第3章第1節 支援策① 戦略産業クラスター計画(A)
戦略産業クラスターへの支援策とは?設備投資・成長資金・インフラ・人材育成
計画を作っても、お金も人も土地も足りなければ実現できません。このページでは、3つの計画を実現するために国が用意する支援施策【政策手段】の全体像と、そのうち戦略産業クラスター計画(類型A)に向けた5つの支援(設備投資・成長資金・インフラと拠点・規制改革・人材育成)を読みます。各支援は「課題 → 対応方針 → 主な施策例」の順に書かれているので、その流れで整理します。
このページの要点
- 8-1国は「一歩前に出て」、個別企業への支援、成長資金、インフラ、環境整備、規制・制度改革、産業人材の育成を講じる。投資は『「強く豊かな日本」投資枠』も活用し、Aのインフラや民間クラスター拠点、サプライチェーン投資は既存予算とは別枠で大胆に進める。地域未来交付金の拡充や、補助金・人材育成支援策への地域未来枠の設置も検討する。
- 8-2予算は当初予算で大胆かつ計画的に措置し、国と地方が二人三脚で「産業クラスターの花」を咲かせる。地域未来基金費で自治体独自の取組を支え、地方支分部局を含む政府一体でハード・ソフト両面の伴走型支援を行う。施策は今後も追加・拡充する。
- 8-3Aの支援(1)設備投資:17の戦略分野は不確実性が高く民間だけでは投資が不足するおそれ。政府が戦略的に補助制度等を準備し、半導体・造船・GX・フードテック等の大規模投資を誘引する。
- 8-4Aの支援(2)成長資金:政府系金融機関等の資金供給と地域金融機関の地域金融力を強化し、地域ファンドの機能を高める。施策例は政府系金融機関等による投資・融資と企業価値担保権の活用促進。
- 8-5Aの支援(3)インフラと拠点:道路・港湾・工業用水、産業用地、空港アクセス鉄道などを一体的に整備。デジタルインフラ、創薬拠点、コンテンツ拠点、研究大学群の形成なども含む。
- 8-6Aの支援(4)規制・制度改革:既存の規制が社会実装の障害になる場合に、国家戦略特区制度等で改革を加速。地域限定の特例措置や法制化が必要な大胆な提案を優先し、財政・金融支援と一体で後押しする。
- 8-7Aの支援(5)産業人材育成:高度な専門人材の需給ミスマッチと、地域外人材への過度な依存を防ぐため、需要を明確にして中長期の人材育成・リスキリングを進める。大学・高専・専門学校・専門高校の強化が並ぶ。
8-1支援施策の全体像 ― 国が一歩前に出て、別枠で大胆に投資する#
Q地域未来戦略の3つの計画に、国はどんな支援をするのですか?
答え:国は「一歩前に出て」、個別企業への支援、成長資金の供給、インフラ整備、環境整備支援、規制・制度改革、産業人材の育成等を講じる。地域未来戦略に基づく投資は、新たに設ける『「強く豊かな日本」投資枠』も活用して強力に推進する。戦略産業クラスター計画では、危機管理投資・成長投資を起爆剤に、インフラ、民間クラスター拠点、サプライチェーン投資を既存の予算とは別枠で大胆に進める。
原文 地域未来戦略 (p.15)
Ⅱ. 計画実現に向けた支援施策【政策手段】
戦略産業クラスター計画、地域産業クラスター計画及び地場産業成長プランのそれぞれの特性に応じ、これらの計画のポテンシャルを最大限発揮できるよう、個別企業への支援、成長資金の供給、インフラ整備、環境整備支援、規制・制度改革、産業人材の育成等について、国が一歩前に出て支援を講じていく。その際、必要に応じて、地域未来交付金の拡充や新たな財政措置の創設を含めた検討を進める。
地域未来戦略に基づく投資は、新たに設ける『「強く豊かな日本」投資枠』も活用して強力に推進をしていく。また、戦略産業クラスター計画に関しては、「官民投資ロードマップ」に記載の「危機管理投資」、「成長投資」を起爆剤に、それを支えるインフラ整備や、産業クラスター形成に必要な鉄道や造船ドック、ロケット射場のような民間クラスター拠点の整備、17 の戦略分野を支えるサプライチェーン投資について、各計画地域から具体的に提案されるものについて、既存の予算とは別枠で大胆に進める。あわせて、地域発のアイデアに基づく、地域産業クラスター計画や地場産業成長プランを強力に推進するため、それを支えるインフラ整備を同様に進めるとともに、地域未来交付金を拡充して、地方公共団体が主体的に行う投資促進、販路拡大支援、経営力向上のためのソフト支援策等を支援し、地方公共団体と連携して地域発のアイデアを積極的に後押しするため、国の中堅・中小企業向け設備投資補助金や人材育成支援策に地域未来枠を設けるべく検討する。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
ここからは、計画を「絵に描いた餅」にしないための支援策の話です。計画の記載項目でいえば【政策手段】にあたります。
まず、国がそろえる支援のメニューは6つです。
| 支援の種類 | ひとことで言うと |
|---|---|
| 個別企業への支援 | 工場や設備への投資を補助などで後押し |
| 成長資金の供給 | 投資や融資でお金を回す |
| インフラ整備 | 道路・港湾・鉄道・用地などの土台づくり |
| 環境整備支援 | 地域全体の競争力を上げる仕組みづくり |
| 規制・制度改革 | 新しい技術や事業を邪魔するルールを見直す |
| 産業人材の育成 | 必要な人を育てる・学び直す |
大事なのは「国が一歩前に出て」という表現です。これまでの地方創生は「地方が考え、国が応援する」形が多かったのですが、ここでは国自身が前に出ると宣言しています。
お金の出どころとして、新しく設ける『「強く豊かな日本」投資枠』が登場します。特に戦略産業クラスター計画(A)では、「官民投資ロードマップ」の危機管理投資・成長投資を「起爆剤」にして、
- それを支えるインフラ
- 鉄道、造船ドック、ロケット射場のような民間クラスター拠点
- 17の戦略分野を支えるサプライチェーン投資
を、各地域から具体的に提案されたものについて「既存の予算とは別枠で大胆に」進めるとしています。
一方、地域発のアイデアから生まれるB(地域産業クラスター計画)とC(地場産業成長プラン)については、インフラ整備を同様に進めるとともに、地域未来交付金を拡充して、自治体が行う投資促進・販路拡大支援・経営力向上のソフト支援策を応援します。さらに、国の中堅・中小企業向け設備投資補助金や人材育成支援策に地域未来枠を設けることを検討する、と書かれています。
ポイント
よくある疑問
Q戦略産業クラスターのインフラ・拠点整備は、なぜ既存の予算と別枠なのですか?
これまでの公共事業や産業政策の予算とは別に、戦略産業クラスター計画のためのお金を確保して進める、という意味です。対象は、各計画地域から具体的に提案されたインフラや民間クラスター拠点、サプライチェーン投資です。具体的な金額や仕組みは原文に書かれていないので、所管府省庁の公表資料で確認してください。
8-2当初予算・地域未来基金費・伴走型の支援 ― 国と地方の二人三脚#
Q地域未来戦略の予算はどのように措置され、自治体はどんな支援を受けられますか?
答え:予算は当初予算で大胆かつ計画的に措置し、予見可能性の高い予算措置の下で国と地方公共団体が二人三脚で進める。令和8年度地方財政計画に計上された地域未来基金費により、地方公共団体独自の取組等を支援する。地方支分部局を含め政府一体となり、地域の経済団体等と協力して、ハード面だけでなくソフト面でも伴走型の支援を行う。
原文 地域未来戦略 (p.15)
こうした予算は、当初予算で大胆かつ計画的に措置し、予見可能性の高い予算措置の下で、国と地方公共団体が二人三脚で、日本列島に「産業クラスターの花」を咲かせていく。
また、令和8年度地方財政計画に計上された地域未来基金費により地方公共団体独自の取組等を支援する。
くわえて、財政面における支援にとどまらず、地方支分部局を含め政府一体となり、地域の経済団体等との協力の下、広域連携の取組とも連携しつつ、大胆な計画の実現に取り組む地方公共団体に対し、ハード面だけでなくソフト面でも伴走型の支援を行っていく。
なお、支援施策については、今後、必要に応じて追加・拡充を行っていく。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
この節は短いですが、自治体にとってとても大切なことが4つ書かれています。
-
当初予算で、大胆かつ計画的に 国の予算には、年度の初めに決める「当初予算」と、年度の途中で追加する「補正予算」があります。補正予算は「来年もあるかわからない」ので、企業も自治体も長期の計画を立てにくいのです。原文は、予見可能性の高い(先の見通しが立つ)予算措置にすると書いています。そのうえで「国と地方公共団体が二人三脚で、日本列島に『産業クラスターの花』を咲かせていく」と表現しています。
-
地域未来基金費 令和8年度の地方財政計画に計上された地域未来基金費で、地方公共団体の独自の取組等を支援します。国のメニューに当てはまらない、地域ならではの取組を支える財源です。
-
お金だけでなく「伴走型の支援」 国の出先機関(地方支分部局、たとえば経済産業局など)も含めて政府一体となり、地域の経済団体とも協力して、ハード面(施設やインフラ)だけでなくソフト面(ノウハウや人のつながり)でも、計画づくりと実行に寄り添います。広域連携の取組とも連携するとされています。
-
支援施策は今後も追加・拡充 ここに書かれたのは「現時点のメニュー」です。
私は自治体向けのAIを開発していて、職員の方から「国の支援はメニューが多すぎて追いきれない」という声をよく聞きます。伴走型の支援は、まさにその悩みに応えようとするものだと読めます。
ポイント
よくある疑問
Q地域未来交付金と地域未来基金費はどう違うのですか?
原文では、地域未来交付金は国が拡充して自治体の投資促進・販路拡大支援・ソフト支援策等を支援するもの、地域未来基金費は令和8年度地方財政計画に計上され、地方公共団体独自の取組等を支援するものとして書かれています。具体的な配分や使い方は、所管府省庁の公表資料で確認してください。
8-3Aの支援(1) 設備投資の促進 ― 政府が補助制度で大規模投資を呼び込む#
Q戦略産業クラスター計画では、企業の設備投資にどんな支援がありますか?
答え:17の戦略分野は先端領域で不確実性が比較的高く、民間のリスクマネーだけでは十分な投資が発生しないおそれがある。重要かつ勝ち筋がある分野では、政府が戦略的に補助制度等を準備し、民間の大規模投資を誘引する。施策例は、特定半導体、船舶・港湾荷役機械、金属資源の再資源化、グリーン鉄等の製造プロセス転換、次世代再エネ等GX製品、フードテック、中堅・中小企業やスタートアップの大規模投資への支援。
原文 地域未来戦略 (p.15〜16)
1. A.戦略産業クラスター計画における課題と主な支援施策
(1) 産業クラスターを構成する企業の設備投資促進
○課題
先端領域であり、不確実性を比較的高く伴う 17 の戦略分野における投資に当たっては、民間のリスクマネーのみでの大規模投資はリスクが高く、十分な投資が発生しないおそれがある。
○対応方針
重要かつ勝ち筋がある分野においては、政府が戦略的に補助制度等を準備し、民間の大規模投資を誘引していく。
○主な施策例
✓特定半導体の生産施設の整備に対する支援
✓船舶や港湾荷役機械の生産能力拡大に向けた設備投資及び研究開発への支援
✓経済安全保障の確保に貢献する金属資源等の再資源化に対する投資促進支援
✓グリーン鉄等の、排出削減が困難な産業のエネルギー・製造プロセス転換支援
✓次世代再生可能エネルギー等 GX 製品の製造に対する設備投資支援
✓フードテック等の社会実装に係る設備等の整備への支援
✓中堅・中小企業やスタートアップが行う、工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
ここから戦略産業クラスター計画(A)向けの支援です。どの支援も「課題 → 対応方針 → 主な施策例」の3段構えになっています。
- 課題:17の戦略分野は先端領域で、うまくいくかどうかの不確実性が比較的高い。民間の「リスクマネー」(失敗するかもしれないけれど成功すれば大きく返ってくるお金)だけで大規模投資をするのは危なすぎて、十分な投資が起きないおそれがある。
- 対応方針:重要で勝ち筋がある分野では、政府が戦略的に補助制度等を準備し、民間の大規模投資を誘引する(呼び込む)。
たとえるなら、山奥に新しい道を通すとき、最初の一番危険な区間を国が一緒に切り開くことで、民間が後に続きやすくする、というイメージです。
施策例は7つです。
| 分野 | 主な施策例 |
|---|---|
| 半導体 | 特定半導体の生産施設の整備に対する支援 |
| 造船・港湾 | 船舶や港湾荷役機械の生産能力拡大に向けた設備投資及び研究開発への支援 |
| 資源・経済安全保障 | 金属資源等の再資源化に対する投資促進支援 |
| 脱炭素(重厚長大産業) | グリーン鉄等、排出削減が困難な産業のエネルギー・製造プロセス転換支援 |
| GX製品 | 次世代再生可能エネルギー等の製造に対する設備投資支援 |
| 食 | フードテック等の社会実装に係る設備等の整備への支援 |
| 企業規模を問わず | 中堅・中小企業やスタートアップが行う工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援 |
最後の1行が大事です。戦略産業クラスターというと大企業の話に聞こえますが、中堅・中小企業やスタートアップの大規模投資も支援の対象に挙げられています。
ポイント
- 17の戦略分野は先端領域で不確実性が比較的高く、民間のリスクマネーだけでは十分な投資が発生しないおそれがある。
- 重要かつ勝ち筋がある分野では、政府が戦略的に補助制度等を準備し、民間の大規模投資を誘引する。
- 施策例は、特定半導体、船舶・港湾荷役機械、金属資源の再資源化、グリーン鉄等の製造プロセス転換、次世代再エネ等GX製品、フードテック、中堅・中小企業やスタートアップの大規模投資への支援。
よくある疑問
Q中小企業でも戦略産業クラスターの設備投資支援を受けられますか?
主な施策例に「中堅・中小企業やスタートアップが行う、工場新設や設備投資等の大規模投資の促進に向けた支援」が挙げられています。対象になり得ますが、個別の補助金の要件は原文に書かれていないので、所管府省庁の公募要領で確認してください。
8-4Aの支援(2) 成長資金への対応 ― 政府系金融と地域ファンドでお金を回す#
Q戦略産業クラスター計画の成長資金はどのように供給されますか?
答え:地域での投資増大と資金循環のため、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえた対応が必要とされている。政府系金融機関等による資金供給を強化し、地域金融機関の地域金融力強化に向けた取組を更に推進する。地域ファンドの活用状況をモニタリングしつつ、ファンド運用人材の育成等で機能強化を図る。
原文 地域未来戦略 (p.16)
(2) 成長資金への対応
○課題
地域における投資増大、資金循環を促進する観点から、戦略産業クラスターの形成に向けて、リスクマネーを含めた成長資金へのニーズを踏まえながら、対応を検討することが必要である。
○対応方針
地域における政府系金融機関等による資金供給の強化とともに、地域金融機関の地域金融力強化に向けた取組を更に推進する。また、地域金融機関による地域ファンドの活用状況をモニタリングしながら、ファンド運用人材の育成等を促し、地域ファンドの機能強化を図る。
○主な施策例
✓政府系金融機関等による投資・融資
✓企業価値担保権の活用促進

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
工場を建てるには、補助金だけでなく借りるお金・出資してもらうお金が必要です。この節は、その「お金の流れ」の話です。
- 課題:地域で投資を増やし、お金が地域の中で回る(資金循環)ようにするため、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえて対応を考える必要がある。
- 対応方針:3つの柱があります。 1. 政府系金融機関等による資金供給の強化 2. 地域金融機関(地方銀行や信用金庫など)の「地域金融力」の強化 3. 地域ファンドの機能強化(活用状況をモニタリングしながら、ファンドを運用する人材の育成等を促す)
地域ファンドとは、地域の企業に出資するために、金融機関などがお金を集めて作る「投資の財布」のようなものです。融資(貸す)と違い、出資は企業が成功したときにリターンを得る仕組みなので、新しい挑戦を支えやすい一方、目利きができる運用人材が欠かせません。
施策例は2つです。
| 主な施策例 | 中身 |
|---|---|
| 政府系金融機関等による投資・融資 | 国の関係する金融機関がお金を出す・貸す |
| 企業価値担保権の活用促進 | 土地や建物だけでなく、事業全体の価値を担保にお金を借りやすくする仕組みを広める |
企業価値担保権は、工場や土地をあまり持っていないけれど技術や顧客基盤がある会社でも、事業の将来性を評価してもらって資金を調達しやすくするための仕組みです。
なお、B(地域産業クラスター計画)とC(地場産業成長プラン)の「成長資金への対応」も、課題と対応方針はほぼ同じ文章です。BとCでは施策例に「官民金連携支援」「地域未来金融アクションプランの策定」が加わっています。
ポイント
- 地域での投資増大と資金循環のため、リスクマネーを含めた成長資金のニーズを踏まえた対応が必要とされている。
- 政府系金融機関等による資金供給を強化し、地域金融機関の地域金融力強化に向けた取組を更に推進する。
- 地域ファンドの活用状況をモニタリングしつつ、ファンド運用人材の育成等で機能強化を図る。
- 施策例は、政府系金融機関等による投資・融資と、企業価値担保権の活用促進。
よくある疑問
Q地域金融機関はこの計画でどんな役割を期待されていますか?
原文は、地域金融機関の「地域金融力強化に向けた取組を更に推進する」とし、地域金融機関による地域ファンドの活用状況をモニタリングしながら、ファンド運用人材の育成等を促すとしています。融資だけでなく、地域ファンドを通じた出資の担い手としても期待されていると読めます。
8-5Aの支援(3) インフラ及び拠点整備 ― 道路・港湾・用地を一体で整える#
Q戦略産業クラスター計画では、どんなインフラや拠点が整備されますか?
答え:地方への大規模投資には、企業単体の設備投資だけでなく、インフラ、産業用地、拠点設備の確保・強化が必要で、その不足がボトルネックになるおそれがある。戦略産業クラスターの形成に真に必要な道路・港湾・工業用水等のインフラと、産業用地・空港アクセス鉄道等の周辺拠点を一体的に整備する。施策例には、地域未来交付金等によるインフラ・拠点整備、ワット・ビット連携等のデジタルインフラ、産業用地整備の金融措置創設、地域未来投資促進法の特例による土地利用調整などが並ぶ。
原文 地域未来戦略 (p.16〜17)
(3) 関連するインフラ及び拠点整備
○課題
地方への民間の大規模投資に当たっては、企業単体の設備投資だけではなく、産業振興の基盤となるインフラや産業用地、拠点設備の確保・強化が産業クラスター形成には必要となる。それらの不足が投資決定や産業クラスター形成のボトルネックとなるおそれがある。
○対応方針
戦略産業クラスターの形成に真に必要となる道路、港湾、工業用水等のインフラ整備・機能強化や、産業用地、空港アクセス鉄道等の周辺拠点整備等を一体的に実施する。
○主な施策例
✓関連するインフラ及び拠点整備の推進(地域未来交付金等)
✓空港アクセス鉄道整備等利子補給金の活用
✓データ・AI 需要の増加を踏まえたワット・ビット連携等によるデジタルインフラ整備の推進
✓創薬・先端医療分野における研究施設・共用設備の整備や知財戦略支援等
✓海外展開や観光客誘致に向けたアニメ等のコンテンツを核とした拠点の取組の推進
✓産業用地整備支援(産業用地整備に関する金融措置創設等)
✓地域未来投資促進法の特例等を用いた円滑な土地利用調整の推進
✓産業育成に資する良質な不動産への投資の促進
✓産業競争力強化に貢献する新たな研究大学群の形成や共創拠点としてのキャンパス機能の強化

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
大きな工場が来ても、トラックが通れる道路がない、船が着けられる港がない、工場で使う水が足りない、そもそも土地がない……では産業クラスターは育ちません。
- 課題:企業単体の設備投資だけでなく、インフラ、産業用地、拠点設備の確保・強化が必要。それらが足りないと、投資決定やクラスター形成のボトルネック(一番狭い部分)になるおそれがある。
- 対応方針:クラスター形成に真に必要となる道路、港湾、工業用水等のインフラ整備・機能強化や、産業用地、空港アクセス鉄道等の周辺拠点整備等を一体的に実施する。
「真に必要となる」という言葉に注目です。何でも作るのではなく、クラスターに本当に必要なものに絞って、まとめて整備するという考え方です。
施策例を種類別に整理しました(整理は記事の著者によるものです)。
| 種類 | 主な施策例 |
|---|---|
| インフラ全般 | 関連するインフラ及び拠点整備の推進(地域未来交付金等) |
| 交通 | 空港アクセス鉄道整備等利子補給金の活用 |
| デジタル | データ・AI需要の増加を踏まえたワット・ビット連携等によるデジタルインフラ整備の推進 |
| 医療・創薬 | 創薬・先端医療分野における研究施設・共用設備の整備や知財戦略支援等 |
| コンテンツ | 海外展開や観光客誘致に向けたアニメ等のコンテンツを核とした拠点の取組の推進 |
| 土地 | 産業用地整備支援(産業用地整備に関する金融措置創設等)、地域未来投資促進法の特例等を用いた円滑な土地利用調整の推進 |
| 不動産 | 産業育成に資する良質な不動産への投資の促進 |
| 大学 | 新たな研究大学群の形成や共創拠点としてのキャンパス機能の強化 |
ワット・ビット連携とは、電力(ワット)と通信・データ(ビット)を一緒に考えて整備することです。AIを動かすデータセンターは大量の電気を使うので、電気が得やすい場所と通信網をセットで整える発想です。
ポイント
- 地方への大規模投資には、企業単体の設備投資だけでなく、インフラ、産業用地、拠点設備の確保・強化が必要で、その不足がボトルネックになるおそれがある。
- 戦略産業クラスターの形成に真に必要な道路・港湾・工業用水等のインフラと、産業用地・空港アクセス鉄道等の周辺拠点を一体的に整備する。
- 施策例には、地域未来交付金等によるインフラ・拠点整備、ワット・ビット連携等のデジタルインフラ、産業用地整備の金融措置創設、地域未来投資促進法の特例による土地利用調整などが並ぶ。
よくある疑問
Q産業用地が足りない地域はどんな支援を受けられますか?
施策例に「産業用地整備支援(産業用地整備に関する金融措置創設等)」と「地域未来投資促進法の特例等を用いた円滑な土地利用調整の推進」が挙げられています。用地を整備するための資金面の支援と、土地利用の調整を円滑にする支援の両面が示されています。具体的な制度は所管府省庁の公表資料で確認してください。
8-6Aの支援(4) 規制・制度改革 ― 国家戦略特区で社会実装を後押し#
Q戦略産業クラスター計画で、規制が障害になったらどうするのですか?
答え:17の戦略分野の技術の円滑な社会実装や産業クラスターの形成に当たり、既存の規制・制度が障害になる場合がある。国家戦略特区制度等を活用し、戦略的な投資促進や産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。地域限定の特例措置化の提案や、特例措置の法制化が必要な大胆な提案を優先的に取り扱う。
原文 地域未来戦略 (p.17)
(4) 規制・制度改革
○課題
危機管理投資や成長投資の 17 の戦略分野の技術の円滑な社会実装や、産業クラスターの形成等に当たり、既存の規制・制度が障害になる場合がある。
○対応方針
国家戦略特区制度等を活用し、戦略的な投資促進や産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。地域特性を踏まえ地域を限定して実施することを目指す特例措置化に係る提案や大胆な改革を実現するために特例措置の法制化が必要な提案を優先的に取り扱うとともに、それらを含め、新たな規制・制度改革に必要なデータ等の収集や先進的な取組の調査・実証等と一体的な財政・金融支援等により、特区制度の活用を徹底して後押ししていく。
○主な施策例
✓国家戦略特区制度等を活用した規制・制度改革

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
新しい技術は、今あるルールが想定していないことがよくあります。たとえば、自動運転の車、ドローンでの配送、新しい種類の燃料などは、昔のルールのままでは使えない場面があります。
- 課題:17の戦略分野(危機管理投資・成長投資)の技術の円滑な社会実装(実際に世の中で使うこと)や産業クラスターの形成に当たって、既存の規制・制度が障害になる場合がある。
- 対応方針:国家戦略特区制度等を活用して、規制・制度改革を加速化する。
国家戦略特区は、特定の地域に限ってルールを特別に緩めたり変えたりして、新しい取組を試せるようにする制度です。原文は、次のような提案を優先的に取り扱うとしています。
- 地域特性を踏まえ、地域を限定して実施することを目指す特例措置化の提案
- 大胆な改革を実現するために、特例措置の法制化が必要な提案
さらに、改革に必要なデータ等の収集や、先進的な取組の調査・実証と一体的に財政・金融支援を行い、特区制度の活用を「徹底して後押し」するとしています。ルールを変えるには「本当に安全か」「効果はあるか」を示すデータが必要なので、その集める段階からお金の面でも支える、ということです。
なお、BとCの「規制・制度改革」もほぼ同じ文章で、目的の書き方(Aは「戦略的な投資促進や産業クラスターの形成等」)だけが少しずつ違います。
ポイント
- 17の戦略分野の技術の円滑な社会実装や産業クラスターの形成に当たり、既存の規制・制度が障害になる場合がある。
- 国家戦略特区制度等を活用し、戦略的な投資促進や産業クラスターの形成等につながる規制・制度改革を加速化する。
- 地域限定の特例措置化の提案や、特例措置の法制化が必要な大胆な提案を優先的に取り扱う。
- 改革に必要なデータ収集や調査・実証と一体的な財政・金融支援で、特区制度の活用を徹底して後押しする。
8-7Aの支援(5) 産業人材育成 ― 大学・高専・専門高校で地域の人を育てる#
Q戦略産業クラスター計画では、人材育成にどんな支援がありますか?
答え:産業クラスターの形成で高度な専門人材の需要が増え、需給のミスマッチが発生し得る。地域外人材の過度な活用は地域への裨益を減らすおそれがある。育成が必要な産業人材の需要を明確化し、中長期にわたる計画的な人材育成及びリスキリングを進める。地方大学・産業創生法の施行状況等を踏まえ、地域の若者の修学及び就業の促進に関する支援の在り方を検討する。
原文 地域未来戦略 (p.17〜18)
(5) 産業人材育成
○課題
産業クラスターの形成に当たり、当該地域において、これまでと異なる種類の高度な専門性を持った産業人材の需要が増加し、需給のミスマッチが発生し得る。産業クラスターの形成を担う人材の不足がクラスターの成長を阻害するだけでなく、地域外人材の過度な活用により地域への裨益が減少するおそれがある。
○対応方針
育成が必要となる産業人材の需要を明確化し、それを踏まえた中長期にわたる計画的な人材育成及びリスキリングを進める。
くわえて、地方大学・産業創生法注10の施行状況等を踏まえ、地域における若者の修学及び就業の促進に関する支援等の在り方について検討する。
○主な施策例
✓17 の戦略分野等の成長分野への学部再編等の重点分野に係る大学、大学院及び高専の体制・機能強化や公立高専の設置促進、国立大学法人運営費交付金の大幅拡充を図ることや、高専機構運営費交付金や私学助成等の着実な確保を通じた産業人材の育成強化
✓17 の戦略分野等の成長分野のニーズに対応するリスキリング推進に向けた大学等における社会人のための教育プログラムの開発の推進
✓産学協働での研究開発と一体となった研究者・技術者育成の推進
✓高等教育の規模の適正化を図りつつ地域の産業ニーズを踏まえた人材育成等の推進
✓地方大学・産業創生法に基づく、施行状況等についての検討結果を踏まえた措置の推進
✓地域で必要な人材の育成に向けた専門学校における教育の充実への支援
✓専門高校を含む高校教育の振興による地域の産業ニーズに即した人材育成の強化
脚注
注10地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(平成 30 年法律第 37 号)。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説
半導体工場や造船所が新しくできると、その地域には今までいなかった種類の専門人材が必要になります。
- 課題:高度な専門性を持った産業人材の需要が増え、需給のミスマッチ(必要な人と、いる人が合わない)が起こり得る。人材不足はクラスターの成長を妨げるだけでなく、地域外人材の過度な活用によって地域への裨益(地域が受ける恩恵)が減るおそれがある。
- 対応方針:育成が必要な人材の需要を明確にし、中長期の計画的な人材育成とリスキリング(働く人の学び直し)を進める。あわせて、地方大学・産業創生法(注10)の施行状況等を踏まえ、地域の若者の修学・就業を促す支援の在り方を検討する。
「よそから人を連れてくれば済む」わけではない、というのがポイントです。地元の若者や働く人が新しい産業で働けるようにならなければ、工場ができても地域の暮らしは豊かになりません。
施策例は7つで、学校の種類ごとに整理するとわかりやすくなります。
| 対象 | 主な施策例 |
|---|---|
| 大学・大学院・高専 | 17の戦略分野等の成長分野への学部再編等、体制・機能強化、公立高専の設置促進、国立大学法人運営費交付金の大幅拡充、高専機構運営費交付金や私学助成等の着実な確保 |
| 社会人(大学等) | 成長分野のニーズに対応するリスキリングのための教育プログラムの開発 |
| 研究者・技術者 | 産学協働での研究開発と一体となった育成 |
| 高等教育全体 | 規模の適正化を図りつつ地域の産業ニーズを踏まえた人材育成 |
| 制度 | 地方大学・産業創生法の検討結果を踏まえた措置の推進 |
| 専門学校 | 地域で必要な人材の育成に向けた教育の充実への支援 |
| 高校 | 専門高校を含む高校教育の振興による、地域の産業ニーズに即した人材育成の強化 |
高校生の皆さんにとっても身近な話です。工業高校や商業高校などの専門高校、そして高専が、地域の産業を支える人材の育成先として明確に位置付けられています。
ポイント
- 産業クラスターの形成で高度な専門人材の需要が増え、需給のミスマッチが発生し得る。地域外人材の過度な活用は地域への裨益を減らすおそれがある。
- 育成が必要な産業人材の需要を明確化し、中長期にわたる計画的な人材育成及びリスキリングを進める。
- 地方大学・産業創生法の施行状況等を踏まえ、地域の若者の修学及び就業の促進に関する支援の在り方を検討する。
- 施策例は、大学・大学院・高専の機能強化や公立高専の設置促進、社会人向けリスキリング、専門学校・専門高校の教育充実など7つ。
よくある疑問
Q地方大学・産業創生法とは何ですか?
原文の注10によると、正式名称は「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」(平成30年法律第37号)です。地域の大学の振興と若者の雇用の場づくりを通じて、若者が地域で学び、働くことを促すための法律で、地域未来戦略ではその施行状況等を踏まえた検討を行うとしています。
出典・参考資料
- 内閣官房「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)本文 p.15〜18: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf
- 戦略産業クラスター計画の位置付け・要件は、本文 p.7〜9「A. 戦略産業クラスター計画」に書かれています。
- 地域産業クラスター計画への支援策は本文 p.18〜21、地場産業成長プランへの支援策は本文 p.21〜24 に書かれています。
出典:「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)(内閣官房ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf)を加工して作成。「原文」欄は原文のまま掲載し(改行・脚注の位置のみ読みやすく整理)、見出し・解説・ポイント・Q&Aは村井宗明/日本DX応援団が作成しました。