類型B地域産業クラスター計画

地域産業クラスター計画とは?都道府県が作る計画の要件と手順

地域産業クラスター計画は、都道府県が「わが県はこの産業で稼ぐ」と決めて、知事が先頭に立って育てる計画です。17の戦略分野でなくてもかまいません。海外に輸出して外貨を稼げる産業や、国内で上位のシェアを取れる産業を選び、地域全体の競争力を底上げします。このページでは、位置付け、7つの要件、記載項目、策定プロセスを読みます。

原文の場所:第3章 第1節 ア Ⅰ 2 B p.9〜11都道府県都道府県知事政令指定都市地域金融機関商工会・商工会議所内閣官房経済産業省企業

このページの要点

  • 5-1都道府県知事が主導し、都道府県が主体となって進める産業クラスターの計画。海外輸出で外貨を稼げる、又は国内上位シェアを狙える産業を特定して育てる。個別企業の育成に加え、共同利用・共同事業や足りない機能の補完で地域全体を底上げ。
  • 5-2要件は7つ:有望度/域内への波及/実現可能性/外部依存リスクの低減/費用対効果/都道府県のコミットメント(知事主体の伴走支援)/KGI・KPI・撤退基準。
  • 5-3記載項目は、産業領域、核となる地域と企業、現状と目指す姿【目標】、勝ち筋と投資の具体像【道筋】、課題と政策・KPI【政策手段】、現地化の取組。
  • 5-4都道府県が計画案を作り、伴走支援体制を作り、国(内閣官房・経済産業省)の事前確認を経て知事が公表し、正式提出後に国も公表。政令指定都市も独自に作れる。

5-1位置付け ― 知事が主導し、都道府県で「稼ぐ産業」を育てる#

Q地域産業クラスター計画とは何ですか?

答え:都道府県知事が主導し、都道府県が主体となって形成を進める産業クラスターの計画。海外輸出で外貨を獲得し得る、又は国内市場で上位シェアを目指し得る産業分野を特定して育成する。個別企業の育成に加え、共同利用・共同事業や不足機能の補完で地域全体の競争力を底上げする。

原文 地域未来戦略 (p.9)

B. 地域産業クラスター計画

(1) 位置付け

本類型は、都道府県知事が主導し、都道府県が主体となって形成を進める産業クラスターの計画である。当該地域において、海外輸出により外貨を獲得し得るもの又は国内市場において上位シェアの獲得を目指し得るものとして重点的に育成すべき産業分野を特定し、育成を図る。産業クラスターを構成する個別企業の育成に加え、施設等の共同利用・共同事業による効率化や、サプライチェーン上の機能で地域にないものを補完するための取組等を都道府県等が行うことで、地域全体としての産業競争力の底上げを行う。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

地域産業クラスター計画の特徴を3つにまとめます。

  1. 主役は都道府県(と知事):「都道府県知事が主導し、都道府県が主体となって」と書かれています。国が中心のA(戦略産業クラスター計画)との一番の違いです。
  2. 狙うのは「外から稼げる」産業:選ぶのは、海外への輸出で外貨を獲得できる産業か、国内市場で上位シェアを目指せる産業です。たとえば、ある県の特殊な部品や素材、食品、精密機械などで「この分野ならうちの県の企業が全国トップクラス」というものが候補になります。
  3. 1社ではなく地域全体を強くする:個々の企業を育てるだけでなく、都道府県などが中心になって、 - 施設等の共同利用・共同事業による効率化(例:検査装置や物流センターを複数の会社で一緒に使う) - サプライチェーン上の機能で地域にないものを補完(例:地域に足りない加工工程の企業を誘致する)

といった取組を行い、地域全体の産業競争力を底上げします。

ポイント

  • 都道府県知事が主導し、都道府県が主体となって形成を進める産業クラスターの計画。
  • 海外輸出で外貨を獲得し得る、又は国内市場で上位シェアを目指し得る産業分野を特定して育成する。
  • 個別企業の育成に加え、共同利用・共同事業や不足機能の補完で地域全体の競争力を底上げする。

よくある疑問

Q戦略産業クラスター計画(A)とどう違うのですか?

A

Aは17の戦略分野の大規模投資を起点に、国(内閣官房・経済産業省)が策定する計画です。Bは17分野以外も含め、都道府県が自ら重点産業を選び、知事が主導して作る計画です。規模はAより小さいことが多いですが、域外から持続的に稼げることが求められます。

5-27つの要件 ― 有望度から撤退基準まで#

Q地域産業クラスター計画の要件は何ですか?

答え:要件は①有望度 ②域内への波及 ③実現可能性 ④外部依存リスクの低減 ⑤費用対効果 ⑥都道府県のコミットメント ⑦KGI及びKPI。核となる企業は、今後の誘致による進出予定でも可。知事主体で、地域金融機関や商工会・商工会議所を巻き込んだ継続的な伴走支援体制が必要。

原文 地域未来戦略 (p.9〜10)

(2) 要件

①有望度

産業クラスターの形成・育成を図る製品・サービス等が明確で、市場ニーズを特定していること。実現する製品・サービス等が海外輸出で外貨を獲得し得るもの又は国内で上位シェアを目指し得るもの、すなわち、域外から持続的に収益を獲得可能なものであること。

②域内への波及

域内への波及効果として、域内取引額、売上額及び持続可能な労働環境の整備(雇用の創出、賃上げ等)が計画されていること。

③実現可能性

計画推進の核となる企業が存在していること。なお、計画策定時点において、計画推進の核となる企業が当該地方公共団体に立地しておらず、今後誘致により当該地方公共団体に進出する場合も許容される。

④外部依存リスクの低減

実現する製品・サービス等を構成するバリューチェーン上で、必須又は高付加価値の部品・技術・工程を、域内又は国内で調達・提供することを目指し得ること。

⑤費用対効果

計画の実現により、業種内比較及び域内比較において、高い付加価値の創出を目指し得ること。

⑥都道府県のコミットメント

計画推進の核となる企業に対し、都道府県知事が主体となり、地域金融機関等を巻き込んで、計画期間中の継続的な伴走支援を提供する仕組みを構築すること。具体的な伴走支援の体制(商工会・商工会議所による経営指導を含む。)が産業クラスターの形成に必要十分になっていること。

⑦KGI 及び KPI

計画の最終年度において達成を目指す目標値(KGI)、KPI 及び KPI 未達時の撤退基準を設定していること。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

7つの要件を、計画を作る都道府県の職員の目線で読み解いてみましょう。

番号 要件 審査で見られるポイント(著者の読み解き)
① 有望度 作る製品・サービスがはっきりしていて、買う人(市場ニーズ)が特定できているか。域外から持続的に稼げるか
② 域内への波及 域内取引額、売上額、雇用の創出や賃上げなどの労働環境の整備が、計画に入っているか
③ 実現可能性 計画の核となる企業がいるか。まだ県内にいなくても、これから誘致する予定でもよい
④ 外部依存リスクの低減 欠かせない部品・技術・工程や、付加価値の高い部分を、地域内か国内でまかなうことを目指せるか
⑤ 費用対効果 同じ業種や地域内のほかの取組と比べて、高い付加価値を生み出せるか
⑥ 都道府県のコミットメント 知事が主体となり、地域金融機関なども巻き込んで、計画期間中ずっと企業に伴走支援する仕組みがあるか。商工会・商工会議所の経営指導を含む体制が十分か
⑦ KGI及びKPI 最終年度の目標値(KGI)、KPI、そしてKPIが未達のときの撤退基準が決まっているか

特に大事なのが⑥と⑦です。

⑥のコミットメントとは「本気で責任を持って関わる約束」のことです。計画書を作って終わりではなく、知事が先頭に立ち、銀行や信用金庫などの地域金融機関も巻き込んで、計画期間中ずっと企業に寄り添う体制が求められます。

⑦の撤退基準は、他の多くの補助金や計画にはあまり見られない、厳しくも誠実なルールです。「ここまでの成果が出なければ、やめる(方針を変える)」という線をあらかじめ決めておくことで、うまくいかない事業にずるずるとお金をつぎ込み続けることを防ぎます。

④の外部依存リスクの低減は、経済安全保障の考え方にもつながっています。大事な部品をすべて海外の特定の国に頼っていると、何かあったときに生産が止まってしまいます。だから、重要な部分はできるだけ地域内や国内でまかなえるようにする、という発想です。

ポイント

  • 要件は①有望度 ②域内への波及 ③実現可能性 ④外部依存リスクの低減 ⑤費用対効果 ⑥都道府県のコミットメント ⑦KGI及びKPI。
  • 核となる企業は、今後の誘致による進出予定でも可。
  • 知事主体で、地域金融機関や商工会・商工会議所を巻き込んだ継続的な伴走支援体制が必要。
  • KPI未達時の撤退基準をあらかじめ設定する。

よくある疑問

Qまだ県内にない企業を誘致する計画でもよいのですか?

A

はい。要件③で「計画策定時点において、計画推進の核となる企業が当該地方公共団体に立地しておらず、今後誘致により当該地方公共団体に進出する場合も許容される」と明記されています。ただし、誘致する場合は、労働・技術の現地化のロードマップなども記載項目として求められることがあります(記載項目⑥)。

Q撤退基準とは何ですか?

A

KPI(途中経過の目標)が達成できなかった場合に、事業の中止や見直しを判断するための基準です。地域産業クラスター計画と地場産業成長プランでは、KGI・KPIとあわせて撤退基準を設定していることが要件になっています。

5-3記載項目 ― 勝ち筋・投資の具体像・現地化#

Q地域産業クラスター計画には何を記載するのですか?

答え:記載項目:①産業領域 ②核となる地域・企業 ③現状と目指す姿【目標】④勝ち筋と投資の具体像【道筋】⑤課題と政策・KPI【政策手段】⑥現地化の取組。海外輸出や輸入代替の要素は④に書く。域外企業の誘致では、労働・技術の現地化ロードマップ、地元資本の参画方針、利益の再投資方針を留意事項として記載。

原文 地域未来戦略 (p.10〜11)

(3) 記載項目

①地域産業クラスターの形成を目指す産業領域

・該当する産業業種

・特定の理由

②計画推進の核となる地域及び企業

・計画推進の核となる地域

・計画推進の核となる企業

・特定の理由

③当該分野の現状認識と目指すべき姿【目標】

・現状の整理

・目指すべき姿

・設定の根拠

・効果検証の方法

④勝ち筋の特定と投資の具体像、定量的なインパクト【道筋】

・当該産業領域における勝ち筋・当該地域に構築すべき機能

・投資の具体像

・地域へのインパクト

※計画に海外への輸出や輸入代替の要素がある場合、本項目に記載する。

⑤投資促進に向けた課題と解決に向けて講ずべき政策【政策手段】

・投資促進に向けた課題

・講ずべき政策

・KPI

⑥現地化の取組

・現地化の方針

※域外企業の誘致の際には、労働・技術の現地化のロードマップ、地元資本の参画方針及び利益の再投資方針がある場合には、留意事項として記載する。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

記載項目は6つです。ここでも【目標】【道筋】【政策手段】の3本柱が使われています。

項目 3本柱 書く内容
①産業領域 ― どの業種か、なぜそれを選んだのか
②核となる地域・企業 ― 計画を引っぱる地域と企業、選んだ理由
③現状認識と目指すべき姿 【目標】 今の状況、目指す姿、その根拠、効果の確かめ方
④勝ち筋と投資の具体像 【道筋】 どうやって勝つか(勝ち筋)、地域に作るべき機能、投資の中身、地域へのインパクト。輸出や輸入代替の要素もここに書く
⑤課題と講ずべき政策 【政策手段】 投資を進めるうえでの課題、必要な政策、KPI
⑥現地化の取組 ― 域外企業を誘致する場合の、労働・技術の現地化、地元資本の参画、利益の再投資の方針

④の「勝ち筋」は、ビジネスの世界でよく使われる言葉で、「どうすれば勝てるか、その筋道」という意味です。たとえば「この素材は県内企業の技術でしか作れない」「海外の需要が今後10年で大きく伸びる」など、勝てる理由を具体的に書くことが求められます。

⑥の「現地化」も大切な考え方です。県外の大企業の工場を誘致しても、働くのは県外から来た人だけ、技術は本社にしかない、利益はすべて本社へ、では地域は豊かになりません。だから、

  • 地元の人を雇い、技術を地元に根付かせる(労働・技術の現地化)
  • 地元の企業や資本も参加する(地元資本の参画)
  • もうけの一部を地域に再び投資する(利益の再投資)

といった方針がある場合は、留意事項として書くことになっています。

ポイント

  • 記載項目:①産業領域 ②核となる地域・企業 ③現状と目指す姿【目標】④勝ち筋と投資の具体像【道筋】⑤課題と政策・KPI【政策手段】⑥現地化の取組。
  • 海外輸出や輸入代替の要素は④に書く。
  • 域外企業の誘致では、労働・技術の現地化ロードマップ、地元資本の参画方針、利益の再投資方針を留意事項として記載。

5-4策定プロセス ― 計画案・伴走支援体制・国の事前確認・公表#

Q地域産業クラスター計画はどのような手順で作るのですか?

答え:都道府県が計画案を作り、計画をけん引する企業への継続的な伴走支援体制を構築する。内閣官房・経済産業省の事前確認 → 知事が公表 → 正式提出 → 国が要件確認のうえ公表。政令指定都市は独自に計画を策定可能。複数都道府県での共同作成も可能。

原文 地域未来戦略 (p.11)

(4) 策定プロセス

①都道府県は、力を入れる産業領域を特定した地域産業クラスター計画案を作成する。

※政令指定都市が都道府県と異なる地域産業クラスター形成を目指す場合には、独自に計画を策定することを可能とする。この場合においては、本節中の「都道府県」は「政令指定都市」と、「都道府県知事」は「政令指定都市市長」と、それぞれ読み替えるものとする。

※産業クラスターの区域は地理的集積を想定しているが、部品等のサプライチェーンが複数都道府県にまたがり、取引量が多い等の理由で密接不可分なものは飛び地も含め一体の産業クラスターとみなす。そのような場合において、複数都道府県による共同作成を可能とする。

※策定に当たっては、当該分野や地域産業の現状認識と目指す姿を整理し、産業クラスター形成で重点的に集積等を図る製品・サービスの特定に加え、投資の具体像と定量的インパクトの見込みを示した上で、実行に向けた課題を整理し、これを解決するために必要な政策を記載する。

②都道府県知事のコミットメントを明確にするため、都道府県は計画をけん引する企業に対する計画期間中の継続的な伴走支援体制を構築する。

③都道府県は、地域産業クラスター計画案を内閣官房及び経済産業省に提出し、内閣官房及び経済産業省は事前確認を行う。

④都道府県知事は、事前確認が完了した地域産業クラスター計画を公表する。

⑤都道府県は、地域産業クラスター計画を内閣官房及び経済産業省に正式に提出する。

⑥内閣官房及び経済産業省は要件を確認した上で、地域産業クラスター計画を公表する。

※都道府県は、当該計画の内容を地域未来投資促進法注9に基づく基本計画に反映することが可能。

脚注

注9地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(平成 19 年法律第 40 号)。

地域未来AIの開発者・記事の著者の解説

作り方は6つのステップです。

  1. 都道府県が計画案を作る:力を入れる産業領域を特定して計画案を作ります。
  2. 伴走支援体制をつくる:知事の本気度(コミットメント)をはっきりさせるため、計画をけん引する企業に対して、計画期間中ずっと続く伴走支援体制を構築します。
  3. 国に計画案を出し、事前確認を受ける:内閣官房と経済産業省が事前確認をします。
  4. 知事が公表する:事前確認が終わった計画を、知事が公表します。
  5. 国に正式に提出する
  6. 国が要件を確認して公表する

※印の3つの補足も見逃せません。

  • 政令指定都市の特例:政令指定都市(大阪市や福岡市など人口50万人以上で政令で指定された大都市)が、都道府県とは違う産業クラスターを目指す場合は、独自に計画を作れます。その場合、「都道府県」を「政令指定都市」、「都道府県知事」を「政令指定都市市長」と読み替えます。
  • 飛び地・共同作成:Aと同じく、サプライチェーンで密接につながっていれば飛び地も一体とみなし、複数の都道府県で共同作成できます。
  • 地域未来投資促進法とつなげる:計画の内容を、地域未来投資促進法(注9)に基づく「基本計画」に反映することもできます。

ポイント

  • 都道府県が計画案を作り、計画をけん引する企業への継続的な伴走支援体制を構築する。
  • 内閣官房・経済産業省の事前確認 → 知事が公表 → 正式提出 → 国が要件確認のうえ公表。
  • 政令指定都市は独自に計画を策定可能。複数都道府県での共同作成も可能。
  • 地域未来投資促進法の基本計画に内容を反映できる。

よくある疑問

Q市町村は地域産業クラスター計画を作れますか?

A

計画の主体は都道府県です。ただし、政令指定都市は都道府県と異なる地域産業クラスター形成を目指す場合に独自に策定できます。一般の市町村が主体となる計画は、C「地場産業成長プラン」です。

出典・参考資料

  • 内閣官房「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)本文 p.9〜11: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf
  • 地域産業クラスター計画への支援策は、本文 p.17〜19「2.B.地域産業クラスター計画における課題と主な支援施策」に書かれています。

出典:「地域未来戦略」(令和8年7月21日閣議決定)(内閣官房ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chiikimirai/pdf/20260721_honbun.pdf)を加工して作成。「原文」欄は原文のまま掲載し(改行・脚注の位置のみ読みやすく整理)、見出し・解説・ポイント・Q&Aは村井宗明/日本DX応援団が作成しました。

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