな日本」投資枠・地域未来交付金・伴走型の支援)は本文 p.15、戦略産業クラスター計画への支援策は本文 p.15〜18 に書かれています。

出典:「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)(内閣官房ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf)を加工して作成。「原文」欄は原文のまま掲載し(改行・脚注の位置のみ読みやすく整理)、見出し・解説・ポイント・Q&Aは村井宗明/日本DX応援団が作成しました。

↑