類型C地場産業成長プラン

地場産業成長プランとは?市町村が作る計画の要件と作り方

地場産業成長プランは、市町村又は都道府県が、その地域に根ざした産業を伸ばすための計画です。3つの型の中でもっとも身近で、多くの市町村が「うちでも作れるかもしれない」と考えられる計画です。農林水産業、観光、スポーツ、伝統工芸、部品加工……。一つ一つは小さくても、地域を「面」で支える地場産業の付加価値を高め、域外や海外の需要を取り込むことを目指します。

原文の場所:第3章 第1節 ア Ⅰ 2 C p.11〜13市町村都道府県市町村長事業主体組合個人事業主内閣官房経済産業省

このページの要点

  • 6-1市町村又は都道府県が、地域に根ざす多様な産業(農林水産業・観光業・スポーツ産業・伝統的工芸品製造業・部品加工業など)の発展を促す計画。地域資源で付加価値を生み、域外・海外需要を獲得する。
  • 6-2要件は6つ:有望度(付加価値向上か販路拡大)/域内への波及(目標値を設定)/実現可能性(核となる事業主体)/外部依存リスクの低減(特定の大企業やフランチャイザーに過度に依存しない)/地方公共団体のコミットメント(相談窓口の設置)/KGI・KPI・撤退基準。
  • 6-3記載項目は、分野、核となる地域と事業主体、現状と目指す姿【目標】、付加価値を増す道筋【道筋】、課題と政策・KPI・支える仕組みづくり【政策手段】、現地化の取組。
  • 6-4市町村又は都道府県が案を作り、国(内閣官房・経済産業省)の事前確認を経て首長が公表し、正式提出後に国も公表。複数の自治体での共同作成も可能。

6-1位置付け ― 地域に根ざす産業を「面」で伸ばす#

Q地場産業成長プランとは何ですか?

答え:主体は市町村又は都道府県。対象は農林水産業、観光業、スポーツ産業、伝統的工芸品製造業、部品加工業など、地域住民の生活を支える多様な産業。地域資源を活用して付加価値を創出し、域外・海外需要を獲得する。

原文 地域未来戦略 (p.11〜12)

C. 地場産業成長プラン

(1) 位置付け本類型は、市町村又は都道府県がその地域に根ざす農林水産業、観光業、スポーツ産業、伝統的工芸品製造業、部品加工業等を始めとする地域住民の生活を支える多様な産業の発展、地域経済の成長を促すものである。地域資源を活用し、付加価値の創出及び域外・海外需要の獲得を図ることにより、個々の規模は戦略産業クラスターや地域産業クラスターと比較して小規模であっても、面的に地域経済を支える数多くの地場産業の更なる成長を目指す。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

地場産業成長プランの対象として、原文には具体的な産業がいくつも挙がっています。

  • 農林水産業:お米、果物、和牛、木材、漁業など
  • 観光業:温泉、自然、歴史、食をいかした観光
  • スポーツ産業:地元のプロスポーツチーム、スポーツ合宿、アウトドア
  • 伝統的工芸品製造業:焼き物、漆器、織物、刃物など
  • 部品加工業:町工場の金属加工、樹脂成形など

これらは、いずれも「地域住民の生活を支える」産業です。一つ一つの会社や組合は、AやBの産業クラスターに比べれば小さいかもしれません。しかし、町のあちこちにたくさんあって、地域の雇用と暮らしを「面的に」支えています。

このプランが目指すのは、こうした地場産業が、

  1. 地域資源を活用して、
  2. 付加価値を高め(同じものでも、より高く売れるようにする)、
  3. 域外・海外の需要を獲得する(地元以外のお客さんに買ってもらう)

ことです。たとえば、地元の果物を加工してブランド化し、都市部や海外に売る。伝統工芸の技術を現代のデザインと組み合わせて、海外の高級店に置いてもらう。こうした取組が、地場産業成長プランのイメージです。

ポイント

  • 主体は市町村又は都道府県。
  • 対象は農林水産業、観光業、スポーツ産業、伝統的工芸品製造業、部品加工業など、地域住民の生活を支える多様な産業。
  • 地域資源を活用して付加価値を創出し、域外・海外需要を獲得する。
  • 個々の規模は小さくても、面的に地域経済を支える多くの地場産業の成長を目指す。

よくある疑問

Q地場産業成長プランは、どんな小さな町でも作れますか?

A

主体は市町村又は都道府県とされており、規模の大小は問われていません。ただし、次の節の6つの要件(市場ニーズが明確、域内への波及の目標値、核となる事業主体、特定企業に過度に依存しない、相談窓口の設置、KGI・KPI・撤退基準)を満たす必要があります。複数の市町村で共同作成することもできます。

6-26つの要件 ― 相談窓口の設置と撤退基準#

Q地場産業成長プランの要件は何ですか?

答え:要件は①有望度 ②域内への波及 ③実現可能性 ④外部依存リスクの低減 ⑤地方公共団体のコミットメント ⑥KGI及びKPI。有望度は「付加価値を高める」又は「販路拡大が見込まれる」こと。核となる事業主体は企業・組合・個人事業主等。誘致予定でも可。

原文 地域未来戦略 (p.12)

(2) 要件

①有望度

実現する製品・サービス等が明確で、市場ニーズを特定していること。実現する製品・サービス等が、既存の製品・サービス等と比較して付加価値を高めるもの又は販路拡大が見込まれるものであること。

②域内への波及

域内への波及効果として、域内取引額、売上額及び持続可能な労働環境の整備(雇用の創出、賃上げ等)に関する目標値を設定できていること。

③実現可能性

計画推進の核となる事業主体(企業、組合、個人事業主等)が存在していること。なお、計画策定時点において、事業主体が当該地方公共団体に立地しておらず、今後誘致により当該地方公共団体に進出する場合も許容される。

④外部依存リスクの低減

特定の事業主体(大企業、フランチャイザー等)に過度に依存する計画となっていないこと。

⑤地方公共団体のコミットメント

事業主体に対する相談窓口を設置していること。

⑥KGI 及び KPI

計画の最終年度において達成を目指す目標値(KGI)、KPI 及び KPI 未達時の撤退基準を設定していること。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

地域産業クラスター計画(B)の7つの要件と比べながら読むと、地場産業成長プランの特徴がよくわかります。

要件 Cの内容 Bとの違い(著者の読み解き)
①有望度 製品・サービスが明確で市場ニーズを特定。既存品より付加価値を高めるか、販路拡大が見込める Bは「外貨獲得」「国内上位シェア」。Cはそこまで求めず、今より良くなることが条件
②域内への波及 域内取引額・売上額・労働環境(雇用・賃上げ等)の目標値を設定 ほぼ同じ
③実現可能性 核となる事業主体(企業、組合、個人事業主等)がいる。誘致予定でも可 Bは「企業」。Cは組合や個人事業主もOK
④外部依存リスクの低減 特定の事業主体(大企業、フランチャイザー等)に過度に依存しない Bはサプライチェーンの国内調達。Cは「特定の相手に頼りすぎない」こと
⑤コミットメント 事業主体に対する相談窓口を設置 Bは知事主体の伴走支援体制。Cは相談窓口
⑥KGI及びKPI KGI・KPI・撤退基準を設定 同じ
(費用対効果) 要件にない Bにはある

③で「組合、個人事業主等」まで認められているのは、地場産業の実態に合わせた大事なポイントです。農協や漁協、伝統工芸の協同組合、一人で営む職人さんなども、計画の核になり得ます。

④の「フランチャイザー」とは、コンビニや飲食チェーンのように、看板や商品・ノウハウを提供して加盟店からお金を受け取る本部のことです。地域の店がすべて一つのチェーン本部に頼っていると、本部の方針一つで地域の産業が左右されてしまいます。それを避けるための要件です。

⑤の相談窓口は、市町村にとって最初の具体的な一歩になります。地元の事業者が「新商品を作りたい」「海外に売りたい」と思ったとき、まず相談できる場所を役所に作る。これが計画の要件になっています。

ポイント

  • 要件は①有望度 ②域内への波及 ③実現可能性 ④外部依存リスクの低減 ⑤地方公共団体のコミットメント ⑥KGI及びKPI。
  • 有望度は「付加価値を高める」又は「販路拡大が見込まれる」こと。
  • 核となる事業主体は企業・組合・個人事業主等。誘致予定でも可。
  • 大企業やフランチャイザーなど特定の事業主体に過度に依存しないこと。
  • 地方公共団体が事業主体向けの相談窓口を設置していること。

よくある疑問

Q相談窓口は新しく作らなければいけませんか?

A

要件は「事業主体に対する相談窓口を設置していること」です。新設か既存の窓口の活用かまでは原文に書かれていません。商工観光課などの既存の窓口を、計画の事業主体向けの相談窓口として明確に位置付ける方法も考えられますが、詳細は国の公募要領や事前確認で確かめてください。

Q個人の職人や農家も計画の中心になれますか?

A

要件③で、計画推進の核となる事業主体として「企業、組合、個人事業主等」が挙げられています。個人事業主も対象になり得ます。

6-3記載項目 ― 付加価値を増す道筋と、地域を支える仕組みづくり#

Q地場産業成長プランには何を記載するのですか?

答え:記載項目:①分野 ②核となる地域・事業主体 ③現状と目指す姿【目標】④付加価値を増す道筋と取組の具体像【道筋】⑤課題・政策・KPI・支える仕組みづくり【政策手段】⑥現地化の取組。公共施設等の集約・再配置や持続可能な地域公共交通の取組を行う場合は⑤に記載する。域外企業の誘致では、現地化(労働・技術、地元資本、利益の再投資)の方針を留意事項として記載。

原文 地域未来戦略 (p.12〜13)

(3) 記載項目

①地場産業の成長を目指す分野

・該当する製品・サービス等

・特定の理由

②計画推進の核となる地域及び事業主体

・計画推進の核となる地域

・計画推進の核となる事業主体

・特定の理由

③当該分野の現状認識と目指すべき姿【目標】

・現状の整理

・目指すべき姿

・設定の根拠

・効果検証の方法

④付加価値を増す道筋の特定と定量的なインパクト【道筋】

・当該分野における付加価値を増す道筋

・取組の具体像

・地域へのインパクト

⑤事業推進に向けた課題と解決に向けて講ずべき政策【政策手段】

・事業推進に向けた課題

・講ずべき政策

・KPI

・地場産業を含む地域の産業を支える仕組みづくり

※財政・人的リソースを成長分野に振り向けるために、公共施設等の集約・再配置等の地域経済を支える基盤機能との連携、持続可能な地域公共交通の実現等の取組を行う場合、記載する。

⑥現地化の取組

・現地化の方針

※域外企業の誘致の際には、労働・技術の現地化のロードマップ、地元資本の参画方針及び利益の再投資方針がある場合には、留意事項として記載する。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

記載項目は6つで、Bの地域産業クラスター計画とよく似ています。違いは2つです。

違い1:「勝ち筋」ではなく「付加価値を増す道筋」 Bでは「勝ち筋の特定と投資の具体像」でしたが、Cでは「付加価値を増す道筋」と「取組の具体像」です。ライバルに勝つことよりも、自分たちの産業の価値をどう高めるかに重点が置かれています。たとえば「規格外の果物をジュースに加工して1個あたりの売上を2倍にする」「体験型の観光プランを作って宿泊単価を上げる」といった道筋です。

違い2:「地場産業を含む地域の産業を支える仕組みづくり」 ⑤の政策手段に、Cだけの項目があります。財政や人のリソースを成長分野に回すため、

  • 公共施設等の集約・再配置など、地域経済を支える基盤機能との連携
  • 持続可能な地域公共交通の実現

などに取り組む場合は、その内容を書きます。これは、第1節の冒頭(基本的考え方)にあった「地域基盤の再構築」を、市町村の計画で具体化する項目です。

市町村の職員の方へ。計画を作るときは、「産業振興課だけの計画」にしないことが大切です。施設の集約や公共交通の見直しは、企画課、財政課、都市計画課、交通政策の担当など、役所全体に関わります。地場産業の成長と、まちの作り直しをセットで考えるのが、この計画の特徴です。

ポイント

  • 記載項目:①分野 ②核となる地域・事業主体 ③現状と目指す姿【目標】④付加価値を増す道筋と取組の具体像【道筋】⑤課題・政策・KPI・支える仕組みづくり【政策手段】⑥現地化の取組。
  • 公共施設等の集約・再配置や持続可能な地域公共交通の取組を行う場合は⑤に記載する。
  • 域外企業の誘致では、現地化(労働・技術、地元資本、利益の再投資)の方針を留意事項として記載。

よくある疑問

Q公共施設の集約や公共交通の計画は必ず書かなければいけませんか?

A

原文では「取組を行う場合、記載する」とされています。必ず書く項目ではありませんが、財政・人的リソースを成長分野に振り向けるための取組として、行う場合はプランに位置付けることになります。

6-4策定プロセス ― 共同作成もできる#

Q地場産業成長プランはどのような手順で作るのですか?

答え:市町村又は都道府県がプラン案を作成 → 内閣官房・経済産業省の事前確認 → 首長が公表 → 正式提出 → 国が要件確認のうえ公表。サプライチェーンが複数自治体にまたがる場合や域外リソースを活用する場合は、複数の地方公共団体で共同作成できる。

原文 地域未来戦略 (p.13)

(4) 策定プロセス

①市町村又は都道府県は、地域資源を最大限活用する地場産業を含む地域の産業について付加価値向上や販路拡大を目指す、地場産業成長プラン案を作成する。

※地場産業を含む地域の産業は、サプライチェーンが複数の地方公共団体にまたがるものや、域外の人材・物流等のリソースを活用することで成立するものがあるため、そのような場合においては、複数の地方公共団体による共同作成を可能とする。

②市町村又は都道府県は、地場産業成長プラン案を内閣官房及び経済産業省に提出し、内閣官房及び経済産業省は事前確認を行う。

③市町村長又は都道府県知事は、事前確認が完了した地場産業成長プランを公表する。

④市町村又は都道府県は、地場産業成長プランを内閣官房及び経済産業省に正式に提出する。

⑤内閣官房及び経済産業省は要件を確認した上で、地場産業成長プランを公表する。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

作り方は5つのステップです。地域産業クラスター計画(B)とほぼ同じ流れですが、主体が「市町村又は都道府県」になります。

  1. 市町村又は都道府県が、地域資源を最大限活用する地場産業について、付加価値向上や販路拡大を目指すプラン案を作る。
  2. プラン案を内閣官房・経済産業省に出し、事前確認を受ける。
  3. 事前確認が終わったプランを、市町村長又は都道府県知事が公表する。
  4. 国に正式に提出する。
  5. 内閣官房・経済産業省が要件を確認して公表する。

※印に書かれた共同作成のルールは、小さな市町村にとって大きな意味があります。地場産業は、

  • サプライチェーンが複数の自治体にまたがっている(例:A町で採れた原料をB市で加工する)
  • 域外の人材や物流などのリソースを使って成り立っている

ことがよくあります。そうした場合は、複数の地方公共団体で共同してプランを作れます。職員が少ない町村でも、近隣と力を合わせれば計画づくりに挑戦できるわけです。

ポイント

  • 市町村又は都道府県がプラン案を作成 → 内閣官房・経済産業省の事前確認 → 首長が公表 → 正式提出 → 国が要件確認のうえ公表。
  • サプライチェーンが複数自治体にまたがる場合や域外リソースを活用する場合は、複数の地方公共団体で共同作成できる。

よくある疑問

Q事前確認とは何ですか?

A

計画を正式に提出する前に、内閣官房と経済産業省が内容を確認する手続です。地域産業クラスター計画と地場産業成長プランでは、事前確認が完了した計画を首長が公表し、その後に正式提出する流れになっています。

出典・参考資料

出典:「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)(内閣官房ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf)を加工して作成。「原文」欄は原文のまま掲載し(改行・脚注の位置のみ読みやすく整理)、見出し・解説・ポイント・Q&Aは村井宗明/日本DX応援団が作成しました。

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